関係あるとみられるもの
蓬莱山輝夜(東方永夜抄)
住所
鳴沢氷穴
山梨県南都留郡鳴沢村8533
富岳風穴 山梨県南都留郡富士河口湖町西湖青木ケ原2068−1
コウモリ穴 山梨県南都留郡富士河口湖町西湖2068
青木ヶ原樹海
山梨県富士河口湖町から鳴沢村にかけて広がる原生林。縦6キロ、横5キロ、約3000ヘクタールに及ぶ広大な面積を持つ。
今より遡ること1150年ほど前の西暦864年ごろ、富士山が「貞観の大噴火」を起こすと、甚大な量の溶岩が富士山の北北西麓に流れ出し、それまであった森や集落、巨大な古代湖「剗(せ)の海」などを飲み込み死の世界となった。やがて溶岩が冷えると、その上にわずかに土壌が堆積し、新たな木々が芽吹いた。これが現代の青木ヶ原樹海(以下単に「樹海」という。)のはじまりである。ちなみに富士五湖のうち西湖と精進湖は、溶岩に飲み込まれて埋没してしまった「剗(せ)の海」が、寸断されて部分的に残っているものだと考えられている。
樹海の内部は、常緑針葉樹のヒノキや広葉樹のソヨゴをはじめ多様な植物が発達している。木々の屋根に覆われて全体的にほの暗いが、至る所で木々の間隙から木漏れ日が差し込み、光と陰のコントラストを作っている。林床を覆う苔が日光を照らし返す景観は非常に個性的であり、神秘的でもある。「もののけ姫」に出てくる森を想像すると大体わかりやすいと思う。一方で、わずか数十センチ程度しかない浅薄な土壌の下には、固く冷えた溶岩の岩盤が存在しているため、植物は深く根を張ることができない。そのため、木々はその種類を問わず一定の高さまでしか成長できない。故に樹海を上から見渡すと、同じくらいの高さにそろった緑の木々がまるで波打つ海原のように見える。これが「樹海」と呼ばれる由来となっているとも言われる。「樹海」自体は木々の折り重なる深い森を想起させる一般名詞であるが、現在日本で「樹海」という呼び名が浸透しているのは青木ヶ原樹海だけなので、単に「樹海」と言った場合、青木ヶ原樹海を指すように固有名詞的な取り扱いがされることも少なくない。
後述する幾多の都市伝説の影響によって「迷いの森」や「オカルトスポット」と見なされることも多い樹海だが、実際に樹海で意図せず遭難するようなことはまずあり得ない。樹海の内部には遊歩道が整備されており、案内板の表示もされているからである。勾配もあまりないため、お手頃な森林浴・トレッキングコースとして地元の方々や観光客に親しまれている。もっとも、遭難の恐れがまず無いのは「ルールを守って適切に散策すれば」の話であって、遊歩道をはずれて深部に入り込むなどすれば容易に遭難してしまうこともあり得る。樹海内部では似たような景色が続くことが多いので、一度方向感覚を失ってしまうと今来た道を引き返すことすら非常に困難になる。うっかり遭難して地元の警察・消防・自治体・住人等に多大な迷惑をかけることがないよう、軽率な行動は控えましょう。なお、樹海は富士箱根伊豆国立公園に属し、国の天然記念物並びに特別保護地域および特別地区に指定されている。そのため、林道から外れての入林は自然公園法・文化財保護法違反となり禁止されている。溶岩石を採掘することも禁止。命やゴミのポイ捨てももちろん禁止である。
現代都市伝説としての樹海
樹海は世界的に見ても貴重な自然遺産であり、都心部からのアクセスが容易な観光資源でもある。ところが近年では、そういった樹海本来の価値よりも心霊スポットや自殺の名所といった横顔にスポットライトが当てられることが多くなっている。平成21年度の青木ヶ原樹海での自殺者数は発見ベースで52名と地域単体で見れば確かに飛びぬけて多いものの、それ以上にネット上等では「死の森」としての過大なイメージが独り歩きしているようにも思われる。なぜ樹海が自殺の名所と思い込まれるようになったかについては、1970年代に人気を得た推理小説の舞台となったことが原因ではないかとも言われているが、そもそも樹海の持つ独特の景観が人によっては「神がかり的」「不気味」という印象を抱かせるものであることに端を発しているのではないかと思われる。以下、樹海にまつわりどのような都市伝説が生成されているのかを列記する。
噂① 一度樹海に入ると、二度と生きては戻れない。
んなこたあない。先述のとおり遊歩道が整備されており、普通に散策して迷うようなことは一切あり得ない。
ただし遊歩道をはずれて100mも樹海の中に入ると遭難の可能性がかなり高くなる。それでも「絶対出られない」とまで言い切れるものではない。普通の山と同じ。
噂② 方位磁石がグラグラと動いてしまい、使えない。
んなこたあない。普通に使える。ただし、遭難してしまうと方位が分かった所でわりとどうしようもない。そういう意味では、ある意味使えない。
溶岩が生む電磁波が磁石を挙動不審にすると言う疑似科学的な説明もつくパターンもある。
噂③ GPSが使えない。
んなこたあない。噂②の近代版であると思われるが、完全に事実無根である。
噂④ 携帯電話が使えない。
んなこたあない。遊歩道付近では普通に使うことが出来る。ただし、犬のCMのアレだけは未だにちょっと怪しい。"つながりやすさNO.1"って虚偽表示じゃないの?
噂⑤ 樹海の中心部には、自殺をしそびれてしまった人たちが暮らす自給自足の村がある。
逆に訊きたいが、真実なわけがあるだろうか?精進湖の付近に「精進湖民宿村」があるが、これを航空写真等で見ると隔絶された集落があるように見えるのが原因だとされている。
噂⑥ 夜になると野犬の群れが出て、自殺者の死体を食い荒らす。
野犬がいるのは本当である。不届きな飼い主が捨てていくこともあるという。実際に遭遇したことがある。目があったらしばらくついてきた。樹海から出たらバイバイした。群れで生息しているとまでは考えがたい。もちろん野犬のお腹を満たすほど定期的に自殺者が供給されるわけではない。なお万が一発見しても狂犬病を持っている可能性があるので近づくべきではない。
噂⑦ 謎の怪僧が樹海内部に住み着いている。
本当です。風穴から精進湖登山道に至る道を少し山林に入った所に乾徳道場という建物があり、老夫妻が住み着いている(現在もお元気かは不明)。国定公園の中に住み着くのはもちろん違法で、建物は夫妻が勝手に建築したものである。40年以上前からこの地に棲んでいるため既得権を獲得しているんだとか。樹海において人に見つからずに死ぬ方法を解説する極めて迷惑な名著『完全自殺マニュアル』においても「謎の坊主をあなどるな!」と一目置かれている。
溶岩洞穴
火山によって噴出した溶岩が元となって形成される洞窟の事をいう。その生成にあっては、流れ出る溶岩の表層部だけが先に冷えて固まり、冷え切らない内部の溶岩が再移動して空洞を生むパターンと、溶岩流の内部に高圧力の火山ガスが閉じ込められ、溶岩表層部がガスに押し上げながら凝固、その後ガスが地上へと抜けて空洞を生むパターンとがある。青木ヶ原樹海の生成は火山の噴火と大いに関係しているため、樹海内部には数多くの溶岩洞穴が存在している。以下、その中の代表的なものをいくつか列記する。
鳴沢氷穴
青木ヶ原樹海の東の入口に位置しする溶岩洞穴。総延長は153m程度。樹海の洞穴の中でも最も気温が低く氷点下を下回る。真夏に訪れると、日常生活では暑さのあまり冷凍庫に顔を突っ込んでお母さんに怒られる時意外にほぼありえない気温変化=不自然な冷気を全身で体感する。きっとチルノに遭遇した時に感じる冷気も、こんな感じだと思う。
水脈の近くにある鳴沢氷穴では、そこら中から地下水がこんこんとわき出してはそのそばから凍っていく。そのため洞穴内は年間を通して氷におおわれており、古来より天然の氷室として利用されてきた。洞穴の天井から染み出す地下水が巨大な氷柱(つらら)を形成し、一冬を越えた4月ごろには高さ3mに達するまでに成長することもあるという。最深部には地獄穴と呼ばれる竪穴があり、その深度は計り知れないと言う。一説では地獄までつながっていると言われたり、江の島まで続いていると言われたりしている。これらの仮説を統合すると、江の島=地獄ということになる。(冗談ですよ?)
なお、洞穴内部の深い竪穴が地獄に通じているという逸話は「東方地霊殿」において主人公らが1stage「幻想風穴」を経て地獄へと至ったプロセスと重なりあうことから、鳴沢氷穴がモチーフとなっている可能性がある。
富岳風穴
鳴沢氷穴から少し離れた場所にある溶岩洞穴。総延長は201m程度。平均気温は3度と冷蔵庫なみの涼しさのため、昭和初期まで蚕の卵の貯蔵などに利用されてきた。壁が玄武岩質のため、音を反響せず吸収するという。最深部にはヒカリゴケが生息している。ヒカリゴケは、「東方三月精 Strange and Bright Nature Deity」第2巻第11話及び第12話『玄武の沢』前編・後編に登場し、玄武の沢に自生し光を放つ不思議な苔として題材にされている。
コウモリ穴
西湖近くにある溶岩洞穴。他の洞穴同様、年間を通じて低気温が保たれるため今でもコウモリの冬眠場所となっている。生息しているコウモリはウサギコウモリやキクガシラコウモリなど。よく訓練された東方ファンであれば、ときめかざるを得ないチスイコウモリはいない。そもそも日本にいない。一時期は地質の変化や来客の増加により洞穴内のコウモリは全滅近くまで追い込まれたが、現在では一般公開されるまでに回復している。洞穴に付属する施設ではコウモリについての説明展示等を行っているほか、販売棟ではコウモリグッズなども手軽に購入できる。また、青木ヶ原樹海を自然を満喫できる「富士河口湖町公認ネイチャーガイドツアー」の拠点でもある。
東方projectにおける富士の樹海
「あ、今……」
「どうしたの?メリー、急に怖い顔をして……」
「急に頭が重くなった気がしたの。蓮子は感じない?ここら辺の空間は少し他と感じがちがうわよ。
それに結界の裂け目も見える……スクリーン制御プログラムのバグかしら」
「ああ、それはきっとここが霊峰の下だからよ。
少しは空気も違う、いや時空すらも異なるかもしれないわね。
過敏なメリーにはちょっと緊張が走るかもしれないわ」
「なるほど、富士山の血かね。
なら判らないでもないわ。昔から富士の地下には冥界の入り口があるっていうもんね。
でも、富士山って火山でしょう?そんな地下にトンネルなんて掘って大丈夫なのかなぁ」
(中略)
とにかく東京と京都を結ぶ事だけを考えて設計した卯酉東海道だったが、政府は霊峰富士
の真下に穴を開けるという、畏れ多き事態だけは避けた。
卯酉東海道は、富士を避け、樹海の地下を走っている。
ただ、樹海には古くから良くない言い伝えが多く、樹海の真下を走るというだけで新幹線
の運行や乗客数に影響が出てしまうかも知れない。
そう考え、樹海の真下を走っているという事は一般に明かされなかった。
東方project
秘封倶楽部
「卯酉東海道Retrospective53 minutes 5.青木ヶ原の伝説ForbiddenForest」よりばっすい
東方projectにおいては現代都市伝説としての樹海のイメージが公式設定として引用されている可能性が非常に高い。余談ではあるが、2006年に発表された卯酉東海道の「ほぼ地下を通る列車」という発想は、現在「リニア中央新幹線」という形で現実化されようとしている。2006年現在のリニアはまだ試験走行段階だったので、ZUNの着想には非常に先見の明があったと言える。富士山の世界遺産登録も実現したし。
もっとも、現実のリニアは京都と東京を中間駅なしで結ぶものではなく、甲府付近から長野飯田、岐阜中津川らを経由していったん名古屋に南下するため若干ルートは異なり、樹海にはかすらない。また作中に「卯酉新幹線は富士山の直下を避けた」とあるが、東京と京都を最短で結ぶ場合でも、富士山の直下は通らずに最初から樹海かもしくは樹海のやや北を通るような気がする。そしてルートは東海道と言うより中山道とかぶる部分の方が多いように思えてならない。「卯酉中山道」じゃダメだったんでしょうか、と諏訪方面から誰かのツイートが聴こえて来る気がした。
方位磁石が狂うのは、実は回転罠の所為だったと専らの評判の樹海。
このゲームを終えたら樹海に行こうと考えていたら、是非思い直しなさい。
東方永夜抄
蓬莱山輝夜のラストワード「蓬莱の樹海」に関するZUNのコメントより
2004年に発表された「東方永夜抄」にも樹海は都市伝説を帯びたイメージで引用される。スペルカードの使い手である蓬莱山輝夜は、永夜異変が発生するまで1000年近くにわたり(すなわち樹海が生成されるかされないかの頃から)、月の使者から身を隠すために住居自体に永遠の魔法をかけて潜伏していたはずである。他方で、外界において「樹海」という通名の元に富士山北部の原生林に特異性が発見されたのはごく最近のことであり、自然科学ないしオカルトの世界から注目を集めるようになった歴史は極めて新しい。蓬莱山輝夜が「樹海」に特別な意味を付与してスペルカード化しているとするならば、いつ、どこで、どのようにその基礎となりうる情報を手に入れたか推察することは、永夜異変前夜の永遠亭の生活について空想を広げる一端となりそうである。
最終更新:2015年03月18日 04:07