――30分前
澪「……」ガクブル
紬「……」
○○「……」
唯「塩キャラメルって癖になるねー」
梓「唯先輩……」
唯「どったの? なんだかみんな、暗いねえ」
律「お前のお気楽さが羨ましい」
○○「あと少しで出番か……」
澪「お客さんがいっぱいだなんて、怖い……」ガクブル
紬「こんな大舞台は経験ないものね」
律「はあ……」
律「私はそれよりもだな」
澪「律?」
律「この『放課後ティータイム+1』がずっと続けばいいのに、と思っちまうよ」
○○「……」
梓「……」
律「……なあ、○○」
○○「はい」
律「このライブが終わって9月になったら、やっぱりアメリカに行くんだよな?」
○○「……はい」
律「そっか」
梓「……律先輩、それは今話さなくても」
律「ああ、もう! こんなの私らしくない!」
律「○○!」
○○「は、はい」
律「このライブは絶対成功させるからな!」
律「で、心おきなくアメリカでもどこでも行ってきやがれ!」
律「ただし、絶対戻って来いよ! 合宿の時に言ったプリン作ってくれるって約束、まだ有効だかんな!」
○○「律さん……」
律「約束だ!」
○○「……うん、必ず、おいしいプリンを作るよ」
律「約束破ったらひどいからな!」
紬「○○さん……」
○○「はい」
紬「一緒に演奏できなくなるなんて、寂しくなるわ」
○○「……すみません」
紬「私、男の人と仲良くなるのって初めてだったの」
紬「楽しかった」
紬「音楽の話はもちろん、お菓子の話も時々してくれて」
紬「まだ色々と話したいと思う」
紬「だから戻ってきてください」
○○「……はい」
澪「……」
○○「……澪さん」
澪「……ぐす」
律「澪、泣いてないでなんか言おうぜ」
澪「ひっく……けど、緊張と寂しさが一緒になって、言葉が出なくって」
律「それでも、なんか言っとけ。な?」
澪「うん」
澪「○○さん」
○○「はい」
澪「……また一緒に楽器を弾こうね」
○○「もちろん。澪さんとなら、大歓迎だよ」
澪「うん」
澪「……」
澪(そして、梓と一緒に笑ってるところを、もう一度見せてほしい)
澪(○○さんが梓と幸せになってくれるのが、私の……何よりの幸せだから)
澪「……」ポロポロ
律「よしよし。よく言ったな」ナデナデ
澪「りつぅ……」
唯「みんな、しんみりしちゃったね」
梓「唯先輩……」
唯「私も、もっと6人で演奏したい、って思ってたけど」
唯「よく考えたら、これでずっとお別れってわけじゃないって気付いた」
唯「だから、もう泣かないし、今の時間を楽しもうって思ったんだっ」
律「……はは、唯にしては良い心がけじゃないか」
唯「私だって色々考えてるんだもーん」
○○「唯さん……」
唯「また、ギターを教えてね、○○君」
○○「その頃には唯さんの方が上手くなってたりするよ。唯さん、上達が早いから」
唯「えへへー、そうかなー」
律「っしゃ! 梓! 例のものを!」
梓「はい!」
○○「例のもの?」
澪「○○さん、私たちの鞄に、こういうキーホルダーがついてるの、気付いてた?」ジャラ
○○「それは……ひらがなのキーホルダー?」
唯「修学旅行に行った時に買ったんだよー。ほら、5つを繋げて読むと」
○○「『け』『い』『お』『ん』『ぶ』……なるほど」
紬「それでね、○○さんも同じバンド仲間でしょう?」
律「だから同じような感じのを、梓にネット通販で買ってきてもらったんだぜい!」
梓「これです!」ジャラ
○○「これは……『+1』」
梓「1週間で見つけるのは苦労しました。なかなかよさそうなのが見つからなかったので」
律「本当はひらがなにしようと思ったけど、バンド名に『+1』が入ってるから、これで良い感じだろ」
梓「どうぞ、○○先輩」ジャラ
○○「……」
唯「今日は皆、これをベルトにつけて演奏するんだよー」
律「さわちゃんの衣装にベルトがあってちょうど良かったな」
澪「スカートが短いのが難だけど……」
紬「ふふ、これで『けいおんぶ+1』になるのね」
○○「……あ」ポロ
唯「あ、○○君が泣いちゃった」
梓「先輩、ハンカチを」
○○「だ、大丈夫。ちょっと感激して……」ゴシゴシ
○○「ありがとう。大切にする。ずっと大切にするから」
律「つーか、大切にしてくれ。今度会った時は鞄につけといてくれよ」
○○「はい、もちろん」
澪「辛い時はこれを見て、私たちを思い出して、ね」
スタッフ「『放課後ティータイム+1』さーん、そろそろ出番ですので準備をお願いしまーす」
最終更新:2011年07月30日 16:51