喜びで胸が震える。
私は私の夢を紡ぐため、その第一歩を投稿という手段で踏み出した。
その結果がこうして今、一つの形となって私の手元に届けられたんだ。
憂 「・・・まだまだ小さな”結果”に過ぎないけれど、私は着実に前に進んでいるんだ・・・」
その事が実感できた感動。
感激するなって言うほうが、無理というものだ。
純 「そっか、なるほどね。分かるけど、でもまぁ。前向きだねぇ・・・」
憂 「そんなしみじみ・・・先はまだまだ長いからね」
純 「という事は、憂の挑戦はこれからも続くって事ですか」
憂 「当然!むしろ、ここからだよ。私の夢の物語は、まだまだ始まったばかりだ!て感じかな」
純 「じゃ、私はその物語をこれからも楽しみに、憂の側で見続けさせてもらうとするね」
憂 「・・・うん。純ちゃん、私を見ていて。ずっと、ずっとね。側で見ていてね」
純 「もちろん。憂の夢が叶って物語が完結するまで、私は応援し続けるからさ!」
憂 「・・・うん!」
純 「なんせ私は、憂のファン第一号なんだからね!」
憂 「えー、なにそれ」
純 「あははっ」
憂 「ふふっ」
純ちゃんは私が落ち込んでいる時、沈んでいる時。
必ず私の側にいて、陽の光のような笑顔で凍てつく心に温もりをもたらしてくれた。
中学生の頃から今に至るまで、そんな彼女の明るさにどれだけ救われてきた事だろう。
そして、今も・・・
『ホウカゴハイツモ アレヤコレヤテンヤワンヤ ダッタ~♪』
純 「あ、憂。電話じゃない?」
憂 「・・・うん」
純 「・・・」
憂 (この着歌・・・和ちゃんからだ)
純 「??出ないの?」
憂 「・・・出るよ。純ちゃん、ちょっとゴメンね」
純 「ごゆっくり」
そう、今も。
純ちゃんが側にいてくれるから、何を聞かされたって前向きな私でいられる・・・
憂 (ピッ)「・・・はい。和ちゃん・・・うん・・・うん・・・」
純 「・・・」
(数分後)
憂 「わざわざ電話してくれてありがとうね」
憂 「・・・おめでとう、和ちゃん」
純 「・・・」
憂 「うん、うん・・・うん。それじゃ、お姉ちゃんにもよろしく。気をつけて帰ってきてね」(ピッ)
純 「・・・憂」
憂 「・・・ごめんね、お待たせ」
純 「いや、そんなに待ってないけどさ」
憂 「えへへ、そっか」
純 「うん。それよりもさ、憂・・・」
憂 「あ、そういえば!私、うっかりお茶も出してなかったね。失敗失敗!今、煎れてくるからちょっと待ってて」
純 「いや、お茶とか良いから」
憂 「え・・・だって・・・」
純 「憂、どうかしたの?」
憂 「・・・?なにが?」
純 「なんの電話だったの?」
憂 「なんのって・・・」
純 「・・・」
憂 「・・・うん。あのね、お姉ちゃんにね。とっても良い事があったんだ。今のはね、その報告の電話だったの」
純 「良い事・・・?」
憂 「そうだよ。だからね、今の私。すっごくすっごく嬉しいんだ」
純 「・・・そっか」
憂 「うん!ああ、今日は本当に良い日だなぁ。嬉しい事がこんなに続いて、あはは。なんだか夢みたい」
純 「ね・・・今の電話って、もしかして・・・」
憂 「・・・お姉ちゃんにね、恋人ができました」
純 「・・・」
憂 「相手の人はね、とっても良い人。いつもお姉ちゃんの事を気遣ってくれて、一番に考えてくれる・・・こんな人、他にはいない。それくらい良い人」
憂 「そんな人と両想いになれたんだもん。これからお姉ちゃんの上には、たくさんの幸せが舞い降りること間違いなしなんだ」
憂 「お姉ちゃんの幸せは私の幸せ。だからね、私はね。嬉しくて嬉しくて・・・まるで夢みてるみたいで・・・」
純 「う、憂・・・」
憂 「だから私も幸せ。なんてね、えへへ。ちょっと臭かったかn
純 「憂っ」(ぎゅっ)
憂 「え・・・ちょ、純ちゃん?どうしたの、急に抱きしめたりして・・・て、照れちゃう・・・」
純 「憂・・・辛そうな顔してる・・・」
憂 「え」
純 「今の憂、辛い事を抱え込んで。それを胸の内に押し込んで、無理して笑ってる。そんな顔をしてる」
憂 「そ、そんなことはないよ。な、なんでそんなこと、純ちゃんに分かるの?」
純 「わかるよ。だって私、ずっと憂を見てきたもん」
憂 「・・・ええ??」
純 「嬉しいときの顔、悲しいときの顔。どんな時、憂はどんな顔をするのかって。それくらい、すぐにわかるから」
憂 「純ちゃん・・・」
純 「それに、影に日向にお姉さんを支えていた憂の姿、ちゃんと見てきたから。だから憂がね、どれだけお姉さんのこと・・・」
純 「中学生の頃から変わらず、お姉さんのことを想ってきたか。私、ちゃんと分かってるから・・・」
憂 「・・・」
純 「きっとさ、憂は嘘は言ってないんだよね。お姉さんの幸せをね、本当に喜んでいるんだ」
憂 「・・・」
純 「でもだからって、もう一つの感情を押しころす必要はないんじゃないかな。だって、このままじゃ憂・・・」
純 「悲しい事を悲しいと認めることもできないで、辛い事に気がつかないふりのままで・・・そんなの・・・」
純 「そんな憂を見てるの、私だって悲しすぎるからっ・・・」
憂 「だ、だって私・・・もう、後ろ向きになったりしないって、あのとき心に決めたんだもん。だから・・・」
純 「じゃあ、悲しくないっていうの?」
憂 「・・・!じゅ、純ちゃんは私を悲しませたいの!?」
純 「そうだよ!」
憂 「・・・っ!」
純 「辛いのやせ我慢して笑ってる憂なんか、見てられないんだ!こっちの胸まで締め付けられちゃうんだよ!」
憂 「だ、だったら・・・!だったらどうしたら良いの、私!?嬉しいんだよ?純ちゃんの言うとおり、本当に嬉しいの!」
憂 「嬉しいのに、こんなに胸が潰れそうに苦しくって!涙が溢れてきちゃいそうで!もう、どうして良いのか分からない!」
憂 「お姉ちゃんが幸せなら、私はどうなったって笑っていられるって思ってた。思ってたのに、どんどん切なさがこみ上げてきて・・・」
憂 「それ、必死に耐えてるのに!純ちゃんがいてくれたから耐えられてたのに!」
純 「憂・・・」
憂 「なのに、その純ちゃんが・・・純ちゃんに・・・そんな風に言われると、私っ・・・」
純 「憂・・・喜びと悲しみがね。心ん中に同居するのって、ぜんぜん矛盾しないと思う・・・だから、だからね」
純 「自分の気持ちに素直になっても、それは後ろ向きになる事ではないと思うんだ・・・」
憂 「す、素直に・・・?」
純 「うん」
憂 「・・・」
純 「・・・」
憂 「・・・私を悲しませたいって言ったよね?」
純 「うん」
憂 「素直になれって。・・・言ったよね?」
純 「うん」
憂 「言ったからには、責任を取ってもらうから・・・」
純 「良いよ」
憂 「・・・胸、貸して下さい」
純 「・・・どうぞ」
ポスッと純ちゃんの胸に顔をうずめる。
とたんに私の顔全体を包み込む、柔らかな感触と純ちゃんの温もり。
その安心感を与えてくれる温かさは、まだ小さい頃。
お姉ちゃんと一つの布団で抱きあいながら眠った、あの頃の心地よさにも似て・・・
憂 「・・・うっ。う・・・えぐ・・・」
何とかせき止めていた私の瞳を決壊させて、涙を溢れさせるのに十分すぎる威力を持っていた。
憂 「~~~~~~っ」ポロポロ
純 「・・・」ギュッ
憂 「じゅ、純ちゃん・・・わ、私・・・え・・・え・・・」
純 「うん・・・」
憂 「やっぱり悲しいよぉ・・・うああああああああああああん」
純 「うん・・・うん」
憂 「物心つく前からずっと好きだったお姉ちゃんに、恋人ができちゃった・・・うああああああああああん」
純 「うん、うん」
憂 「いつかはこうなる事、ずっと覚悟していたのに。やっぱり悲しいよ・・・うああああああああああん」
純 「うん」
憂 「うあああああああああん!うあああああああああああん!」
・・
・・
憂 「う・・・えぐっ・・・」
純 「まだ・・・落ち着けない?」
憂 「ご、ごめっ・・・う・・・えぐっ・・・」
純 「・・・憂」スッ
憂 「うっうっ・・・ひっぐ・・・え・・・?」
ちゅっ
憂 「・・・!?」
純 「どう・・・?」
憂 「ど、どうって・・・純ちゃん・・・私のほっぺたに、キ、キス・・・」
純 「落ち着いた?」
憂 「あ・・・え・・・?」
純 「昔さ。私が腕を怪我したときね。憂、私の痛いところにキスしてくれたよね。痛みが早く引くようにって」
憂 「・・・あ」
純 「覚えてる?」
憂 「う、うん・・・でも、あれは・・・キスって言うより、唾を・・・」
純 「今度は私が。心を傷つけてしまった憂に・・・早く痛いのなんか飛んで行っちゃうように」
憂 「純ちゃん・・・あ」
純 (ちゅっ)
憂 「ひっぐ・・・」
純 「傷が塞がるまで、何度だってキスし続けてあげるね」
憂 「で、でも純ちゃんのキス、ちょっとくすぐったいかも・・・」
純 「慣れてないんだから、ぜいたく言わない(ちゅっ)」
憂 「くすっ。・・・ひっぐ」
純 「あとね。今日は私、憂が元気になるまで、ずっと一緒にいてあげる」
憂 「・・・ほんとう?」
純 「ううん、今日だけじゃなく。これから先もずっと。ずっとね、私。憂の側にいるから・・・だから・・・」
憂 「純ちゃん、純ちゃん・・・うあああああああああん・・・」
純 「また泣く~」
憂 「だって・・・うあああああん」
純 「憂・・・落ち着いたらさ。パッと街にでも繰り出そう」
憂 「うああああああああああああん」
純 「憂がさ、夢の出発点に立った事と。お姉さんの幸せの訪れ。二人でお祝いしよう」
憂 「うああああああああああん・・・う・・・ひぐっひぐっ・・・」
純 「今日は、純ちゃんがドンッと奢っちゃるからさ」
純ちゃんの暖かな優しさが心に染みて・・・
涙はおさまるどころか、ますます奥から奥から滲み出してくる。
いったいこれだけの涙、今まで瞼の奥のどこに隠れていたんだろう。
そんな疑問が湧いて出るほどに、あふれ出してとめどなく頬を濡らす。
憂 「わ、私・・・バニラシェークが飲みたい・・・」
純 「・・・よしよし、特別にLLサイズを進呈しようじゃないの!さらにナゲットのおまけ付き!」
憂 「うん・・・ふふっ、太っ腹・・・」スン
純 「とーぜん!」
・・
・・
この日。
夢への展望が開けた記念すべき、夏のとある日。
第八話へ続く!
最終更新:2011年09月15日 21:20