【駅前】
唯(と、帰る前に、ちょっと休憩!)
唯(駅前のベンチに、どっこいしょ!)ドスン♪
唯(いやー、思いの外歩き回ったなー)
唯(若いコはホント元気だわ~)
唯(あのコたち今頃、何してるかなー?)
唯(もう告白とかしちゃってたりして!?)キャー///
唯(ふふふ~)
唯(もし二人が上手くいって、付き合うとか、お嫁にくるとかだったら、大賛成!)
唯(いいコみたいだし、抱き締めたくなるほどカワイイし!)
唯(ほんとにお人形さんみたいだったよね~)
唯(私がこどもの時に一緒に遊んだ、大事なお人形に、ソックリ!)
唯(…………んん?)
唯(待って、私はそういう人形とかは、持ってなかった様な気も?)
唯(あれ、じゃぁ何と勘違いしてるんだろう??)
唯(…………)
唯(金色の、ふわっとした長い髪)
唯(んん。分からないけれど、)
唯(あのコを見てると、なぜだか、懐かしい気分になるんだよね~)
唯(なんでだろ??)
J( 'ー`)し(……)テクテクテク
J( 'ー`)し(……アラ?)
J( 'ー`)し(あそこで座ってる人、昔、どっかで見たような???)
唯(……んん。まぁ、いいや)
唯(きっとこの後、あの二人は平穏なハッピーエンド迎えるんだろうなぁ……)
唯(それで二人、気の合う仲間たちと共に、キラキラした人生を歩んでいく……!)
唯(親元を離れ、自分の行きたい方向へ、自分たちの力で進んでく……!)
唯(そういうのって、いいよね。本当に青春!)
唯(…………)
唯(それに引き換え、大人になったのに、私は散々だなー)
唯(家族サービスはあんまりだけど、家庭を守ろうと仕事熱心な旦那がいてくれるのは、ありがたいことだし
、)
唯(息子の成長してく姿や、いつか家族が増えるかもってのは、ワクワクしちゃうけど……)
唯(それでも私は、私自身は、)
唯(もう、何もできない人間になっちゃった気がするなぁ……)
唯(……この後の人生は、味気ないものになっちゃいそう)
唯(まるで、砂や錆びだらけの、草も生えない不毛な大地を……)
唯(目的もなく、いく宛もなく、乗り物もなく、ゆっくりお婆ちゃんになりながら、)
唯(ただただ、1人裸足で、歩き続けちゃうみたいな)
唯(得意なことも、別にない。好きなことも、できてない……)
唯(家事とかも、そこまで上手くできる訳じゃなし……)
唯(パートのお仕事も、社員さんの言われた指示を聞いてるだけ……)
唯(もし結婚に逃げたりせずに、お仕事を頑張り続けてたり……!)
唯(大学でも、もっと勉強や就職活動をちゃんとしてたり……!!)
唯(バンドとかも、もっともっと一生懸命やり続けてれば…………!!!)
唯(今頃は、アイドルみたいに、キラキラ輝けてる、そんな人生を送れていたかなぁ?)
唯(…………ううん)
唯(いけない、こんな暗いことを考えちゃうのは良くないね!)
唯(そうだ! こういう時は、気分が明るくなって、元気の出る歌を唄っちゃおう!)
唯(鼻唄で! そう、『ふわふわ時間』を!!)
唯(たしか出だしは……えーと)
唯(思い出した! よーし! 久しぶりに歌うぞ~)
唯「 ~ ♪ 」
J( 'ー`)し「!!?」ピクッ
唯「 ~ ♪♪ 」
J( 'ー`)し「!!!!!!」
J( 'ー`)し「あ、あぁ…………!」
唯「~♪」
唯「…………」
唯「…………??」
唯「あれ、2番の出だしはどんなだっけ?」
唯「…………」
唯「もう歌うことも、ギター弾くこともないから、忘れちった……」
唯「とほほほ……」
J( 'ー`)し「うぅぅ、うぅぅぅ」タッタッタッタ!
J( 'ー`)し「唯ちゃん!」
唯「ほえっ!?」
ガバッ!
むぎゅぅぅぅぅぅぅぅ
唯「あわわわわえあわ!?」
唯(い、いきなり見知らぬ人に抱きつかれた!?)
J( 'ー`)し「うぅ……」
唯「ど、どうしたの? アナタ誰? 何があったの??」
J( 'ー`)し「ごめんね、ごめんね。唯ちゃん、ようやく出会えた……」
唯「えっ??」
J( 'ー`)し「あ、これじゃ分からないわよね、変装してるし」
唯「ええっ?」
J( 'ー`)し「こんな姿だけれど……」
J( 'ー`)し「私はムギよ。旧姓、
琴吹紬。久しぶりね、唯ちゃん!」
唯「……………………」
唯「どぅええええええええ!!???」
【喫茶店】
紬「それじゃ、再会を記念してかんぱーい!」
唯「か、かんぱーい! カプチーノだけど」
紬「うふふふ~」
唯「…………」
唯「いやー、まさかムギちゃんと会うことになるとは、ビックリだ!」
紬「うんうん、私もビックリ!」
唯「ところで、カーチャン……じゃなくて、ムギちゃんは、さっきまで何してたの?」
紬「あっ、えっと……その、内緒にしてほしいんだけど、」
唯「ふむふむ」
紬「娘が、同じ部の後輩とデートするって言うから、気になってコッソリ追跡を…………///」
唯「…………ほぇ」
紬「相手もちょっと心配なトコあるけど、素敵な男の子で、」
紬「映画見たり、デートもいい雰囲気みたいで一安心だわ~」
唯「…………え、えーと」
唯「ね、ねぇ。ムギちゃん?」
紬「なぁに?」
唯「その娘さんが見た映画って、もしかして、このチケットのヤツ?」
ガサゴソ
紬「あっ、それそれ! 唯ちゃんもこの映画を観に行ってたんだ!」
唯「…………あ、いや、実はね」
唯「その、私も息子が先輩とデートするって言うから、気になって追跡を…………」
紬「へー、そうなんだ。奇遇ね~」
唯「…………」
紬「えっ」
えええええええええええ
唯「ま、まさかさっきの美少女ちゃんが、ムギちゃんの娘とは…………」
紬「そんな、美少女なんて/// ほんと家ではお転婆で困っちゃうもの……///」
紬「それにしても、唯ちゃんがあの素敵な男の子のお母さんだったなんて……凄い運命よね、奇跡みたい!」
唯「まぁ、ちょっとおバカなトコあるけど、いいヤツですよ。自慢の息子です!」エッヘン!
紬「うふふ~」
唯「それに、思わぬ形で、ムギちゃんと引き合わせてくれて、圧倒的感謝!!」
紬「ほんとほんと!」
紬「ね、ねぇ唯ちゃん、最近はどう?」
唯「最近?」
紬「お仕事とか、趣味とか。それにやりたい事とか、ある?」
唯「んーとねー」
唯「お仕事は、近所のお店でパートしてるよ~」
紬「ふんふん」
唯「趣味とかも、家事とかで忙しいし、空いた時間でネット見るくらいかな……」
紬「へー」
唯「そんでね、動画サイトとかで、よくバンドとか個人創作の音楽とか観てるんだけど、」
唯「おなじみの、原点にして頂点みたいな人達だけじゃなく、」
唯「埋もれてるけど、『もっと評価されるべき』みたいな人や曲がたくさんあるんだ~!」
紬「うん……??」
唯「そういうのに、スポットライトを当てるような、まとめサイトとかを作りたいかなーって」
紬「おー……??」
唯「…………まぁでも、私はパソコンとか詳しくないし、既にそういう事してる人やサイトもあるし、」
唯「何より時間もなくて、私じゃできそうにないケド、エヘヘ……」
紬「そっちの方面はよく分からないけれど、いろいろあるみたいね~」
唯「ムギちゃんは? どんな感じ?」
紬「私?」
唯「お仕事とかはしてるの?」
紬「う、うん。ちょっと、会社をしてます……!」
唯「会社してるって、社長さんなの!? す、すごい!!!」
紬「えへへへ////」
唯「流石はムギちゃん、すごい! すごいよムギちゃん!!」
紬「色々と、大変だったんだけど……」
紬「最近ようやく、余裕がでてきたの!」
紬「ねぇ唯ちゃん!」
唯「なぁにムギちゃん?」
紬「さっき歌ってくれて、ありがとね」
紬「歌ってくれたから、唯ちゃんに気づけた。また出会えた!!」
唯「いや、そんな……」
紬「さっぱり連絡取れなかったのに、ここで会えたのも、きっと何かの縁、」
紬「単刀直入に、お願いしたいの!」
唯「……ふぇ?」
紬「昔みたいに、私たちと、りっちゃん、澪ちゃん、梓ちゃんで集まって」
紬「またバンドを、復活できないかしら!!!?」
唯「…………………!!!!!」
最終更新:2018年02月17日 20:50