――夜10時
律「んー、そろそろ帰るかー」
澪「だな。明日は午後からの出演とはいえ、寝不足にならないようにしないと」
唯「えー、まだ遊びたいよー」
紬「このままお泊りとか?」
○○「んー、親が帰ってくるのは明日の昼ぐらいだから、まあできないことはないけど」
○○「ただ、寝るところがない」
澪「さすがにこの部屋で6人寝ると色々不都合だし……」
梓「すーすー」
律「ま、すでに寝てる奴が約1名いるわけだが」
澪「起こそうか?」
律「んー……」ちら
○○「ん?」
律「おっし、梓! 起きろ!」
梓「むにゃ……先輩、フルーツケーキに埋もれちゃヤです……むにゃむにゃ」
澪「なんて寝言だ」
唯「あずにゃん、起きなきゃくすぐっちゃうよー!」さわさわ
梓「ひゃっ! な、なに!?」びくびく!
律「おっし、起きた。帰るぞー」
○○「え? 梓ちゃんは残して?」
澪「○○さんが世話してやってくれ」
唯「じゃあねー」
紬「また明日。頑張りましょう」
バタン
梓「い、いったい何が起こって……あれ? 先輩たちがいない」
○○「みんな、先に帰っちゃったよ」
梓「……先に帰ったって、私、置いてけぼりですか?」
○○「よくわかんないけど、そうみたいだね」
○○(もしくは俺と梓ちゃんを2人っきりにさせてくれた、かな)
梓「えーと今は……10時? か、帰らないと!」
○○「俺が途中まで送るよ。駅まででいいかな」
梓「すみません。今すぐ帰る準備しますね」
――道路
てくてく
○○「……明日はついに本番か」
梓「……はい」
○○「やっぱり少し緊張するね」
梓「初めてのライブなんですし、そうなって当然ですよ」
○○「……」
梓「……」
きゅっ
○○「!」
梓「緊張、少しは取れますか?」
○○「……梓ちゃんの手は、すごくご利益があるね」
てくてく
○○「この4ヶ月、色々あったなあ」
梓「はい」
○○「最初は俺がけいおん部の部室で勝手に練習してて」
○○「いつしか幽霊が出るって話が広まり出して」
梓「すると私が、偶然その幽霊さんを見てしまって、ですね」
○○「あの時は驚いたよ。女の子が部屋の前で転んでたんだから」
梓「あれは慌ててただけです! 忘れてください!」
○○「忘れないって。梓ちゃんとの出会いだったんだからさ」
○○「出会って、お互いのことを知って、一緒に練習を始めるようになって」
梓「先輩の身体のことも知って」
○○「梓ちゃんの家で初めて練習した時は、ちょっとドキドキしてたよ」
梓「私もです」ニコッ
○○「けいおん部のみんなとも知り合って、練習に加えてもらえるようになって」
梓「合宿も……行きましたね」
○○「それからちょっと疎遠になったけど……」
梓「今はこうして手を繋げてます」
○○「……」
梓「先輩?」
○○「梓ちゃんは、後悔してない?」
梓「何を後悔するんですか?」
○○「……それは」
梓「後悔なんかしてません」
梓「全て自分で選んだ道です。自分で決めたことです」
梓「先輩とこうして手を繋げて、良かったと思ってます」
梓「たとえ、来月からはこの手が傍にないと分かっていても」
梓「先輩が戻ってくるのを待つ決意は揺らいだりしません」
○○「……ありがとう」
梓「先輩こそ、こんな生意気で子供っぽい後輩で、よかったんですか?」
○○「いやいや、俺ってけっこう、梓ちゃんにメロメロだよ?」
梓「そうは見えませんけど。澪先輩とか和先輩とか、よく見てるじゃないですか」ぷいっ
○○「あれは……お世話になった人に対しての感謝があってというか」
○○「大好きなのは梓ちゃんだけだよ」
梓「……だったら、証明してください」スッ
○○(! 目を瞑って……なんて大胆な)
梓「……」プルプル
○○(って、梓ちゃん、手が震えてるよ)クスリ
○○(女の子にここまでさせといて、何もしなかったら罰が当たるな)
○○「……」クイッ
梓「あ」
○○「……」スッ
梓「ん……」
○○「……」
梓「……んん、ぷは」
○○「……」
梓「……」カァ
○○「あはは」
○○「明日は、全力でいこう」
梓「はい! 私も全力で先輩についていきます!」
8章 おわり
最終更新:2011年07月30日 16:49