キーンコーンカンコローン♪
純 「さて、もう六時間目が始まっちゃったねー・・・」
憂 「あ、わわ・・・ど、どうしよう・・・」オロオロ
純 「今さら慌てても仕方がないし、このままサボっちゃおうか」
憂 「え、えー・・・」
純 「校庭でお弁当を食べててさ。横になって休んでたら、いつの間にか眠っちゃってて。そんで気がついたら下校時間でした!」
憂 「・・・」
純 「なーんてシナリオ。速攻で作ってみました。先生には明日たっぷり絞られるだろうけど、それもまた一興てことで良いんじゃない」
憂 「で、でも・・・」
純 「ここで少し、落ち着いてから帰ろう。どうせ今戻っても、勉強って気分じゃないでしょ?」
憂 「それは・・・そう・・・かも・・・」
純 「普段まじめな憂のことだから、本当に寝ちゃったんだろうって、ね。先生もよけいに疑うことはしないだろうし」
純 「私も憂と一緒って事で、そこまで怒られはしないんじゃないかなーなんて。あははっ。甘いか」
憂 「あはは・・・」
純 「・・・」
憂 「あは・・・は・・・」
シーン
憂 (なんとなく気まずい・・・純ちゃん、やっぱり怒ってるんだよね・・・)
憂 「あ・・・あのね、純ちゃん」
純 「寝よう!」
憂 「え!?」
純 「既成事実、既成事実!今ここで本当に寝ちゃえば、先生にする言い訳も、あながち嘘じゃなくなるもんね?」
憂 「あ・・・う、うん・・・」
純 「てことで、お昼寝ターイム♪」ゴロン
純 「あ、いたっ!」ガバッ
憂 「ど、どうしたの!?」
純 「いや、殴られたところを下にしちゃって・・・えへへ」
憂 「あ・・・ご、ごめんなさい・・・」
純 「だからぁ、今のはたまたまだから。そんな痛くないから。ね、謝らないでよ」
憂 「でも、私のために・・・」
純 「さっきも言ったけど、こんなん唾つけとけば治るから。だから、ね?そんな顔をしなさんなって」
憂 「・・・唾」
憂 「・・・あ」
純 「・・・ん?」
憂 「純ちゃん・・・」スッ
純 「お・・・?私の腕を取って、どうするつも・・・り・・・?」
憂 (ちゅっ)
純 「お・・・お~~~~!?」
憂 (ちゅっ ちゅっ ちゅっ)
純 「ふ、ふおおおお!?ちょ、ちょっと憂!?あんた一体なにやってんの!?」
憂 「だって、唾をつければ治るって純ちゃんが・・・これは私のせいなんだから、せめて何かできることをって・・・」
純 「いや、言った!言ったけど、ちょっとこれは・・・あっ///」
憂 (ちゅっ ちゅっ ちゅっ ちゅっ)
純 「う・・・憂・・・」ドキドキ
憂 (ちゅっ ちゅっ ちゅっ ちゅっ ちゅっ)
純 「~~~~~~///」ドキドキドキドキ
憂 (ちゅっ ちゅっ ちゅっ ち
純 「だーーーーーーーーーーっ!」ドーン!
憂 「きゃぁっ」バターン!
純 「ぜはぜは・・・」
憂 「い・・・痛いよ・・・純ちゃんが急に突き飛ばした・・・」
純 「ば・・・バカ憂!なんていうか、もうバカッ!すっごいバカっっ!!!///」
憂 「・・・純ちゃん?」
純 「知らん!もう寝る!本当に寝るから!邪魔しないでね!」ゴロン
憂 「あ・・・う、うん・・・」
純 「・・・」
憂 「・・・」
純 「・・・」
憂 「・・・あ、あの・・・純ちゃん?」
純 (スピースピー)
憂 「あいかわらず、寝つきはやっ!」
憂 「・・・」
憂 「・・・純ちゃん、ありがとう。そして、本当に本当にごめんなさい」ナデナデ
純 「・・・むふ」スピー
純ちゃんの頭を撫でながら、私は明日以降のことを考える。
これでお姉ちゃんへのいじめは無くなるだろうか。
無くならなかったら、次はどうするべきだろう。それに、あいつらが仕返しに来たら・・・
考えるべきこと、不安になっちゃうことはまだまだ山積。
いや、真の正念場はこれからやって来るのかも知れない。
なんにしても、私はもっとシッカリしなくっちゃ。
だって。
さっきだって、もし純ちゃんが助けに入ってくれなかったら、今ごろ私はどうなっていたか分からない。
もっと最後まで気を張っておくべきだったんだ。油断したから。これで済んだと、気を緩めてしまったから・・・
純ちゃんに。大好きな友達に、私の代わりに怪我を負わせる羽目になってしまった。
こんな失敗、もう二度と犯しちゃいけないんだ。
憂 「醜い私。成長できなかった私。でも、自分への罰はもう、下したんだ。だから後は・・・」
今度こそ成長しなくちゃ。
失敗に心を縛られて、また自分の殻に閉じこもってしまっては、それこそ同じことの繰り返し。
元の木阿弥だけは避けなくちゃいけない。シッカリする。
それが、過ちを清算し純ちゃんの友情に応える、唯一の道だと信じるから。
純 「むにゃ・・・憂・・・あぶな・・・」スピスピ
憂 「・・・」スッ
眠っている純ちゃんを起こさないように、そっと。彼女の腕を取り・・・
ちゅっ
もう一度口付ける。
感謝と友情と、そして早く怪我が治って欲しい。そんな気持ちとを込めて。
憂 「ありがとう、純ちゃん。大好きだよ・・・」
翌朝!二年の教室!!
和 「・・・」
和 (今日も唯は学校に来てない。来れるはずもないか。唯のあの状態じゃ・・・)
(唯 「しばらくはそっとしておいて欲しいな。関わらないで欲しい・・・」)
和 「・・・唯」
(唯 「心のね、スイッチを切るの」)
和 「・・・っ」
和 (だめだ、このままじゃ。やらなきゃ。私が行動を起こさなきゃ。唯が安心して学校に来られるようにするために)
和 (だって・・・)
(憂 「和ちゃんは。、とっても頼れる、私のもう一人のお姉ちゃん。大好きな・・・お姉ちゃん」)
和 (あんなにも私を信頼してくれていた憂。なのに私は・・・あの子の寄せる想いを裏切ってしまった・・・)
和 (わが身可愛さに大切な親友の心と、幼馴染の信頼を壊してしまった。耐えられないっ)
和 (取り戻す。唯の心も憂の信頼も。でなければ、私は私を許せなくなってしまうもの・・・!)
ガラッ!
和 「・・・きたっ、あいつら・・・今日こそは・・・行くわよっ!」ガタッ
和 (怖くない怖くない・・・唯の方がずっと怖かったんだ。私は・・・怖じけない・・・!)ツカツカ
和 「は・・・話があるのっ!」
拓 「ああ・・・?」
和 「唯のことで・・・この前は言えなかったけど、今日こそ・・・は・・・」
不良1 「・・・」ボロ
不良2 「・・・」ボロ
拓 「・・・」ボロボロ
和 「・・・その怪我、どうしたの?」
不良1 「いてて・・・」
不良2 「どうもこうもねぇよ・・・」
拓 「黙ってろ・・・別に真鍋には関係ねぇよ。で、なんだよ話って」
和 「あの・・・余計なお世話かもしれないけど、大丈夫?あちこち腫れてて、かなり酷そうだけど・・・」
拓 「関係ねぇっつってんだろ。用があるならとっとと話しやがれ」
和 「あ、うん・・・唯の・・・平沢さんの事なんだけど」
拓 「・・・」ギロッ
和 「う・・・その・・・」ゴキュリ
和 (負けるな!唯が受けた痛さや怖さに比べたら、こんなのどってことない!怖がるな、私!!)
和 「も、もう・・・!もう彼女をいじめるのは止めてっ!!」
拓 「ああ?」
和 「あの子は私の親友なの!もう見ていられないのよ!こ、これ以上あの子を苦しめるというなら・・・」
不良1 「どうするってんだ?」
不良2 「言ってみろよ」
和 「あ・・・ぐ・・・わ、私はどうなっても、あなた達を・・・」
拓 「良いよ」
和 「・・・え?」
拓 「もう関わんねぇでやるつってんだよ」
和 「は・・・その・・・え?」
不良1 「ちょ、拓クン」
不良2 「いいのかよ・・・」
拓 「ちょうど奴を構うのも飽きてきたところだしな。つか、知るかよあんな奴。暇つぶしにもなりゃしねぇっての」
和 「なっ・・・!」
拓 「あー、白けたな。おい、ふけるぞ。かったるくてオベンキョウなんてやってらんねぇや」
不良1 「あ・・・」
不良2 「ちょっと待ってよ、拓クン!」
拓 「じゃあな、真鍋」ツカツカ
和 「え・・・あ・・・あれ?えーー・・・」ポカーン
廊下!
不良1 「拓クン拓クン、平沢から手を引くって本気かよぉ?」
拓 「ああ・・・」
不良2 「なんでだよ。あの妹に落とし前つけさせるなら、平沢を利用するのが一番だろ?」
拓 「お前ら・・・もう奴らとは関わるなよ」
不良1 「は、なに言ってんの?」
不良2 「まさかビビってるのかよ」プゲラ
拓 「・・・」キッ
不良2 「ご、ごめん・・・」
拓 「・・・良いよ、そーだよ。その通りだ、ビビってんだよ」
不良1 「え・・・な、なんであんな小娘に・・・?昨日のは、不意を突かれただけだろ?」
拓 「・・・お前ら気絶してたから知らないんだろうがな・・・お前らと俺の怪我の程度、見て気がつかねぇのかよ」
不良1 「は?」
拓 「一応よ、お前ら手加減されてるんだよ。あちこち痣だらけだが、急所は外されてるだろ?」
不良2 「そういえば、頭とか腹とか・・・無事だったもんな・・・」
拓 「あのガキ。瞬時にそれだけの事をやってのけてるんだよ。あの状況の中で、おそらく無意識にな」
不良2 「ま・・・まさか・・・」ゾー
不良1 「でも、だったら拓クンは・・・その怪我・・・」
拓 「おお。頭と言わずどこと言わず、滅多打ちよ・・・お前らが気を失った後、俺は奴を本気でキレさせちまったみたいでな・・・」
拓 「その時の奴の目・・・いま思い出しても鳥肌が立つ・・・」
不良1・2 「・・・」
拓 「俺をやたら滅法に打ち据えながらの、あの目・・・まるで本気で俺を殺そうと・・・」ブルッ
不良1 「はは・・・まさか・・・」
拓 「止めに入ってくれた奴がいてな。そいつがいなけりゃ、今ごろ俺は・・・」
不良2 「・・・嘘だろ」
拓 「あれは関わっちゃいけない人間なんだ。それでも仕返ししたいなら、お前らが勝手にやれ。俺はゴメンだ」
不良1 「わ、分かったよ拓クン・・・」
不良2 「拓クンがそこまで言うなら・・・」
拓 「ああ、言うこと聞いといたほうが利巧だぜ・・・」
拓 「・・・いてて・・・くそっ」
その日の午後!平沢家!!
憂 「・・・」
唯の部屋の前!
憂 「・・・お姉ちゃん・・・?」コンコン
憂 「・・・」
しーん
憂 「・・・入る・・・よ・・・」ガチャッ
憂 「おねえ・・・ちゃん・・・?」
唯 「・・・」
憂 「あ、お姉ちゃん。起きてたんだね・・・返事がなかったから、へへ。寝てたのかと思っちゃった・・・」
唯 「・・・」
憂 「・・・ただいま、お姉ちゃん」
お姉ちゃんはあの日以来。
私と和ちゃんの前で「心のスイッチを切る」と宣言したあの日から。
その言葉の通り、なにを話しかけても一切反応をしてくれなくなった。
笑いかけても笑顔が返ってくることもない。まるで目の前にいるのが、精巧にできたお姉ちゃんのお人形のよう・・・
最終更新:2011年09月15日 21:12