・・・
私の知らない間に会社の金庫はすっからかん。
嘘、何となく分かってたんだ。
ポンコツアトラスは私達の世界を支えられずに落として壊してしまうし、掲げられた看板も錆びついて今にも地に落ちそう。
あはは、お終いの時間だよぅ。
・・・
りっちゃんは二曲やったら、もう息が上がってる。
律「たんま、ちょい休憩しようぜ・・・」
梓「ぷっ、律先輩もう老化が始まってるんじゃないですか?」
律「中野ぉ!」
えへへ、こう言うの懐かしい。
あの部室を思い出す。
私達が輝けガールズな頃。
ふと、りっちゃんが呟く。
律「唯がベースかー・・・」
あずにゃんが「あっ」と言う表情になる。
バンドにはベースが必要でしょ?
りっちゃんは、私がベースじゃ不満だろうけどさ、私も一生懸命やったよ。
でも、それだけじゃメロディーも足りなくなっちゃうもんね。
結局、終末からは逃れられない。
朝日が眩しい。
りっちゃんが懐からジョイントを取り出し、私に差し出す。
唯「良いね。やっぱりっちゃんってば分かってるぅ」
梓「この期に及んでですか?」
あずにゃんの話の腰を折るような態度に私とりっちゃんは親指を下に向ける。
唯「ぶー」
律「ぶーぶー」
あずにゃんは溜め息をつく。
でも、柔らかく苦笑して
梓「まあ、先にティータイムって言うのが私達ですもんね、最後までこう言うのがらしいかも知れませんね」
唯「じゃあ、あずにゃん先に吸って良いよ」
梓「そうですか?じゃあ…」
あずにゃんは肺の奥で味わおうというのか深く吸い込む。
唯「そう言えば、りっちゃん」
律「んー?」
唯「こんな事になっちゃってごめんね?」
りっちゃんは予想しなかった言葉を聞いた様な表情になる。
あれ?
律「あー、良いよ、気にしてない。ここにいない奴のせいだってことにしようぜ」
そう言うとりっちゃんはニシシと笑う。
あずにゃんが吐き出した煙が空に溶ける。
律「んじゃ、法律的な手続きってのに行って来るよ」
りっちゃんは手を振って屋上を出て行く。
あずにゃんは悲しい気持ちが拡大されちゃったのか、しゃがみ込んでしまっている。
唯「ほら、あずにゃん立って」
梓「あ、唯先輩ぃ・・・。これから、どうしたら・・・」
唯「大丈夫だよ、きっと」
私とりっちゃんは、一年位は憂に養って貰うとして・・・。
勿論、バイトするし・・・。
あずにゃんは純ちゃんにお願いするとしてー・・・、って後ろ向き過ぎる?
私はあずにゃんの体温を感じながら、これからの生活に想いを馳せる。
今までみたいに予算潤沢って訳にはいかないかも知れないけど、時々集まってみんなで、さっきみたいにジャムるの。
ジャムるの楽しい。
そんで、時々は小さな箱でライブも。
…んー?
あれ、もしかして何も変わらないんじゃ・・・。
梓「・・・ぱい、・・・先輩、・・・唯先輩!」
もー、何さー!こんなにみんなの事考えてるのに!
私はあずにゃんが震える指で指し示す屋上の入り口を見る。
そこにはりっちゃんと・・・。
そこで、私は駆け出す。
放り投げられる形になったあずにゃんが何か文句を言う言葉が後ろで聞こえたけど、後で抱きしめて上げるから許してね。
唯「澪ちゃーん!」
澪「ああ、唯、HTTが続いてたから戻ってこれたよ」
りっちゃんは、何の事か分からないのか目を白黒させている。
良いよ、安心して。
後でちゃんと説明して上げる。
これから幾らでも話すチャンスはあるもんね。
・・・
ムギちゃんは瞳に涙を一杯に浮かべて、飛びついてくる。
ムギ「ただいま、唯ちゃん」
唯「おかえり、ムギちゃん」
私もムギちゃんを抱き締める。
お別れの挨拶をした時、ムギちゃんがどんな表情をしてたかって?
きっと、泣きそうになるのを堪えてたんだと思う。
感情を出すのが恥ずかしい時ってあるもんね。
・・・
こうやって久しぶりに五人が揃ってみて分かるのは、やっぱり楽しいって事もそうだけど、
私たちを襲ったトラブルがほぼ解決したって言う事。
裏を返すと離れ離れになって以来、随分長い間トラブルに襲われ続けたって事なのかも?
えっと、大人としての嫌らしい話なんだけど、ムギちゃんと澪ちゃんがいたら、
そしてまあ、私に(勿論りっちゃんやあずにゃんにもね!)少しの節制だって必要かも知れないけど、
私達がそんな頑張る必要なんてなくなってしまうのだ。
現実問題として。
りっちゃんは、ベッドと食堂の往復しかしないこの一月で3kg太ったって悩んでる。
ここの料理美味しいもんね。
あずにゃんはりっちゃんを反面教師にして一日に三度一回5kgずつホテルのプールで泳いでたら、
只でさえ遠慮がちな・・・、おっと、これ以上は武士の情だね。
さて、これから何をどうしていく?
それは、勿論・・・・。
最終更新:2013年05月25日 23:09