唯「和ちゃん!」
スタッフ「な、何か?」
和「そちらがお持ちの部員
リストなのですが、もしかしたら1ヶ月以上前のものなのでは?」
スタッフ「確かにそうですが……」
和「では、少し情報が古くなってますね。これが昨日付けの部員リストです。××高校の軽音楽部の欄をご覧ください」
スタッフ「……あ、これは!」
律「どれどれ?」ひょい
律「おっ、○○の名前があるじゃん」
○○「え?」
スタッフ「そんな、何時入部したんですか!? 1ヶ月前までは……」
和「それはともかく、これで参加条件を満たしているのではないでしょうか」
スタッフ「……確かに。しかし、改めて××高校の軽音楽部顧問や部長に確認を取ってみます」
和「その必要はないはずですが」
スタッフ「いえ、一応確認のためです。とりあえず今日のリハーサルは6人でどうぞ」
○○「あ、ありがとうございます!」
スタッフ「では、お邪魔しました」
スタスタ
○○「……」ぼーぜん
唯「和ちゃんすごーい!」
律「おいおい、どんな手品を使ったんだ?」
和「手品なんてものではないわ。ただの根回しよ」
○○「俺、軽音楽部に入った記憶なんてないんだけど……」
和「ええ、そうでしょうね」
唯「えー? じゃあ、あの紙はどうして?」
澪「まさか偽造?」
和「そんなわけないでしょ。正真正銘、○○さんは××高校の軽音楽部の部員よ」
○○「いったいどうやって」
和「私は5日前、あなたに会った後、あなたのことを××高校の知り合いに尋ねてみたの」
和「そこで、あなたが音楽関係のクラブに入っていないことと……身体のことを知った」
和「今回の合同フェスは音楽部に入っていないと参加できない。もちろん私はそのことを知っていたから、さっそくさわ子先生に相談したわ」
和「そうしたら、さわ子先生、××高校の軽音楽部の部長と顧問に取り次いでくれて」
○○「さわ子先生が……」
和「本来なら、××高校の軽音楽部は入部試験を経ないと入部できない」
和「加えて、学校側が○○さんの親御さんから、部活への入部をさせないようにと言われていたらしいのだけど」
和「顧問に事情を説明し、私とさわ子先生でお願いをして」
和「そうしたら軽音楽部の部長もこの話に賛同してくれて、なんとかこの夏の間だけ軽音楽部に在籍してもいい、ということになったの」
和「かなり無理やりで反則技だけど、これで参加に何の問題もないはずよ」
唯「和ちゃんすごーい」
律「なんつー行動力だ」
○○「真鍋さん……」
○○「真鍋さん、本当にありがとうございます!」
○○「俺、こんな条件があるなんて全然知らなくて……ご迷惑をかけて申し訳ありません!」
和「……いいのよ。応援するって言ったでしょう?」
和「私は口先だけでそう言ったつもりはないわ」
和「こういう面倒な仕事は私が受け持つから」
和「あなたたちは精一杯、今回のライブを成功させるために、頑張りなさい?」
○○「はい!」
律「合点だ!」
唯「和ちゃーん! ありがとー!」ダキッ
和「きゃ、い、いきなり抱きつかないでよ、唯」
――リハーサル中
じゃんじゃか♪
ドンドン
梓「どうですか、○○先輩。感じはつかめそうですか?」
○○「うん。なんとかなると思う。思ったよりステージが広いから圧迫感もないし、良いね」
唯「私たちの学校の体育館より広いもんねー」
律「この合同フェス、えらく気合入ってるんだなー。ん?」
ヒソヒソ
「あれが噂のー?」
「へー。じゃあ、あの男の人が?」
「すごーい。本番はどんなことするんだろー」
ヒソヒソ
澪「な、何か見られてるような……」
律「そうだな。ま、女5人に男1人っていうバンドが珍しいんだろ、多分」
ヒソヒソ
「あの男、なんで女子高のバンドと一緒に演奏できるんだ?」
「かわいい子ばっかりじゃねえか……うらやましい」
ヒソヒソ
○○「俺は殺気をびんびんと感じるんだけどね……」
梓「そうですか?」
梓「それよりも、先輩、ソロでの立ち位置ですが、この辺りに移動してもらってっと」ぐいっ
○○「おっと」ぐらり
梓「あ、すみません。変に強く引っ張っちゃいました」
○○「大丈夫大丈夫。じゃあ、ここで弾いて、梓ちゃんと合わせる感じでいいんだね」
梓「はい!」
律「ナチュラルに手を繋ぐって、相当レベル高いよなー」
澪「どこまで仲良くなるんだろう、あの2人」
唯「私、ムギちゃんと手を繋ぐー!」
紬「あらあらまあまあ」
――リハーサル後
和「お疲れ様」
○○「……」ばたんきゅー
和「ど、どうしたの彼」
澪「疲れているだけだから、休めば大丈夫……って言ってた」
和「疲れてるだけねえ」
梓「先輩、大丈夫ですか? 医務室に行きますか?」
○○「大丈夫……ステージに上がって演奏すると、こんなに疲れるもんなんだね」
梓「緊張と興奮のせいなんでしょうね」
律「私なんか、本番後は汗でびっしょりだからなー」
唯「けど、その疲れが気持ち良いんだよねー」
○○「確かに、今の疲れは悪くない……かな」
和「じゃ、私はまだ打ち合わせがあるから、みんなは先に帰っててね」
律「お疲れー」
○○「真鍋さん、今日はありがとうございました」
和「いいのよ。それじゃあ」
スタスタ
○○「やっぱりかっこいい人だなあ」
梓「むっ」
梓「……てや!」こつん
○○「わっ、びっくりした。梓ちゃん、どうしていきなり二の腕を」
梓「先輩、もう帰りますよ」スタスタ
――体育館外
律「疲れた疲れたー」
澪「律、ドラムセットは?」
律「ここに置いといていいんだってさ。あれを持ち運ぶのってしんどいからなあ」
唯「どこかに寄り道しよっかー」
○○「ごめん。今日は家で用事があって、すぐに帰らなきゃなんだ」
律「それは残念だ」
唯「○○君、近頃練習が終わるとすぐに帰っちゃうね」
○○「色々と準備がね……あ、だけど28か29日辺りは空いてる」
律「お、じゃあ、その日に前夜祭でもやるかー」
澪「前夜祭?」
紬「面白そう~」
梓「いったい何をするんですか?」
律「お菓子食べたり、だべったり……ま、適当に集まって適当にパーティでもするかってな」
○○「それはいいなあ」
梓「けれど、場所とかどうするんですか?」
律「……唯の家とか」
唯「あ、ごめーん。今日から1週間はお母さんとお父さんがお休みで家にいるから、ちょっと無理かも」
律「なにっ!? じゃあ、梓は?」」
梓「私も同じような感じですね」
律「なにぃ? 私も無理だし、ムギはもちろん駄目。澪は……」
澪「ごめん」
律「場所がねえー!」
○○「……29日だったら、俺の家が空いてるけど」
梓「先輩の家?」ぴくん
○○「その日は親が出かけてて、夜遅くまで大丈夫」
律「お、いいねえ。じゃあ決まり! 29日は昼に練習して、夜は○○の家で前夜祭だ!」
唯「おー!」
紬「おー」
澪「お、おー」
梓「……」
梓(せ、先輩の家?)
梓(は、初めて行くなあ。どんな部屋なんだろう)ドキドキ
最終更新:2011年07月30日 16:47