パァン、と頬を叩く音が食堂へ鳴り響いた。

叩かれたのは私、レミリア・スカーレット。
叩いたのは私の従者、十六夜咲夜だ。

叩かれた衝撃で、無様にも私は椅子から落ち床の上へ転がる。
痛む頬に左手を添え、右手を床について従者を見上げる私は周囲から見たらさぞ滑稽に映っただろう。
対して、腕を組み私を見下ろす咲夜の目は暗く、そして冷たかった。

ああ、どうしてこうなってしまったのだろう。
何がいけなかったのだろう。
頬の痛みと、心の痛みから滲み出てくる涙を必死にこらえながら私は考えた。
いや、考える必要なんてそもそもありはしなかった。答えは分かっているのだから。

そう、すべては納豆のせい。





いつからだっただろうか、紅魔館の食卓に欠かさず納豆が出るようになったのは。

「咲夜、今日も納豆なの?」
「はい、おいしいですよね、納豆」

最初は気にもとめなかった。
たまたま私が納豆が食べたい気分な日が続いていたというのもあっただろう。
しかし、それが三日、十日、一月と続けば流石に違和感を覚えざるを得なかった。

「いや、別にかまわないけどね。ただ、美味しい物でも毎日食べていると飽きてくるでしょう?」
「そうですか……」

咎められたと思ったのか、咲夜はしゅんとして引き下がってしまった。
悪いことをしたかも知れない。
そんなことを考えている余裕が、このときにはまだ、あった。



「…………」
「…………」

朝食の席に食パンが出るのは別におかしいことではない。
そして、そのお供としてジャムやピーナッツバターがあるのもやはりおかしいことではない。

「咲夜」
「はい、なんでございましょうか、お嬢様」

顔どころか視線すら咲夜に向けることはなかったのに、私には咲夜の嬉しそうな顔が見えるようだった。

「これ、食パンよね」
「はい、食パンでございます」
「で、食パンの上に乗っているこれはもちろんピーナッツバターよね」
「いいえ、それは納豆をペーストした物ですわ、お嬢様」

私が食パンを咲夜に投げつけ、そのまま紅魔館からの逃避行を謀った事は
決して責められるべき事ではないし、責める者などいるはずもないと確信している。
まあ、とにかく私は一刻も早く紅魔館、いや咲夜から逃げ出したい気分だったのだ。特注の日傘万歳。



「と言うことなのよ、ひどいと思わない霊夢!」

そして私は博麗神社へと身を隠した。
とりあえずの鬱憤を言葉の暴力という形で霊夢に叩きつけ、私は多少ばかりの溜飲を下げた。

「そうは言ってもねえ」
「毎日毎日、私を納豆の培地にしたいのか! それとも何か、臭い息でも覚えさせようっての咲夜は!!?」
「落ち着きなさいよ、咲夜に悪意はないはずよ。ただちょっとやりすぎただけなのよ、きっと」
「そんな甘い言葉信じられない! 納豆にダイエット効果なんて結局捏造だったじゃないの!」
「そんなこと言うんじゃありませんっ!」

パァン、と乾いた音が一瞬にして周りの音を消し去ってしまった。
振り向くと涙を浮かべた霊夢が私を睨んでいた。

「え……、あ……ごめんなさい」

そんな霊夢を見て、つい謝罪の言葉が口をついた。

「さっきからおとなしく聞いていれば不平不満ばかり……、納豆のどこに不満があるってんのよあんたはぁっ!!」

涙を振りまいて叫ぶ霊夢は怒りとも悲しみとも付かない表情を浮かべていた。
何がいけなかったのか、分からない。
何を言ってしまったのか、分からない。

「あんたねえ! 納豆馬鹿にしてんの!? 納豆は美味しいのよ! タンパクなのよ! 特保なのよ!!」
「……え?」
「そんな驚異のバランス栄養食品毎日毎日食べておいて何が不満なの? 言ってみなさいよええ!!?」

鬼気迫る形相の霊夢に思わず私は逃げ出してしまった。
ああ、逃げてばっかりだ私。駄目だなあ。



そんな自分への自己嫌悪からか、私は紅魔館に戻ることも、神社へ戻って謝ることもせず川の畔でしょぼくれていた。
そんなところでもかまわずやってくる者というのはいるものだ。幻想郷で一人佇む事は実は難しいのかも知れない。

「何をしていますか、レミリア・スカーレット」
「……閻魔か」

背後から近寄ってきたのは三途の裁判官だった。

「たかが納豆、されど納豆。否定することが困難ならば、受け入れるより他に道はない。そうは思いませんか」
「こんなところにまで説教か、いい身分だな」
「ええ、いい身分です。でも、聞いてみるのも悪くはありませんよ」

聞くしかなかった。その前に、拒否することを考えなかった。たまにはこんな気分の時もある。



「お帰りなさいませ、お嬢様」
「……ただいま、咲夜」

延々と閻魔の説教を聞き、ある意味満ち足りた感情を持って私は紅魔館へと帰宅した。
別に何かよいことを聞いた覚えはない。
ただ、ありふれた一般論という奴を聞かされただけだ。
でも、今の私にはそれだけで十分だった。

「咲夜、今日のご飯は何かしら」
「ご飯と味噌汁。それと納豆ですわ」

席へ着きながら咲夜へと尋ねる。

「そう、ところで提案なのだけど。今日の納豆はいつもの納豆なのかしら」
「はい、そうですよ」
「ねえ、私今日はオクラ納豆が食べたいわ」

いつも同じ納豆を食べていて飽きが来ているのなら、新たな食べ方を提案すればよい。
言い返せなかった。咲夜だってそうしてくれたんじゃなかったのか、自分に反吐が出そうだった。



その瞬間、叩かれた。
床に無様に転がって、頬を押さえて咲夜を振り返った。
腕を組んで、冷たく私を見下ろす紅い双眸。
ああ、どうしてこうなってしまったのだろう。
何がいけなかったのだろう。

「お嬢様がオクラ納豆信奉者だったとは終ぞ知り得ませんでした。
 どうやら私とお嬢様の縁はここまでのようです、さようなら、レミリア・スカーレット」

言ったきり、振り向いて咲夜はそのまま食堂を出て行ってしまった。
一顧だにせず、である。

「……さく、や……?」

頬から手を離す事も、溢れる涙を抑えることも最早出来なかった。
そのまま力が抜け、私は床へ身を伏せる。
分からなかった。本当に分からなかった。
何がいけなかったのか。オクラ納豆にどんな運命が潜んでいたのか。
私の、私自身に待ち受けるこれからの運命は涙に霞んで見えなかった。
悔しさと後悔と焦燥と、そして二度と取り戻せない運命に、私は泣いた。






昨晩は眠れなかった。
吸血鬼の癖に夜眠ろうとしたからかも知れない。
だが、昨晩はあれ以上起きていられなかった。
布団に潜って眠ることで少しでも痛みを和らげようと、それしか考えられなかった。

「お嬢様、気分転換に天狗の新聞などいかがですか?」
「ええ、ありがとう」

副メイド長、いや新メイド長が気を遣ったのか私のところへ一部の新聞を運んできた。
紅魔館にはこんなにもよい人材がいたのだ。そう気付いただけでも十分に気が紛れた。

『幻想郷で納豆が大ブーム』

天狗の新聞に躍る見出し。
その文字に私はつい目を見開いてしまった。

『昨今幻想郷で納豆が大ブームを引き起こしている。
 原因は不明。だが売れている。
 「いやあ、困っちゃうね、あっはっはっはっはっは」
 そう語るのは納豆と生きて三十五年、権助さん、通称、納豆の権。
 話によれば、彼の作る納豆がここ最近飛ぶように売れているという。
 「うはははは、作っても作っても足りないんだよ、こりゃあライン増設か? 納豆だけに」
 人里のギャグはよく分からない。わかるのは納豆が売れていると言うことだけである。
 では、その一端をご紹介しよう』

一面大見出しでだらだら続く新聞記事。
それによると各地で納豆が悲劇を生んでいるとのこと。
曰く、山の神の注連縄から納豆が生産された。神の奇跡が悲劇を生んだ。
曰く、人形遣いのストロードールから納豆が生産された。放置され続けた人形が悲劇を生んだ。
曰く、魔法使いの箒から納豆が生産された。本来の使用をされない道具が悲劇的な軌跡を引いた。
etc……

まさに悲劇だった。
私は絶句して言葉を発することが出来なかった。
当然、紅魔館で起こった悲劇も例に漏れず記載されていた。
そんな中で、目にとまった一文があった。

『さとり妖怪が間欠泉でメイドを見かけた。途端に彼女は泡を吹いて倒れ地霊殿に搬送された。
 彼女は譫言で「なっとうが、なっとうが、うーんうーん」と言うばかりである。真相は誰も知らない』

このメイドとは咲夜のことではないだろうか。
確証はないが何となくそんな気がした。



思い立ったらすぐに行動する。
それが私、レミリア・スカーレットの特長であるし長所だと思っている。
咲夜を取り戻す。その一念で私は地霊殿にやってきた。

「うーんうーん、なっとう……なっとうはいやぁぁぁぁぁあああああ!!!」

さとり妖怪は布団に寝かしつけられ、暴れようとする体を地獄鴉に必死に押さえ込まれていた。

「なんだいお姉さんは、ちょっと取り込み中なんだ、後にしてくれるかい?」

そしてそれを庇うように私の前に身を挟んでくる火焔猫がいた。

「お燐! 何をしてるの? 早くさとり様を何とかしないと」
「ああ、そうだったよ。 さ、さとり様、納豆ですよ ……きゃんっ!」

暴れるさとり妖怪にあろう事か火焔猫は納豆を食べさせようとした。
当然ながら地獄鴉に制裁を受ける。

「お燐、ふざけてる場合じゃないよ。さとり様はとろろ納豆しか食べない。知ってるんじゃないかい?」
「うう……、とろろ納豆なんて……、納豆はネギで食べるのが一番に決まっているじゃないか……」
「なんでこんな時まで自分の嗜好を布教しようとするのさ、なんだっていいに決まっているじゃない!」
「馬鹿言うな! お前はなんだっていい癖に! そんな信念のない奴に納豆の何がわかるって言うんだ!」
「馬鹿はお燐だよ! 納豆は雰囲気24℃環境下で424回攪拌すれば完全となる。トッピングなど誤差の範囲さ!」
「全裸のさとり様に意味がないのと同じようにトッピングのない納豆にもやはり意味はない!
 とろろだろうがネギだろうがそれは正義だ! お空はただの納豆で偽りの満足を得て一体何がしたいというんにゃ!」
「分からないようねお燐。二つも三つもトッピングを乗せる必要はないの、
 ただ一つを鍛え上げてこそ必殺となるのよ。自分の攪拌した納豆に自信がないって認めちゃえばぁ?」
「そんな……そんな納豆しかない納豆になんの意味があるって言うんだ!
 醤油も、ポン酢も! みんなが共に生きてこそ世界だ! その世界を……、おくうぅぅぅぅぅぅぅっ!!」

突如キャットファイトが始まった。
納豆で世界論が始まるのもあれだが、苦しんでるさとり妖怪がとろろ納豆しか食べないというのも眉唾物である。

「やめてぇぇぇぇぇぇええ! もうなっとうはいや! なっとうはいやなのおぉぉぉぉぉぉおおおお!」

そしてその傍らで絶叫するさとり妖怪。
これ以上ここにいても意味はなさそうだった。
私は、何の手がかりも得られなかったことに落胆の色を隠すことなく帰路についた。



『永江衣玖の簡単クッキング

 1,まず、納豆を用意します。
 2,放電加工を施します。
 3,美味しい!
 4,ね、簡単でしょう』

あれから、新聞は納豆一色になってきたような気がする。
日替わりで連載される納豆特集。そしてそれに寄せられる投書での賛否両論。
私の食事も相変わらず納豆一色だった。新メイド長になってもそれはやっぱり変わらなかったのだ。

『山の巫女の新スペルカード、奇跡「ミラクルビーンズ」! 果たしてその全貌とは!!』

もう、新聞を読むのもやめにしようと思う。
普通の記事があった時代は過去のこと。納豆情報誌を購読しているつもりはない。



「咲夜、一体どこへ行ってしまったのかしら……」

紅魔館から抜け出し、納豆の合間に命を洗濯をしていた。
眼下に広がる湖では妖精が稚拙な弾幕ごっこを繰り広げていた。
以前なら微笑ましい気持ちで眺める心の余裕もあったことだろう。
しかし、飛び交う弾幕の、その金の粒一粒一粒が見えてしまう吸血鬼の視力がある以上、
それはもはや銀のナイフ以上の威力を持った光景でしかなかった。

「あの従者が気になるのかい?」

何度も言うようだが幻想郷で一人佇むことは本当に難しい。
背後に歩み寄るその気配に私は仕方なく振り向いた。

八雲藍。
スキマ妖怪の式。

「あなた、納豆に飽きてきたのでしょう」

どこか虚ろなその瞳に、私はつい頷いてしまった。
ああ、こいつも私と同じなんだ。何となくそう感じた。

「挽き割りだろうが大粒だろうが小粒だろうが何だっていいんだけれど。
 味噌汁に入れたりほうれん草と和えてみたり凍らせてみたりいろいろやってみたんだけど」

眉一つ動かすことなく目の前の九尾の狐はつらつらと納豆への怨嗟を語り始めた。
邪魔をすることなど出来ようはずもなかった。それだけの想いが込められていた。

「……私が悪いんだ……」

一区切り付いた頃だろうか。声の様子が変わった。
恨み辛みから後悔への変遷。本当の懺悔が始まるのだとなぜだか悟った。



あれは、たまたま神社にお茶菓子でも持って行った日のことだった。

「あら、いらっしゃい」
「珍しいわね、こんなところで会うなんて」
「おまえは……、紅魔館の」

どういう経緯だったかなんて知らない。だが、十六夜咲夜がそこにいた。
珍しい人間の友人と会っているからだろうか、霊夢は珍しく上機嫌だった。
そんな霊夢と談笑する彼女もまた楽しそうだった。
だから、私は邪魔をするまいと勝手にお茶を注いでその後継を眺めることにした。

平和だった。天気もよく、涼やかな風が流れるなか女の子らしい楽しげな声が飛び交っていた。
風流とはこういうことを言うのかも知れない。そんなことまで考えた落ち着いた時間だった。

「ところで八雲紫が出てくるあの縦割りのスキマなんだけどね」

でも、そんな時間は永遠ではない。
有限だからこそ美しいものは確かに存在する。

「なんかあれ藁苞みたいよね、納豆入ってても違和感ないと思わない?」

十六夜咲夜が吐いた宣戦布告。
それを合図に先ほどまでの空気が思い出せなくなるほどの妖気が神社を包んだ。

「あら」

どこからともなく聞こえる声。
スイッと音もなく縦に裂かれる空間。

「気付いちゃった?」

いらっしゃいませ我が主、饗宴の席はここにあらんや。

十六夜咲夜は動けなかった。
博麗霊夢も動けなかった。
私は動かなかった。

いつの間に、どうやったのかは誰も知らない。
だが、十六夜咲夜は納豆で簀巻きに拘束されている。
その事実だけが彼女を拘束し、霊夢を拘束し、そして私を拘束していた。

「うふふ、いけない子ね。そんなに褒める事じゃないわよ」

くぱぁ、と大きく口を開けるスキマに十六夜咲夜は引っ張られていく。
スキマから伸びる無数の菌糸に、糸を引く大豆の神秘に、彼女は引っ張られていく。

「い……いや! ……たすけて……、たすけて霊夢! いやあぁぁぁぁぁぁたすけ……たすけてえぇぇぇぇぇ!!」

最期の方は聞き取れなかった。
あらん限りの絶叫だったのだろうが、それはスキマに阻まれて霊夢には届かなかった。

「ふう、美味しいのにね、納豆」
「……ゆ……ゆかり? あなた……一体何を……」

呆然と問いかける霊夢の声に、紫様は「ん?」てな感じで振り返った。

「ああ、霊夢は貧乏だったわね。せっかくだから私がたらふく納豆を奢ってあげるわ」
「え……?」

その後の光景は見ていられなかった。
いや、分かっている。私は見るべきだったのだ。そして、紫様を止めるべきだったのだ。

しかし、後悔先に立たず。
紅魔館で最近毎日納豆が出るという噂を聞いて、
自分の食卓が再び大豆製品に浸食され始める様になって、ようやく私は自分の犯した過ちを自覚したのだ。



泣き崩れていた。
あの誇り高いことで有名な九尾の狐が泣き崩れていた。

「もう駄目なんだ、納豆がすごく美味しい。納豆なしでは生きていけない」

巫女は駄目だ、既にやられた。もう幻想郷はおしまいかも知れない。
涙ながらに訴える彼女を見て私はようやく気付いた。
ああ、私はお願いをされているのだ、頼られているのだ、と。
それでは私は動かなければならない。
だって私は夜の王、誇り高き吸血鬼レミリア・スカーレットなのだから。





幻想郷の幻想的な夜に二人の妖怪が映っていた。
一人は幻想郷の賢者、スキマ妖怪八雲紫。
そしてもう一人はこの私、レミリア・スカーレット。

「そう、あなたが来たのね紅魔館の主」
「そろそろやめてもらおうかしら、迷惑なんだよ、納豆」

あまり雅な響きではないが致し方ない。いつだって原因をたどれば些細なことなのだ。

「あなたは私が犯人だと思っているようですが、残念ながら違いますの」
「なん……だと……!?」

思ってもいない紫の言葉に言葉を失ってしまう。では誰が、誰が犯人だというのか。

「そもそも私は豆腐党。納党ではありません」



ところがある日、閻魔に呼ばれて説教を受ける羽目になりました。
あなたは豆腐に偏りすぎる。しかし、真に至高なのは納豆なのです。
当然、口論になった。
納豆はくどい。いや、豆腐はだめだ。
水掛け論は三日三晩続いて、ついに閻魔はキレた。

「いいでしょう、そこまで言うならはっきりと白黒付けてあげようじゃないですか」

閻魔は幻想郷で納豆と豆腐の決選投票を行うと宣言した。
人妖の意識の奥底に眠る納豆と豆腐への思いを天秤にかけ、勝った方で染め上げる。
もちろん私は受けた。負けるはずがない、そう思っていたから。



「結果は御覧の通りよ」
「な……」

あまりの馬鹿馬鹿しさに本当に口がきけなかった。
納豆大ブームの影に隠れた大物の醜い争いに、そして圧倒的なまでの納豆の圧勝に。

「馬鹿な……、どこに豆腐党がいる。お前の説明の通りならば多少はいるはず、間違いなく!」

お前だってそうだ、お前は豆腐党だと宣言した。何故咲夜を納豆に染める様なことを……!
そんなことは簡単なこと。

紫は、すべてを諦めたように口を開いた。

私はやりすぎたのです。
先の異変にて豆腐をばらまき過ぎた。幻想郷の住人が怒ってアンチ豆腐を唱えるのも仕方がない。
私自身にも愛する式をあそこまで追い込んだ負い目があった。だから内なる納党に心を奪われた。
つまり、私は負けました。大人しく引き下がりましょう。
だが、覚えておきなさい。
この結果は必ずしも納豆が指示を受けたわけではないと言うことを……!

そして紫は闇夜に溶けた。
後に残されたレミリアにはどうしようもない虚無感しか残されてはいなかった。





紅魔館。
悪魔の住まうこの屋敷にはある一つの習慣がある。

「お嬢様、朝食でございます」

メイド長たる妖精が運んできたのは香ばしい香りを湛える焼きたての食パン。
そして、その傍らにはいわゆるパンのお供というものが控えている。

「うえ……、お姉様、今日もそれ塗るの?」
「ええ、美味しいわよ、フランもどう?」
「私はいい。見たくもない」
「フラン、レミィの言うことは本当よ。納豆はとても美味しいわ」
「絶対豆腐の方が美味しいと思うんだけどなあ」

朝からふくれっ面を見せるフランはとても可愛い。だが、それ以上に納豆は美味しい。

「ほらフラン、納豆もちゃんと食べなさい。スカーレット家の者として当然の嗜みでしょ」
「なんでそんなのが嗜みになってんのよぅー。絶対におーかーしーいー!!」

朝からだだをこねるフランはとても可愛い。
だが、それ以上に納豆はとても美味しい。
納豆とフランがいれば私は幸せ。

ああ、納豆美味しいなあ。


  • ケラケラ笑いながら読んでしまったw
    すげーよw -- 名無しさん (2009-09-09 00:08:52)
  • >奇跡「ミラクルビーンズ」
    スイー…あれ、なんか美味しそうに聞こえる… -- 名無しさん (2009-09-09 00:16:51)
  • フランは豆腐党なんだなw -- 名無しさん (2009-09-09 00:29:40)
  • 豆腐異変のことかああああああああああ -- 名無しさん (2009-09-09 00:32:56)
  • 豆腐党のフランちゃんかわいいよフランちゃんうふふ -- 名無しさん (2009-09-09 00:58:57)
  • こいつらそんな大豆好きか -- 名無しさん (2009-09-09 01:56:07)
  • 読んでて気付いたwとうふ異変の続きかwww -- 名無しさん (2009-09-09 02:34:19)
  • バッドエンドww -- 名無しさん (2009-09-09 05:28:34)
  • 閻魔やべぇ・・・ -- 名無しさん (2009-09-09 06:16:57)
  • 豆腐異変に引き続き納豆異変………藍様カワイソス -- 名無しさん (2009-09-09 08:45:47)
  • 豆腐、納豆ときて・・・次はなんだろう?w -- 名無しさん (2009-09-09 12:44:22)
  • 藍様・・・ -- 名無しさん (2009-09-09 20:44:50)
  • >次
    大豆異変とか…… -- 名無しさん (2009-09-10 02:11:31)
  • 豆腐、納豆ときたら醤油だろ -- 名無しさん (2009-09-10 03:24:55)
  • いやいや、味噌かもよ

    ゆゆ様は何党なんだろう…… -- 名無しさん (2009-09-10 05:11:27)
  • 次は小豆になって[こしあん]vs[つぶあん]になるんだろ -- 名無しさん (2009-09-10 10:27:24)
  • ダメだ最初からにやけながら読んでしまった

    納豆食べたくなってきた -- 名無しさん (2009-09-15 00:33:23)
  • ライスバンズに豆腐と納豆を仲良く挟んで食べようぜ!バーガーバーガー的に考えて・・・ -- 名無しさん (2009-09-15 23:48:08)
  • 豆腐異変の人かwwwww豆腐の言葉が出るまでわからんかったwwwwww -- 名無しさん (2009-09-16 00:27:55)
  • こういうどうでもいい異変をzunが本編で大真面目に作ってほしい -- 名無しさん (2009-09-17 19:09:03)
  • イジメなんだよな?イジメ板なのになんで笑いが止まらないんだ!! -- 名無しさん (2009-10-01 23:02:18)
  • ここまで誰も咲夜さんに関して触れていないのに吹いた -- 名無しさん (2009-10-02 08:04:47)
  • フランちゃんかわいいよ。フランちゃん。
    僕はフランちゃんと同じく、納豆だったら豆腐のほうが良いなww -- 名無しさん (2009-10-07 12:44:29)
  • 読んでたら納豆食いたくなってきたwww -- 名無しさん (2009-10-09 06:17:20)
  • 「豆」という漢字を見すぎて違和感すら感じる

    オクラ納豆を馬鹿にするなぁああああ! -- 名無しさん (2009-10-11 08:52:25)
  • 映姫さま黒幕かよ -- 名無しさん (2009-10-11 11:29:03)
  • あの方が黒幕とか・・・誰がこの異変を終わらせるんだよ・・・無理ゲーってレベルじゃないぞ!! -- 名無しさん (2009-10-27 16:12:38)
  • ちょっと納豆食べてくる!! -- J (2010-02-05 12:32:52)
  • じゃ俺は豆腐を -- 名無しさん (2010-03-03 03:08:56)
  • なっとう嫌いには悪夢だなw なっとう最初に考えた奴は死ね そこまで好きじゃねし -- 名無しさん (2010-03-15 08:50:53)
  • 俺は納党だぜw
    しかし霊夢もだめだし誰が解決するんだよw魔理沙か!? -- 名無しさん (2010-04-07 02:24:14)
  • 山田パねぇ -- 名無しさん (2010-05-05 11:14:46)
  • よく冷えた絹豆腐を皿に移す。

    納豆をよくかき混ぜる。(小粒がオヌヌメ

    かき混ぜた納豆を豆腐にのせる。

    醤油、ごま油を少々かける。

    お好みでネギやごま等トッピング(マヨネーズは邪道

    食す。

    (゚д゚)ウマー -- 名無しさん (2010-06-25 00:28:21)
  • ↑やってみるわw -- 名無しさん (2010-06-25 23:17:42)
  • 腹が減っちまったジャマイカ -- 名無しさん (2010-08-10 23:53:33)
  • うまそうだなw
    納豆洗脳鬱話ワロタwww -- 名無しさん (2010-08-12 13:01:16)
  • 納豆食べたくなってきたww納豆の洗脳パネェwwww -- 名無しさん (2010-08-13 18:18:58)
  • お燐とお空のキャットファイト...だと...?
    お.おおぉぉ俺も混ぜてくれぇぇぇぃぃい!!! -- 納豆だけにね (2010-08-18 01:14:09)
  • 納豆に豆腐乗せたら解決・・・しないか -- 名無しさん (2010-08-21 04:50:58)
  • ↑納豆に豆腐乗せるとかありえないだろ…
    「豆腐に納豆乗せる」じゃないと全てが台無しになる -- 名無しさん (2010-08-30 22:35:33)
  • ↑てかどっちでもええやろ? -- 名無しさん (2010-08-30 23:45:20)
  • 俺、豆腐派なんだ…
    一丁100円の豆腐を一度食ってみたらもうね -- 名無しさん (2010-09-04 20:58:12)
  • 一丁ってどのぐらいの量なんだよ -- 名無しさん (2010-09-07 20:56:12)
  • 咲夜うざい -- 名無しさん (2010-12-08 17:52:15)
  • 腋巫女二人組が陥落したからもう誰も閻魔を止められないな
    魔理沙は...ねばねばまみれで泣きながら帰ってくる所しか想像できん -- 名無しさん (2011-09-24 02:40:39)
  • 豆腐を納豆菌で発酵させた「納豆腐」で特許取れねぇかな -- 名無しさん (2012-10-19 23:02:36)
  • 夜中に読むんじゃなかったな。いまからコンビニで納豆買ってくる -- 名無しさん (2012-10-28 02:28:05)
  • レミリアは運命を操ったり(できるかどうか)
    八雲紫の境界でなんとかなるだろ -- マルゲリーターー? (2013-03-29 20:27:08)
  • 咲夜は失踪したままか... -- 名無し (2014-01-03 10:02:52)
  • ここに俺は味噌党の設立を宣言する -- 名無しさん (2014-01-07 16:31:41)
  • シリアスかと思ったらそうでもなかった -- 名無しさん (2014-03-27 23:22:51)
  • 「豆」がゲシュタルト崩壊した。 -- 名無しさん (2014-07-09 14:51:07)

  • 山田てんめぇ……豆腐食べろよ(´・ω・`) -- 名無しさん (2015-08-21 21:33:28)
  • 「納豆なしでは生きていけない」
    納豆漬けの藍様・・・ -- 名無しさん (2015-09-06 12:23:43)
  • ↑↑↑↑↑ちょww味噌党ww


    入る(真顔) -- 名無しさん (2016-01-01 01:51:32)
  • 味噌こそが至高! 納豆とか豆腐とかどうでもいい!味噌食べろよ! -- コハク (2016-06-10 20:15:48)
  • 納豆苦手なんだy((ピチューン -- ロリこん (2018-01-10 22:22:40)
  • 納党はオクラやとろろ以前に醤油を入れるタイミングより先混ぜか後混ぜかで意見割れそうw
    私は醤油入れる前に軽く混ぜてから醤油入れて、しっかりかき混ぜるな(つまり後混ぜ派)
    正直どうでもいいと思うかもしれんけど、結構味違って感じるぞ(真顔) -- 名無しさん (2020-10-25 21:35:24)
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最終更新:2020年10月25日 21:35