ある日の放課後。私と梓は部室で二人きり。
せっかくの二人きりなのに、言葉が出ない。
空気が重い・・・。私はやっとの思いで言葉を切りだした。
澪「どうしてだよ・・・梓・・・。」
梓「ごめんなさい!」
梓は、目にためた涙をこらえきれずに流しながら頭を下げた。
泣かないでくれよ、梓。
今私には、梓を抱きしめてやることはできないよ・・・。
―別れてほしい。これが放課後、二人きりになって梓に呼び出された用件だった。
唯「澪ちゃんって、なんでこんなかわいい詩が書けるのー?」
あれは、梓と付き合う前、放課後、練習(?)前のティータイム。梓を待つ間、唯が突然聞いてきた。
澪「なんでって・・・う、浮かんでくるんだ。」
私は、突然の質問にたじろいだ。なんでと聞かれても、明確な理由はない。
ふっと頭に浮かんでくる。本当に、それだけなんだ。
律「かわいいというか、ファンシーというか身体がかゆくなるというか・・・。」
澪「どーゆう意味だ!」
紬「でも、ほんとかわいいわぁ。私の恋はホッチキスなんて、恋心をうまく歌ってると思うの!」キラキラ
唯「私もそう思うよ!」キラキラ
澪「そ、そんなことないよ。」
私は突然その歌のことを言われて動揺した。あの詩は、好きな人を思って書いた詩だ。
手紙で伝えようと思った気持ち。結局渡せずに、自分の部屋の引き出しにしまってある。
いつか、渡せたら良いな。
唯「ところで、ムギちゃん・・・。今日のおやつはなぁに?」ジュルリ
澪「結局お前はおやつか!」ガタッ
紬「ウフフ。今日はドーナツを持ってきたの!」ジャーン
唯「わーい!」モグモグ
律「唯!早すぎるぞ!」
紬「いっぱい持ってきたら大丈夫よ!」
澪「ったく、梓が来たら、練習するからな!」
唯「えー!あずにゃんにもドーナッツ食べさせてあげなきゃかわいそうだよー!」ブー
律「そうだぞ、澪!梓が食べてひと段落したらな!」モグモグ
澪「じ、じゃあ、梓も食べ終わったらすぐ練習だぞ!」
唯・律「はーい」モグモグ
澪「食うか、返事するか、どっちかにしろ!」
紬「まあまあ。ほら、澪ちゃんも食べて?これがおいしの。」
澪「あ、ありがとう。」
私がムギからドーナッツを受け取って頬張った時、ドアが開いた。私の胸の鼓動が少し高なって、ドーナッツを落としそうになる。
いつからだろう。梓―君を見るとドキドキしてしまうのは・・・。
梓「遅れてすいません。」
唯「あ!来た来た!あーずにゃん♪」ギュ
梓「にゃっ!き、来ていきなりなんですか?!」
唯「今日のあずにゃん分補給だよ~」スリスリ
梓「も、も~!離れてください!」
うらやましい・・・。わ、私も!・・・なんて言えない・・・。
私もあの華奢で小さな身体をした梓を抱きしめたい・・・。
なんて、想像をしていたら、顔が熱くなってきた。
律「ん~?澪、顔が赤いぞ?熱でもあるのか?」
澪「え?!だ、大丈夫だ!」フンス
律「そ、そうかぁ?ま、大丈夫ならいいんだけどなー。」
唯「あ!あずにゃん、今日はドーナッツが待ってるよ!た~んとお食べ!」
紬「はい、梓ちゃん。紅茶よ。」
梓「ありがとうございます。ムギ先輩。」
他愛のない話をして、みんなで過ごすティータイム。楽しいと感じるのはみんなと居るだけじゃない。梓がいるからより一層、私はこの時間が好きになる。
澪「さ、梓も食べ終わったし、そろそろ練習するぞ!」
唯「えー!まだ早いよー!」
律「まだ、梓が食休みをしてないだろー。それからでもいいじゃん!」
澪「あ・・・。そ、そうだったな。」
いけない、いけない。好きな人への気遣いもできないのか、私は。
梓「私なら大丈夫です。練習しましょう!」
律「梓ー、遠慮すんなって!」
梓「してません!それに、唯先輩と律先輩は練習したくないだけじゃないですか!」
律・唯「ぎくっ」
紬「梓ちゃん、紅茶をもう一杯飲んでからでも良いでしょう?」
梓「え?あ・・・はい。」
澪「こ、こんどこそ、梓が飲み終わったら、練習するぞ!」
律・唯・紬「はーい」
結局、私たちは少しの練習をしただけで、
下校時刻のチャイムが鳴り始めてしまった。
もうちょっと梓と居たかったな。よし・・・。
澪「な、なぁ。梓」
梓「はい?なんですか、澪先輩。」
澪「きょ、今日帰り、買い物でもしないか?」
梓「え?良いですけど・・・二人でですか?」
澪「だ、だめかな?」
梓「ぜ、全然大丈夫です!むしろ、二人が良いです!」
澪「え・・・?」
梓「あっ・・・。」モジモジ
赤面する梓・・・もしかして、梓も私のこと!
ま、まさかな、そんなことないよな。
で、でもこの反応・・・。
唯「りっちゃん隊員!あの二人の雰囲気があやしいです!」
律「うむ!唯隊員!実にあやしい!」
紬「尾行しましょう!」
律「うお!いつになく元気だな・・・ムギ・・・。」
紬「元気じゃなくちゃいられないわ!」
唯「すごい気合いだね・・・。」
律「よし!尾行作戦開始だ!」グッ
唯・紬「おー!」グッ
最終更新:2011年11月26日 22:09