&aname(82,option=nolink){82} 「グギアガアアアアアアアアアアアア!!」 走って来るエリーとくるみを狙って、幽香は口に妖力を集め始める。 かわそうとする二人だったが、生憎そこまで部屋は広くなかった。 「どうするエリー!」 「真正面から突っ込んで止めるわ!」 かわせないのなら、止めるしかない。 そう判断したエリーは、一気に幽香の許へと加速していった。 徐々に狭まっていく二人と幽香の距離。 幸い先程の戦いから回復しきれてないのか、熱線の放出には時間がかかっていた。 「これなら間に合う…!」 急いで駆け寄る二人、ところが誰もが予想しなかった出来事が起こる。 「……しまっ!」 なんと幽香は四枚の翼を生やし、飛び立とうとし始めたのだ。 外に逃げられれば動きを封じるのは難しい。 更に部屋を狙って熱線を吐かれたら、回避する間もなくやられてしまう。 「何か方法は……」 走りながら必死に考えるエリー。 くるみも弾幕を放つが、幽香を止める事には威力が足りない。 最早これまでか。そう諦めがよぎった二人の視界に、突然糸が飛び込んで来た。 「!!」 その糸は幽香と足下の畳に絡み付き、飛び立とうとするのを妨害する。 慌てて二人が糸の飛んで来た方を見ると、そこにはパルスィの姿があった。 「貴方さっき戦った……どうして?」 「仲間が苦しんでるのに、ただ見てるだけなんて出来ないわ」 だが幽香は腕を大きく振り上げ、糸を切ろうとしてくる。 すると左腕を早苗と蓮子、右腕をさとりと空が押さえつけた。 「貴方達……」 「私達にとっても幽香さんは大切な仲間なんです!」 「仲間を助けるのは、人でも妖怪でも当然の事!」 「幽香も貴方達を傷つけたくないと思ってる、なら私達は手を貸すだけよ!」 「最優先スルベキハ幽香ノ救出、貴方方ヲ同ジ志ヲ持ツ仲間ト認識シマス」 「皆……」 妖怪達の加勢に心を打たれる二人。 皆の想いを無駄にしてなるものかと、二人も幽香目掛けて駆け出していく。 ところが幽香は種のような弾を飛ばし、二人を攻撃してくる。 しかし巨大な氷の立方体が現れ弾を防ぎきった。 「この妖力……いえ、魔力は……」 「……アリス!」 二人が名前を呼んだ途端、砕けた氷の中から現れるアリス。 そして二人を流し目で見ると、目を逸らして口を開いた。 「勘違いしないでよね! 私達は幽香を助けたいだけ、その為にあんた達を利用するだけよ!」 そう言って人形達を、二人の周りに飛ばせる。 人形達は飛んで来る弾を打ち消し、二人を守ってくれた。 「行きなさい! 幽香を止めるには幽香と長い時間一緒にいた、貴方達の攻撃が一番効くはずよ!」 最早邪魔するものは何もない。 輝夜と鈴仙も妖気を使ってサポートしてくれている。 後はただ一直線に幽香の許へ走るのみ。 この一撃で終わらせる。 そしてこの一撃で始めよう。 もう一度、幽香と暮らせるあの日々を。 「私達の想いよ!」 「幽香ちゃんに届け!」 『強くて気高い幽香ちゃんに届けええぇぇぇ!!』 意識を失い横になる幽香、その周りでは他の妖怪達もぐったりしている。 幽香の後ろではルーミアが、酷く疲れ切った様子で立っていた。 「さすがは私を退けた妖怪達………よくぞ幽香を救ってくれた。合成妖怪を代表して礼を言う、本当にありがとう」 「そんな、私達は……」 「皆が手を貸してくれたからよ」 「………いや、お前達の想いの力があったからこその結果だ。だがまだ終わりじゃない。私が話した事、覚えているな?」 そう言ってルーミアは両手を広げる。 そこには片手に一つづつ、どす黒い謎の球体が握られていた。 「……これは…?」 「私が切り離した幽香の闘争本能だ。このまま時間が経てば、幽香の中に戻ってしまう」 「それじゃあ………どうしたら…」 「呑み込め」 「……えっ?」 「こいつを呑み込むんだ。そうすれば闘争本能は三人の体に分けられ、もう幽香が暴走する事もなくなる」 ルーミアは二人に、その球体を手渡す。 球体からは禍々しい妖気が流れ出しており、とてもじゃないが口に出来そうな物ではなかった。 するとルーミアは、苦笑いを浮かべて二人に話しかける。 「安心しろ、代わりにお前達が暴走するような事はない……筈だ。少なくても理性を失う事は絶対にない。 ただ私は闇の知識に長けた妖怪でな。私の知識は所謂禁術、その力を我が身とする事すなわち罪。 他者の妖力や闘争本能を吸収するこの術も、一度呑み込めば罪を背負う事になるのだ。 精神を重視する妖怪が禁術を受ければ、その身は邪に染まり悪へと堕ちる。二度と元には戻れない。 だから私は最初にお前達の覚悟を確めた。そしてお前達はあると答えた。 ならば迷わず呑め、それが私の知り得る幽香を救う唯一の方法だ」 二人は改めて球体を見た。 やはり食べられる物にはとても見えない。 しかしこれを呑み込まなければ、幽香を救う事は出来ないのだ。 「………私達じゃなきゃダメなのよね」 「私の知識は私を倒した者のみが受け入れられる。それだけの力を示せなければ、禁術の力で破滅するからだ」 「…………そうよ、私達は幽香ちゃんを助ける為に来たんじゃない。今更こんな事で挫けて堪るもんか!」 「勿論よ、エリー!」 二人は大きく息を吸い、ゆっくりと目を閉じる。 そして一気にその球体を呑み込んだ。 「…………か………ん…」 誰かの声がする。 「……うか……ん…ゆ………ちゃ……」 とても懐かしい声。 「……私は……」 その声に導かれるように、幽香は目を覚ました。 ルーミアが変化したところまでは覚えているのだが、そこから先がはっきりしない。 確か誰かと戦っていたような気が、そこまで考えて幽香はある違和感に気付く。 「………あら?」 今まで四六時中意識を奪おうと襲って来た闘争本能が、今は全く込み上げて来ない。 どうして、と疑問を浮かべる幽香。 すると突然、何かに抱き締められる感覚がして驚き振り返った。 「よかった! 無事だったのね、幽香ちゃん!」 「このまま気がつかなかったら、どうしようって…」 「エリー……くるみ…………ッ!! 貴方達その姿…!」 そこにいたのは幽香を探して永遠亭にやって来ていた、エリーとくるみ。 しかしその姿は禍々しく変化していた。 エリーの肌は紫に染まり、白い文様が全身に広がっている。 更に背中には真っ黒な翼が生えており、足は猫のような形になっていた。 一方でくるみの肌は水色に染まり、赤い文様が全身に広がっている。 更に頭には山羊のような角が生えており、スカートからは悪魔のような尾が伸びていた。 また二人とも白目の部分が黒く染まっていて、それがより不気味な印象を与える。 その禍々しい姿に、幽香は動揺を隠し切れずにいた。 「一体、私が倒れている間に何が……」 「そこの二人は幽香、お前を救う為にその姿になったのだ」 そう言って姿を現したのはルーミア。 ルーミアだけじゃない、他の永遠亭の妖怪達も周りにいた。 「私の……為……」 「そうだ。だがお前がするべき事は謝罪ではない、感謝だ」 「……感謝………そう…よね」 幽香はルーミアの言葉にはっとすると、寄り添う二人の顔を見る。 そして改めて自分の為にここまでしてくれた事に感謝し、目に涙を浮かべて異形の腕で抱き締めた。 「…ありがとう……エリー、くるみ……」 「幽香ちゃん……」 確かに姿こそ変わってしまったが、三人はあの頃と何も変わらない。 そこには仲睦まじい夢幻館の姿がはっきりと浮かび上がっていた。 「幽香ちゃん、私達こんな体になっちゃったけど……好きでいてくれる?」 「当たり前じゃない! 二人とも心の底から愛してるわ」 「じゃ、じゃあ私の気持ちも全身で受け取…」 「そこまでよ!」 「あ、アリス!? はうあっ!」 「うわぁ……痛そう…」 エリーを思いっきり蹴り上げたアリスは、蹲るエリーを見てくすくすと笑う。 その後ろには、輝夜率いる永遠亭の妖怪達の姿もあった。 「……なんか…寂しくなるわね」 「輝夜……」 「でも貴方達の姿を見てたら、それも仕方ないって思えて来たわ。夢幻館に帰っても元気でね」 「…………」 そう言って別れを惜しみ、悲しそうな顔をする輝夜。 するとエリーとくるみはお互いに顔を見合わせ、不気味な笑みを浮かべ出した。 「……な、何?」 「ねぇ輝夜? 貴方は私達をこんな体にしておいて、何もしないで帰そうって言うの?」 「え? だってそれは貴方達が…」 「きっと私達、外に出たら化け物って蔑まれるんだろうなぁ~」 「……そんな…」 「どう責任とってくれるのかなぁ~、輝夜様?」 「………それは……」 「そうねぇ、せめて三食部屋付きは欲しいわ」 「…………え?」 「後、幽香ちゃんの為に花畑も欲しいところね」 「………それって…」 「私達をこのまま帰すつもり?」 「もう元には戻れないんだから、一生面倒見なさいよね!」 「……エリー…くるみ…」 その言葉に輝夜は嬉しそうに涙を流す。 それに応えるように、エリーとくるみも穏やかに笑った。 「………主従関係というのも悪くないかもしれないな」 そんな様子をルーミアは、少し離れた所で眺めている。 そこへ合成妖怪達が近付いて来た。 「素直じゃないのね、本心では輪に加わりたい癖に」 「貴方だってなれますよ、立派な従者に」 「私達は誰も貴方を拒まないわ。だって貴方は私達の仲間だもの」 ルーミアは合成妖怪達の言葉にぽかんとする。 そして鼻で笑うと、いつもの不敵な笑みを浮かべて呟いた。 「……全くどうしようもない奴ばかりだな、この屋敷は。仕方ない、私が用心棒をしてやろう」 「決まりね!」 そう言って、輝夜は突然ルーミアの前に現れる。 驚き目を丸くするルーミア。その手を握り引っ張ると、輝夜はくるくると回り出した。 「な、何をする! やめ、ひゃめろぉ~…」 「家族が増えるわ! 後でレティにも教えてあげないと!」 「やったね、ひめさま!」 その光景を嬉しそうに見ているエリーとくるみ。 幽香はそんな二人に一つ、気になっている事を問い掛けてみた。 「エリー、くるみ。本当にこれでよかったの?」 「何言ってるの、私達は後悔なんてしていないわ」 「どんな姿だろうとどんな場所だろうと、皆一緒が一番幸せよ」 「………二人とも…」 「さぁ、これからはずっと一緒よ!」 「またあの頃みたいに仲良く暮らしましょ、幽香ちゃん!」 「……ええ!」 そう言って幽香は、にっこりと微笑む。 異形の者達の巣、永遠亭。 そこは今、幻想郷でもっとも幸せが溢れる場所となっていた。 HAPPY END『今昔幻想郷』 最後までご愛読いただき本当にありがとうございました! 設定資料:[[アルティメットトゥルース:32スレ868]] - 9と75にはどうすれば行けるんだ?未だに分からない。 &br() -- 名無しさん (2011-06-12 00:39:25) - 75は繋がってるみたい &br()天使伝説見ると &br()まさかあの人この作品からも出ていたなんてねぇ… -- 名無しさん (2011-06-18 13:40:00) - ラストで化け物連中が根はいい奴らだと判明して笑ったwww 永遠亭いいとこじゃん。 -- 名無しさん (2011-10-14 16:47:56) - ↑ &br()それが永遠亭クオリティ -- 名無しさん (2011-12-05 13:54:58) - 75は67の幻月にリンクされてる -- 名無しさん (2014-12-17 04:02:45) - ごちゃごちゃしてて訳わかめ -- 名無しさん (2016-01-16 17:36:16) #comment(vsize=2,nsize=20,size=40)