2日目

憂「で、どうするんですか?」

律「そこなんだよ」

律「正直生き残る以外にすることがよくわからん」

憂「そ、それで内側から否定するとか言ってたんだ……」

憂、しばし沈黙。そして考える。

隙を突かずとも律を撃破することは容易い。
こうして近づいたのは確実に一人を潰すためだ。
しかし、律のカンチョー否定派としての意見にはとても同意できる。
なぜなら憂も……

憂(いざとなったら切り捨てます。律さん……!)

律(私たちがするべきことは争いじゃないんだ……考えろ、私)




場面変わって軽音部部室。

ここにカンチョニスト最強を純粋に目指す一人の少女の姿が。

唯「うーん」

唯(能力なんて正直反則だよ! ありえないし!)

唯「でも……」

能力なしにしてこのゲームを生き残るには少々厳しい状況となった。
自慢の技も和には通用しない。
もしかすれば次第には和以外にも技が通じなくなるかもしれない。
皆、脅威べき早さで敵を解析し、学習しているような気がしてならない。

唯はショックを受けたッ!

師以外にも自分を越える存在が潜んでいたことに。

と、ここで中野登場ッ!
昨日律に仕掛けたように突然部室に入ると同時、唯へ襲いかかるゥッ。

梓「んあああぁぁぁあああああ~!! 覚悟ぉっ!」

唯「とあぁっ」

梓「へぶんっ!」

唯はソレに落ち着いて対処した。

自分の隣にあった椅子を掴み、中野目掛けて投げつける!
イエス! クリンヒットッ!
これは痛い! 中野ってば弁慶の打ち所を抑えて床をゴロンゴロン。

そこを唯が捕まえ、馬乗りにッ!

これは上手いぞ。 しっかり両膝で中野の両腕を抑えている。
今この瞬間、中野を支配しているのは唯だ!

唯「なに考えてるの」

梓「いや、えっと……ちょっと奇襲をと……」


唯「さて、どうされたいのかな。あずにゃん」

唯「今の私はあずにゃんにも手加減なしだよ」

梓「唯先輩、目がマジです……」

梓「だ、だけど! 私だって大マジです! 真剣ですよ!」

唯「ほぉ、じゃあこの状態からどうするつもりなのかな?」

梓「……くっくっくっ、唯先輩。私、能力を使わせてもらいます」

不敵に微笑む中野。突如、彼女のツインテールが逆立つ。
その姿、まるで……クワガタ!

唯「なにを……」

梓「くくっ、感じますか。電気の力を……ほら、いきますよ?」

梓『アズサエレキフラッシュ!!!!』

唯「!」

バリバリバリバリィィッ。梓を包む電気のバリアは唯をシビれさせるゥゥゥッ!!
どういうことだ中野! お前の能力は一つではなかったのか!?

唯「ぎゃああああぁぁあぁああああああああぁぁぁ!?」

このまま中野にくっついていればコゲコゲは免れない!
しかし、唯は中野を離さない!
なぜだ、なぜなんだ平沢唯ッ!

梓「くっくっくっ! このままだと死にますが!? 唯せんぱぁ~い?」

唯「わあああぁぁぁぁぁあああああ!?」

梓「いいことを教えてあげますよ! 私は現在能力を二つ所持しています!」

梓「唯せんぱぁい。私は逆境に追い込まれるほど強くなるんです! サイヤ人ですっ!」

梓「これも、くくっ! 純のおかげ! 奴のおかげで私はパワーアップしたぁ!」

梓「いわば私はただの中野梓じゃありません! あずにゃんですらない!」

梓「そう、私は……!」

唯「かんちょー!」ズブリ

梓「きゃひっ……!?」

つゥゥゥゥらぬいたァァァァッッッ!!!

唯が中野を貫いたァ!
しかしッ、いったいなにが!?
審判兼解説の山中さわ子! 私、今とても興奮しておりますッ!


梓「バカな! なにが……!?」

唯「ふふっ、あずにゃん。どうやら私もあずにゃんと同じみたいだよ」

唯「追い込まれるほど強くなれる……!」

梓「ちっ……!」

梓「しかし、いつのまに私のアズサエレキフラッシュから逃れてカンチョーを?」

唯「あの電撃の弱点がある!」

唯「威力が強いのは最初だけ。徐々に電気の力も弱くなっていったよ。貧弱だね」

梓「……」

梓「つまり、私のアズサエレキフラッシュに慣れてしまったと……しかしいきなり私に気づかれずにカンチョーした件は?」

唯「あずにゃんってばお話に夢中になってたから、簡単にカンチョーできたんだよ」

唯「ダメだね。自分に酔っちゃうタイプってやつは」

梓「畜生ッ……!」

中野! リーチッ! 唯と並んだ!
さぁ、戦いは加速する。




澪「お前もこのゲームに参加していたとはな、いちご」

いちご「悪い?」

澪「いやぁ、むしろ嬉しいよ。未知の実力を秘めた敵ほど面白い」

澪「いちご、お前は……私に勝てない!」

いちご「逆。あんたが私に勝てない」

澪「は……?」

いちご「断言してあげる。絶対に勝てない」

澪「ふん、私を前にしてこうも言い切れるだなんてな。見ていろ、すぐに私の恐ろしさに気づくことになる。そしてこの能力にな!」

いちご「……」

澪「じゃあな! 今日のところは見逃しておいてやる! あはははは!」

いちご(あそこまで言っておいてなんで戦わない?)

澪、相手を前にして逃走。なにを企んでいる、秋山澪
そしていちごの絶対的勝利の自身、謎が深まる。




一方こちらはアンチ・カンチョー同盟。
実のところ私は彼女たちが一番気になるところだ。
そして今まさに、彼女たちの実力が開花するとき。

和「律、憂。くだらないマネはやめなさい」

律「くっ……和っ」

圧倒的威圧感! まるで目の前に巨大戦艦でもある様。

憂「和ちゃんには関係ないことだよ。邪魔しないで」

和「言うわね、憂。でも正直言って私にとってあなたたちの様な存在は邪魔なの」

和「早々にこのゲームを棄権するか、私にヤられたいか、選びなさい」

和「どちらか、一つの道を」

律「こ、こいつぅっ……」

憂「すごいプレッシャー……!」

憂(でも待って、ここで和ちゃんを仕留めれば)

和「無駄よ」

憂「!」

和「あなた達如きが私に敵うわけがない。そう月とスッポンの差なのよ」

憂(私の思考を読んだ? まさかこれが能力……?)

和「違う。私ぐらいの猛者になれば相手の思考を読むなんて序の口なのよ」

恐るべし、生徒会長和ちゃん。
もはや人間か疑うレベル。

律「う、うわあああああ!!」

憂「律さん!」

ここで律、和に襲いかかる!
これはあまりにも無謀すぎやしないか。

和「ノロい!」ズンッ

律「あぅ!」

律の突進を華麗にかわし、右手の人差し指を立てて律の背中を突いた。
なにやら律の様子がおかしい。和の前にひれ伏してピクリとも体を動かせずにいるッ!

律「か、体が動かない!?」

和「秘孔を突かせてもらったわ。体の自由が効かないでしょう?」

憂(っ、どうする? ここで律さんを切り捨てて逃げる!?)

憂、選択の時。




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最終更新:2011年07月02日 18:51