~合宿2日目・朝・食堂~
紬「朝御飯も終わった所で、ちょっとみんなにお知らせがあります」
律「お知らせ?何だ?」
紬「実はね、今日は1組だけお客さんが来る事になったの」
梓「え?誰も来ないんじゃなかったんですか?」
紬「ええ、ちょっと連絡が行き届かなくて…キャンセルも間に合わなかったみたい」
唯「そっか…じゃあ私達がお迎えしないといけないんだね」
澪「私達だけで出来るのか?」
律「確かに、1組だけって言ってもちょっと不安だな…」
紬「大丈夫よ、そのお客さんはね、私達も良く知ってる人達だから」
紬「車の音…来たみたいね」
紬「じゃあみんな、お迎えの準備は出来たからしら?」
…
紬「…良いみたいね」
ガチャッ
唯律澪紬梓「ようこそ、いらっしゃいました!」
憂「え?お姉ちゃん!?」
和「唯…それに軽音部のみんなじゃないの…」
和「あなた達、此処で何をしてるの?」
~食堂~
和「合宿を兼ねたアルバイトね…楽しそうで良いじゃない」
律「それよりも和と憂ちゃんはどうして此処に?」
唯「そうだよ、憂が此処に泊まりに来るなんて全然知らなかったよ?」
和「まあ細かい所は省略させて貰うけど…」
和「私が商店街の福引で此処へのペア旅行を当てたのよ」
和「最初は唯と憂に行って欲しくて、憂にプレゼントしたんだけど」
憂「お姉ちゃんを誘おうとしたら、合宿に行くって先に言われちゃったから…」
和「代わりに私が誘われたって訳」
唯「そうだったんだ…憂、ごめんね?」
憂「ううん、今はこうしてお姉ちゃんと一緒になれたから良いんだよ」
…
澪「なあ律、ちょっと話が出来過ぎてると思わないか?」
律「確かにな…でも、合宿がもっと楽しくなると思うから良いんじゃないのか?」
澪「まあ、そうなんだけど…」
~夜~
律「ふぅ~、食った食った…」
律「憂ちゃんもそうだけど、和も料理が上手いんだな」
和「そ、そう?ありがとう」
澪「2人共悪いな、昼も夜も作って貰って」
憂「良いんですよ、私は料理するの大好きですから」
梓「でも、言ってくれれば私達も手伝うよ?」
唯「そうだよ~、私も…」
梓「唯先輩は手伝わなくても良いですから」
唯「あずにゃん、酷い…」
和「少しだけみんなでスキーをして遊んだけど」
和「それ以外の時間は5人で朝から頑張ってたものね」
和「これ位の事はさせて貰わないと居心地が悪いわよ」
ドーン!
律「何だ?今の音は」
紬「花火じゃないかしら?」
梓「花火?この季節にですか?」
紬「ええ、珍しいでしょ」
紬「名前は忘れちゃったけど、確か町でお祭りがあったはずよ」
紬「花火も打ち上げるんじゃなかったかしら?」
唯「見て見て!こっちの窓から少しだけ見えるよ!」
憂「ほんとだ…綺麗だね、お姉ちゃん」
和「でも、さっきの音ってちょっと違う方向から聞こえなかった?」
澪「山で音が跳ね返るんじゃないのか?」
和「なるほど…そうかもしれないわね」
~お風呂~
律「昨日は眠くて良く覚えてなかったけど、此処の風呂は広くて良いな~」
紬「言い忘れてたんだけど、温泉だから1日中好きな時間に入っても良いのよ?」
梓「だったら、私は明日の朝にも入りたいですね…」
梓「あの、澪先輩も一緒に…」
澪「そうだな、1人で入ってもつまらないか…じゃあ、私も付き合うよ」
梓「はい!」
…
憂「どうしたの?お姉ちゃん」
憂「さっきからじっと胸を見られてる気がするんだけど…」
唯「憂、どうして私を追いて行くの…」
律「唯、そういう時にはな…」ゴニョゴニョ
唯「なるほど!憂、ちょっと私の後ろに来て?」
憂「え?良いけど…何かするの?」
唯「うん、ちょっと手を出して?で、そのまま私の胸を…」
律「和はメガネを外すと何も見えないのか?」
和「ええ、殆ど何も見えないわね」
和「でも、そういう状態にも慣れてるから」
律「そうか、何か見てて危なっかしいって思ったから」
律「付いててやろうかって思ったんだけど、大丈夫か」
和「…」
和「あの…律」
律「ん?何だ?」
和「家のお風呂だったら慣れてるんだけど…」
和「知らない所だと、やっぱりちょっと怖いかも」
律「そうか、じゃあずっと付いててやるよ」
和「え、ええ、そうして貰えると助かるわ」
律「あれ?」
律「ムギ、今出て来た扉は何だ?」
紬「1人用のサウナよ?」
律「サウナか…あたしも入ってみようかな」
紬「あ、今は入らない方が良いと思うわ」
紬「ちょっと温度調節が故障しちゃったみたいだから」
紬「中は逆に寒い位じゃないかしら?」
律「寒い位って…良く見たら鳥肌立ってるじゃんかよ」
律「分かった、諦めるとするか」
和「…」
~憂の部屋~
憂「今日は1日楽しかったな…」
憂「お姉ちゃんと一緒にスキーをして」
憂「和ちゃんと一緒にお料理をして」
憂「みんなでご飯を食べて、お風呂に入って…」
憂「和ちゃんを誘って本当に良かった」
憂「明日も凄く楽しみだよ…」
憂「さて、寝る前に純ちゃんにメールしておこうかな」
…
憂「あれ?おかしいな…携帯は確かテーブルの上に置いておいたのに…」
~梓の部屋~
コンコン…ガチャッ
憂「梓ちゃん、お邪魔…」
憂「…」
憂「あの、見てないからね?」
梓「良いよ別に…どうせ憂には分かってると思うから」
憂(ぬいぐるみだけど…澪さんにそっくりだね)
憂「それ、毎日やってるの?」
梓「やってるよ、寝る前にぎゅ~って」
憂「言えば良いのに、きっと梓ちゃんなら大丈夫だと思うよ?」
梓「…憂は、よく言えたよね」
憂「…」
憂「そうだよね、私も言う時には凄く迷った」
憂「言いたくても言えない事って沢山あるよね…ごめんね、梓ちゃん」
梓「ううん、良いんだよ」
梓「それで、憂は私に何か用事?」
憂「そうだよ!すっかり忘れてた!」
憂「あのね、携帯を何処かに置き忘れちゃったみたいなの」
憂「梓ちゃんは純ちゃんにメールするよね?」
憂「私からもよろしくって事、伝えておいてくれないかな?」
梓「良いよ、私も寝る前にメールしようって思ってたから」
梓「でも置き忘れたって、どの辺に?」
憂「分からないんだけど、お風呂に入る前までは見てたから…」
憂「とにかく、この建物の中の何処かだと思う」
梓「じゃあ憂の携帯に電話すれば、着信音で何処にあるのか分かるよね」
…
梓「何でだろ…お風呂に入る前には此処にあったはずなのに…」
憂「…」
憂「梓ちゃん、私と一緒に来て?」
梓「え?何処に行くの?」
~唯の部屋~
コンコン…ガチャッ
憂「お姉ちゃん」
唯「どしたの?憂、そんなに怖い顔して…」
憂「携帯、持って来てるよね?」
唯「うん、持って来てるよ~」
憂「ちょっと出してみて」
唯「え?あの…もしかして中を確認したりするの?」
唯「今ちょっと待ち受けの画面が恥ずかしい事になってるから…」
梓(唯先輩が恥ずかしいって、それはちょっと気になるな…)
憂「ううん、あるかどうかだけ確認して欲しいの」
唯「中は見ない?」
憂「うん、見ないから」
唯「じゃあ、ちょっと待ってね~」
唯「確かベッドの枕元に…あれ?無いよ?」
~食堂~
律「正直に言ってくれ、誰がこんないたずらをしたんだ?」
澪「律、みんなを疑うのか?」
律「疑いたくはないけど…でも、此処にはあたし達しか居ないんだぞ?」
律「誰かがいたずらして隠したに決まってるだろ」
和「律、それは無いと思うわ」
律「どうしてだよ」
和「今、話を聞いてて分かったんだけど」
和「携帯が無くなったのは、みんなでお風呂に入ってる間の事よ」
和「私もね、はっきり覚えてる」
和「明日の天気が気になったから携帯で調べようと思ったんだけど」
和「出した所で律が呼びに来たから鞄の中にしまっておいた」
律「そう言えば…確かにあたしが呼びに来た時に、和は携帯を持ってたな」
和「お風呂から上がったら続きを調べようと思ったの」
和「でも…帰って来たら無くなってたわ」
和「お風呂には此処に居る全員で入った」
和「誰が誰を誘って全員が揃ったのか…」
和「みんなの話をまとめていけば分かると思うけど、それは無意味ね」
和「私と律がお風呂に来た時にはみんな揃ってた」
律「そうか…誰も途中で風呂からは出てないから…」
律「和の携帯を隠す奴は居ないって事になるな」
和「もちろん、私と律がいたずらをする為に嘘を言ってる可能性もあるわ」
和「でもね、1番最後に来たって言ってもせいぜい1分位の違いよ?」
和「逆にお風呂から上がる時は全員揃って戻ったわよね」
和「みんな最初は自分の部屋に戻ったと思うから」
和「その間に全員の携帯を探し出して隠すなんて事、まず不可能よ」
澪「待て、待ってくれ和」
澪「それ以上は言わないで欲しい」
澪「それ以上何か言われると…私、怖くて泣き出すかもしれない…」
梓「澪先輩…だ、大丈夫ですよ!みんな何か勘違いしてるだけですって!」
唯「う~ん、何だか良く分からないけど…」
唯「私達以外の誰かがこの建物の中に居て」
唯「その人が全員分の携帯を隠したって事?」
澪「ひっ…」
律「あちゃ~、言っちゃったか…」
和「まあ、常識的に考えればそうなるわね」
憂「でも、私達以外は誰も居ないんじゃなかったんですか?」
紬「…」
紬「そう、私達以外には誰も居ないわ」
紬「それなのに、こんな事が起きるなんて絶対におかしい」
紬「警察に連絡しましょ!」
律「警察?それはちょっと大げさ過ぎないか?」
和「ううん、私は賛成よ」
和「梓が言ったみたいに、全員が勘違いをしている可能性も0じゃないと思う」
和「でも、それならそれで良いじゃない」
和「これ以上不安なままで過していたら澪が…ううん、正直に言っちゃうとね」
和「私も今すぐに泣き出したい位に怖いのよ」
和「唯、そこにある電話で110番して」
唯「うん、分かったよ」
唯「ぴ…ぽ…ぱっと」
唯「…」
唯「…あれ?」
律「どうした?唯」
唯「つ、つながらないんだけど…」
梓「外線をかける場合には、最初に何かを押すんじゃないんですか?」
唯「ううん、そうじゃなくって」
唯「音が何にも聞こえないの、電話線が切れてるんじゃないのかな…」
憂「そんな…コードが抜けてるとかそういう事じゃないの?」
唯「う~ん、どうなんだろ?私には分かんないや…」
律「ぱっと見た限りでは、そうでも無さそうだな」
梓「故障だとしたら、素人が見ても分からないですよね…」
和「私達の泊まってる部屋には電話が無かったけど」
和「紬、他に電話は無いの?」
紬「あるとしたら、此処のオーナーさんの部屋かしら?」
紬「鍵も預かってるわ」
和「じゃあ、そこの電話を試してみましょう」
~オーナーの部屋~
和「駄目だわ…つながらない」
梓「パソコンがあったので立ち上げてみましたけど」
梓「ネットも全く繋がらない状態ですね」
和「打つ手無しかしら…」
澪「そんな、和にそんな事を言われたら…」
律「何か良い手は無いのか?和なら何か思い付くだろ?」
和「私だって普通の女子高生よ?」
和「そんなに簡単に思い付く訳ないでしょ!」
唯「和ちゃん、そんな言い方をしなくても…」
和「あっ…ご、ごめんなさい…」
律「いや、あたしの方こそ…」
憂「あれ?」
唯「どしたの?憂」
憂「紬さんが居ない…何処に行ったんだろ?」
最終更新:2011年04月29日 19:07