水の妖怪! 水虎!その2

水の妖怪! 水虎その2


 みんなが居間に集まったところで会議が開いた。ねずみ男は先ほど、鬼太郎が水虎と決闘すると聞いて、鬼太郎に話しかける。
ねずみ男「お、おい鬼太郎、大丈夫かよ?。なんかあの妖怪すっげぇ強そうだったぜ!」
金糸雀「ねずちゃんの言うとおりかしら。妙に嘘つきっぽかったかしら」
鬼太郎「分かっているさ、奴が約束を守るとは限らない…。それに、以前あいつと戦った時には壺に封印するだけで精一杯だった…」
 鬼太郎は顔を歪め、腕を組みながらう~んと頷き、悩んだ。
 他の人数も、どう倒すかが問題である、もし炎妖怪たちで蒸発させても、水蒸気としてまた復活してしまう恐れもあるからだ。
 しかしその一方でねこ娘に抱かれていた雛苺は、自分のせいだと自分を責め込んでいた。
雛苺「…きたろー」
鬼太郎「ん?、何だい?」
雛苺「…ごめんなさいなの」
 雛苺は鬼太郎に謝り、申し訳なさそうな表情で鬼太郎に頭を下げた。
 その表情はあまりにも悲しそうに、今にも泣きだしそうだった。
 鬼太郎はにこっと微笑み、雛苺の頭をなでて、優しく声をかけた。
鬼太郎「雛苺、君の責任じゃないよ、水虎のことをあまり知らなかったんだから…そんなに落ち込まないで」
雛苺「だって…ヒナのせいで…すいこが…グスッ」
 彼女は、まだ責任があると思って泣きだしてしまった。
 そこへ、雛苺を抱いているねこ娘が慰めた。
ねこ娘「大丈夫よ、誰も雛苺のことを責めていないわ、みんな貴女のことを大切に思っているの。だから泣かないで、ねっ」
 ねこ娘がそう言うと、雛苺は辺りを見回すと、責めているどころか、みんなは彼女に優しく微笑んでいた………が、翠星石だけはぷいっとそっぽを向いていた。
 ねこ娘も雛苺に優しく微笑んで、彼女の頬にキスをした。
 でも、そこは泣き虫の雛苺はねこ娘の胸の中で泣きじゃくった。まるでねこ娘が彼女の姉に見えていた。
 そして、その一方では……
金糸雀「(ねずちゃん、みんなにカナたちが水虎の入っていた壺を掘ったって言っていいのかしら?)」
ねずみ男「(やめとけ、言ったら言ったで半殺しにされちまうよ…)」

 ……と、本来の原因でもあり、思いっきりの責任であるねずみ男と金糸雀はヒソヒソと話していた。
 確かに間違いなくねこ娘か薔薇乙女たちに半殺しにされてしまうのだ。


 やがて、雪が降りしきるその日がやってきた。
 鬼太郎たちは、水虎が来るのを待っていた。
 真紅と鬼太郎が窓の外を眺め居ていた。その時に、雪に混じって霧のようなものがゲゲゲハウスにやってきた、どうやら水虎が来たようだ。
鬼太郎「(…来たようだ)」
ねこ娘「鬼太郎、大丈夫?」
鬼太郎「心配ないよ、君は父さんたちとここに居て」
 水虎が来たのを確認して鬼太郎は入口から地面に飛び降りた。
 それに続いて真紅も入口から飛び降り、ふわっと地面に着地する。
鬼太郎「やっと来たようだな、水虎」
水虎『ワシが来ないのだと思っておったのか?。甘いな鬼太郎…ワシは決闘するときは、約束を守るのでな』
 自分を睨む鬼太郎に対して、水虎は霧から人型に変わる。しかし、油断を見せてはいけなかった。
真紅「それにしても、ずいぶん来るのが遅かったわね、こちこちに凍ってたのかしら?」
水虎『ククク……そう皮肉を言うのも今のうちだぞ小娘』
 真紅は水虎をジロジロと睨み、皮肉を言った。しかし、負けじと水虎も皮肉を言い返す。
水虎『茶番はこれまでだ、やい鬼太郎…決闘場所はどこがいい?』
鬼太郎「地蔵ヶ原でいいよ、あそこなら僕もお前も戦いやすい」
水虎『フフフフフ……分かった、だが来なかった場合はあの小娘が死ぬのを望むんだな。ハハハハハハハハッ…………』
 そう言い放ち、水虎はまた霧へと変化し、先に地蔵ヶ原に向かっていった。
 その後に続いて、鬼太郎と真紅、水虎を封印するための壺を手に持つ蒼坊主も地蔵ヶ原へと向かう。蒼坊主が、真紅が付いてくることについて鬼太郎に問いかけた。
蒼坊主「よぉ鬼太郎、真紅ちゃんも連れてきて大丈夫か?」
鬼太郎「うぅん…僕は彼女に父さんたちと一緒に居ろって言ったんだけど……真紅が………
    真紅『まだ自分の立場が分からないのかしら?、あなたはこの私の家来だから…私が付いて行くのは当然なのだわ!』
    って、言ってて仕方なく…;」
蒼坊主「ははっ、そりゃあ災難だな」
真紅「あなたたち、聞こえているわよ?」
 後ろから真紅の声が聞こえて、鬼太郎と蒼坊主はすぐさま話を止めて、地蔵ヶ原へと歩いて行った。
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ねこ娘「……鬼太郎」
 鬼太郎たちが地蔵ヶ原に行ったのを見送った、ねこ娘が心配そうに窓を見つめていた。
 彼女は、雛苺のことで心配でもあるが…何より一番心配なのは鬼太郎である。
 ……ギュッ
 鬼太郎にもしものことがあったら……私……私……。
目玉おやじ「大丈夫じゃよ、ねこ娘」
 ねこ娘が不安な顔をしているところに、おやじが声をかけた。
ねこ娘「…お父義さん」
目玉おやじ「鬼太郎はあの程度じゃ死なん、真紅や蒼坊主も居るんじゃ。安心せい」
 おやじはそう言うと、湯でぬれたタオルで顔(?)を拭く。確かにおやじの言うことは正しいとねこ娘はそう悟った。
 全国を周って悪妖怪を封印している蒼坊主と、鬼太郎と契約した真紅がついているから安心するも…やはり不安であった。
ねこ娘「………(負けないで……鬼太郎……!!)」
 ねこ娘は、鬼太郎が無事に戻ってくることを祈った。そしてちゃぶ台でも、蒼星石も鬼太郎が無事であることを祈っていた。
蒼星石「………(鬼太郎さん……無事で戻ってきて…!!)」
 ねこ娘と蒼星石は、涙を一粒流して、ずっと祈りづづける。しかしこれが、彼女たちの祈りが鬼太郎が勝つ勝利の奇跡だと思うのは知らなかった。
目玉おやじ「(くぅぅ……鬼太郎…蒼、真紅よ…無事でいとくれ)」
 そして、茶碗風呂に入っているおやじも、あんなことを言ったものの…息子のことが心配である、それに蒼坊主や、今や自分の娘のように一緒に居る真紅のことを心配するのであった。
 が、ここでは父親として…彼らの無事を考えるしかなかった。
翠星石「あれ?、そういえばチビ苺の姿が見えねぇですが…」
ねこ娘「え?!」
目玉おやじ「な、何?!」
 翠星石の言葉に気づき、三人は家の中を見回す。そこには、いつも一緒に居るはずの雛苺の姿が無い!。一体、どこへ行ったのかと四人は雛苺を探す。
ねこ娘「雛苺ー!!、どこなの!?」
目玉おやじ「翠星石!雛苺はちゃんとここにおったか!?」
翠星石「ちゃんとここに居たですぅ!、ねこ妖怪とチビ目玉を見つめていて、またチビ苺を見ようとしたらどこかに消えちまったですぅ!」
蒼星石「!……まさか、雛苺…鬼太郎さんたちの後をついて行って地蔵ヶ原に行ったのかもしれない…」
ねこ娘・目玉おやじ・翠星石『!!』
 三人は蒼星石の言ったことに耳を傾け、ハッとした。あの時の雛苺は、申し訳ない顔で、自分のせいだと重く責任を感じていたのだ。

 そして、雪の降る道に、小柄でピンクのリボンを頭に付けた少女……雛苺が地蔵ヶ原へ走っていく。
雛苺「ヒナ、これ以上きたろーたちに迷惑かけるの嫌なの。ヒナがあのすいこを退治するの!、もうヒナは子供じゃないもん!」
 自分の責任を感じて、雛苺はこの寒い雪の日の中、地蔵ヶ原に向かっていく、鬼太郎たちのことで頭の中はいっぱいだった。
 彼女は走って…走って…そこで転ぶも、また立ちあがり走っていく、小さな靴と足跡を残して………。
 しかし、雪は物凄く冷たくて、寒かった…まだまだ幼い雛苺には厳しかった、あまりの寒さに身体がぶるっと震えていた。
雛苺「がんばるの……みんなのためにがんばるの…」
 少々ガクッと来るも、彼女はまだ走り続けた……ふらふらになっても、まだまだ走り続ける。

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地蔵ヶ原

 そして、地蔵がたくさん並ぶ地蔵ヶ原では……鬼太郎たちが水虎が来るのを待っていた。

蒼坊主「さみぃな…あんにゃろ本当に来るんだろうか…?」
真紅「!、お出ましみたいよ」

 真紅が支線の先で水虎を確認した。
 林の奥から水虎が猛スピードで鬼太郎たちに襲いかかる、だが間一髪で三人はちらばって避ける。
 ところが、水虎はUターンし…大笑いしながら、また襲いかかってきた。

 ブオオオォォォォォオオオ!!

水虎『フハハハハハハハ!!!』
鬼太郎「戦いのゴングは無しということか!」
蒼坊主「どうやらそのようだぜ!、かかってきな!水虎!!」
水虎『バカめ!、このワシに勝てると思っておるのか!』

 ブオオオン!!

鬼太郎「くっ…!、すばしっこい奴だ!」
水虎『フフフフフ…さぁ、誰から始末してやろうか?』
真紅「それなら、まずは私がお相手願いするわ」

 ブワァァッ

水虎『何っ!?、ぐわっ!!』

 上品な少女の声と共に、水虎の周りから花弁が舞う、水虎はその花弁を自分に攻撃した人物───真紅を睨む。
 彼女は得意な顔で手のひらから花弁が舞っていた、それを確信したか水虎は真紅に突進をする。

 ゴオオオォォッ!!

水虎『小娘無勢めがぁ!!』

 フワッ

真紅「あら?、あなたの攻撃はその程度かしら?。クスクス…液体妖怪にしては弱すぎなのだわ」
水虎『!………では先に貴様を殺してくれる!!』

 真紅はクスクス笑うと、ずっと昔…蒼星石に放った皮肉と同じように水虎を挑発する。
 そう、真紅は水虎を挑発して自分がおとりになり、後ろから鬼太郎たちに攻撃させる作戦だ。
 意図も簡単に水虎は彼女の皮肉に挑発され、顔を真っ赤にして真紅を襲うも……またも真紅の花弁攻撃で目潰しになり動きが不自由になるも、真紅を追いかける。

真紅「ほら、私はこっちよ?。ついてこれるかしら?」バッ
 フワッと真紅は飛んで、鬼太郎たちから離れる、それにつられて水虎は彼女のあとを置いてかけいった。
蒼坊主「どうやら真紅の作戦にひっかかってくれたぜ!、俺たちも行こうぜ!」
鬼太郎「うん!」
 真紅が自分たちの視線から見えなくなるのを確認し、鬼太郎は「一反木綿!」と大声で呼んだ。
 その時、彼らのすぐ後ろでズボッと音がするとそこに現れたのは・・・
一反木綿「あーも~!寒か~、雪の中で待ってるのはこりごりたい」
 雪の中から一反木綿が、いつから居たのかガバッと出てくる、木綿であるの彼は白いので雪に混ざりこんでてはどこに居るのか分からないので
 鬼太郎たちとずっと待機していたのだ。ブルブルと一反木綿は震えている、何時間も雪に埋まってたらそうなる。

鬼太郎「よし!、真紅の後を追ってくれ」
一反木綿「わし雪ん中は苦手たい!、それにすぐ飛ぶのも無理じゃけん」
蒼坊主「ゴチャゴチャ言うなよ、行けるとこまで行くんだ」
一反木綿「もぅ2人して人使い荒いんよ、ほな乗りんしゃい!」
 ブツブツ言いながら一反木綿は、シュルルルと鬼太郎たちの足元に滑り込む。
 そして鬼太郎と蒼坊主は一反木綿の背中に乗ると一反木綿は急いで真紅の後を追った。
 その頃、真紅は水虎のおとりになりながら、水虎の目をめがけて花弁攻撃で目潰しを何回も繰り返していた。しかし……
 スタッといきなり彼女は池の目の前で飛ぶのをやめて地上に着地した。水虎はそれを確認したか、追いつめたと思い、水蒸気状態から人型に代わり、あざ笑った。
水虎「ふははは、ついに諦めたか?小娘。観念するがいい」
真紅「観念しろですって?、無駄よ、私を池に引きずりこんで私にとりつこうとする考えは甘いわ。池はとっくに凍ってるのよ?」
水虎「ククク……中々考えるのぅ、だが後がないであろう?」
真紅「………ッ」
 その台詞に真紅はハッとし、手持ちのステッキを構え・・・そして水虎に襲いかかるも、水と似る水虎は自分に襲ってくるステッキをうまく避けきり・・・・
 そして再び水蒸気となり、真紅の目線からごまかした。
 真紅は消えた水虎に一瞬戸惑ってしまい、キョロキョロとあたりを見回した、だが、水虎はどこにも居ないのだ。するとその時、彼女の後ろから・・・・
真紅「ーッ!……キャッ!?」
水虎「ククククク……身体を縛られてはもうあの変な術を使えまい」
真紅「は、放しな…さ…くっ…!」
 どこからか現れたかのように人型に変わった水虎が今度は蛇のように変わり、真紅の身体をぐるぐる巻き付け縛り上げた。
 これでは真紅は花弁は出せない、ステッキも使えない、そして彼女の人口精霊でもあるホーリエも呼び出せず・・・身動きができない状態だった。
 下手に動いてしまえばあっと言う間に絞め殺されてしまう、その時だ、後ろから猛スピードで一反木綿が水虎めがけて突っ込んできた。
一反木綿「女子をいじめる奴はわしが許さんばってん!!」
 一反木綿は怒りながら真紅を助けようとしたが、素早く水虎は水蒸気になり、真紅から離れた。そして・・・
 ドガァッ!!とものすごい音と共に思いっきり真紅に体当たりをしてしまった。
真紅「ぶっ!!」
一反木綿「あ、あら~……真紅ちゃん、ごめんね」
真紅「…………。」
一反木綿「いやワシ、わざと体当たりしたわけじゃないんよ?・・・あの、水虎から助け出さんとしたまでたい」
 誤って真紅に思いっきり体当たりしてしまった一反木綿は真紅に謝るものの、身体はビクビク震えていた。ずっと前真紅にひどい目に遭わされたのがトラウマなのだ。
 その真紅はと言うと・・・レディとあろう者が情けなく大の字倒れしていた。こんな姿をあの水銀燈が見ていたら大爆笑ものだった。
 真紅はむくっと起き上がって、何も言わず服についた雪を払う仕草をする、そしてフハッ!と鼻息を出し、ギロッと一反木綿を睨み、彼に聞こえるように「……後で覚えておきなさい」と小声で言う。
 一反木綿は涙目だったがそんなのは無視して、先ほど一反木綿から飛び降りた蒼坊主と鬼太郎が空の上から地上へ着地した。

鬼太郎「大丈夫かい?」
真紅「えぇ。いきなり身体に巻きつくなんて…あの妖怪は卑劣なのだわ!」
蒼坊主「卑劣はともかく、奴さんがまた来たぞ!」
真紅「本当にいやらしい妖怪ね…!」
 蒼坊主の言うとおり、水虎はまたやってきたのだ。
 そして水蒸気となっていた身体が段々と人型に変えていく。
 真紅と蒼坊主は二手に分かれ・・・鬼太郎は水虎から離れるようにジャンプをすると、両足のリモコン下駄を水虎めがけて蹴り出す。
 ところが、二つのリモコン下駄は水虎をスーッと透き通ってしまった、リモコン下駄はUターンをし、鬼太郎の両足へと戻る。
真紅「(鬼太郎の下駄が通じない…!?)」
鬼太郎「…だめか」
水虎「…言ったはずだ…俺様の身体は水のようなもの、殴られても斬られても痒くもないわ!」
鬼太郎「そんなことは分かっているさ……だったら」
 そう言うと鬼太郎は勝ち誇ったような笑みを水虎に見せた。
 彼が一体何をしようというのか?と水虎はちょっとだけ隙を見せてしまった。
鬼太郎「これでもくらえ!!」
 そうすると鬼太郎は地面に落ちる前に素早くちゃんちゃんこを脱ぎ、そして水虎へ向かって投げつけた!
 水虎はしまった!と絶句してしまい、逃げようとしたがもう遅かった、ちゃんちゃんこは水虎を一気に包み込み始めた。

水虎「ふがーっ!!」
鬼太郎「よし!、真紅!花弁を!」
真紅「分かったわ、ホーリエ!」
 鬼太郎の合図で、真紅は懐からホーリエを呼びかけた、ホーリエは手のひらの上をくるくる舞う。
 そして真紅はちゃんちゃんこに包まれている水虎めがけて、花弁で包み込むようにする。
 ブワァッと花弁はちゃんちゃんこと共に水虎を丸く包む、水虎は苦しそうに「むが~~~!!」と呻き、とうとう花弁とちゃんちゃんこの力に負けてしまい、桜餅状態と化していた。
 水虎を完全に動けなくした鬼太郎と真紅は、互いに顔を合わせて微笑んだ。
鬼太郎「これで身動きができないようだ」
一反木綿「いやぁ、やっとまた封印できるたい」
蒼坊主「それにしても、今回はやけに捕まったな…」
真紅「ぶつぶつ言っている暇があるなら、早く札を貼って頂戴」
蒼坊主「へいへい…(なんかなぁ、本当にあっさりしすぎだぜ)」
 真紅に厳しい言葉を言われるも、そういうことは気にせずココンの札を取りだす蒼坊主。
 だが、蒼坊主はある違和感を感じていた。あの厄介者である水虎がこうもあっさり倒されたのだ。
蒼坊主「(どうにも嫌な予感がするぜ…)」
 何か裏があると思い、蒼坊主はそう疑問に重いながら水虎のところに向かう。その時、鬼太郎の後ろからポフッと背中に何か倒れてきたのに気づいた。
 鬼太郎は「えっ?」と驚き、後ろを振り向いた途端…背中にもたれかかったその正体に全員はさらに驚き、真紅が声を出した。
真紅「雛苺!?。」
 そう、先ほど鬼太郎にもたれかかったのは雛苺だった。彼女は方っぽの靴をどこかに無くしたままこちらに駆け寄ってきたのだ。
 何故雛苺が?、と疑問に思うばかり、雛苺を抱き上げながら鬼太郎はねこ娘たちが居るか確認するも、雛苺が1人だけ。
蒼坊主「おいおい、まさかと思うが1人で来ちまったんじゃ?」
鬼太郎「そのまさかですよ、蒼兄さん。でも、なんだか雛苺が全然動かないんだ…どうしたんだろ?」
真紅「おそらく、ここに来た時にネジが切れたのよ。まったく…いつもこの子には世話が焼けるわね」
 そういつもの口調でしゃべっているも、ちょっとだけホッとした表情を見せる真紅。
 蒼坊主は「やれやれ」と言った表情で苦笑いをしていた。
 しかし、彼らは肝心なことを忘れていたのだった。
 ちゃんちゃんこと花弁で固められていた水虎が霧となり、ちゃんちゃんこから抜け出していた。
 その途端、最初に気が付いた真紅はすぐに水虎の方を向く。時すでに遅く、水虎は抜けだした瞬間に鬼太郎を背後から襲いかかろうとしていた。
真紅「鬼太郎!逃げなさい!」
 水虎が狙っているのはもちろん、今鬼太郎が抱きかかえてる雛苺だ。真紅は今度は鬼太郎も狙っているのだと勘づき、大声で鬼太郎呼ぶも、もう遅かったのだ。
鬼太郎「しまった…!」
 水虎は巨大な竜巻となり、鬼太郎に襲いかかった。
 鬼太郎は竜巻から出ようともがくも、雛苺と強風でうまくいかなかった、そのままグルグルと回され始めた。
真紅「鬼太郎!」
蒼坊主「だめだ!行くんじゃねぇ!」
 真紅は声を荒げて、鬼太郎と雛苺に駆け寄ろうとしたが、蒼坊主が真紅を止める。だが、真紅は落ち着かなかった、いつもより荒げてる様子だ。
真紅「鬼太郎と雛苺を見捨てるつもりなの!?」

蒼坊主「そんなつもりは無いが、もしお前さんが奴さんに攻撃したら鬼太郎たちまでやられちまう!」
 その言葉を聞くと、真紅は奥歯を噛みしめた、確かに今、水虎を攻撃したら中の2人に食らってしまうのだ。
 真紅は、鬼太郎と雛苺を救えない自分を恨んだ。そして、竜巻の中から鬼太郎と雛苺が出てきた、鬼太郎はあまりの回転に目を回していて、雛苺を放してしまった。
 ついに鬼太郎は倒れてしまった。そのすきに、水虎は鬼太郎の口が開いているのに気づいた。
水虎『ククク…バカな奴め、口を開けたまま気絶しておる。ちょうど良い、あの小娘はやめてこいつの身体の中に入ってやるか』
 雛苺のことは諦めたか、今度は鬼太郎にとりつこうという魂胆だ。水虎は鬼太郎の口めがけて身体の中に入って行った。
 蒼坊主と真紅は竜巻が止んだところで、急いで駆け寄る。蒼坊主は雛苺を抱き上げて、鬼太郎の所に向かった。
 そして、真紅は鬼太郎のちゃんちゃんこを取りに行き、そして鬼太郎に近づこうとしたその途端、ムクッと鬼太郎はいきなり起き上ったのだ、これには真紅は驚き尻もちをついてしまった。
真紅「きゃっ!!鬼太郎?」
蒼坊主「おーい!鬼太郎、無事だったか?」
鬼太郎「…………。」
 しかし、鬼太郎は何も返事はせず、いきなり雪の山へ駆けだした。一体どうしたのだろうか?。
 すると、何をしようとしたのか鬼太郎は雪の山に飛び込み、そのまま雪の中に居座った。
 この不自然な光景を真紅は唖然として、蒼坊主に問いかけた。
真紅「ね、ねぇ…鬼太郎はどうしてしまったの?、まさか水虎にとりつかれておかしく…」
蒼坊主「いや、そうだったら俺たちも襲うはずだ。違うとしたら鬼太郎の奴…ハハーン、あいつのやりそうなことだ」
真紅「え?」
蒼坊主「まぁ見てれば分かるさ」
真紅「えっ…あっ、えぇ」
 蒼坊主は鬼太郎の不自然な行動を見てやはりと思ったが、真紅の場合は頭にはてなをいっぱい出していた。
 やがて、数時間が立ち・・・やっと鬼太郎が雪の中から出てきた。何故か、勝ち誇った笑みを浮かべていた。
 その途端、鬼太郎は手を口の中に突っ込ませ、そして口の中から大きな氷の物体を取り出した。それは先ほど、鬼太郎にとりついた水虎の凍った姿なのだ。
鬼太郎「どうだ水虎?、俺の体は雪より冷たかっただろ?」
蒼坊主「ぷっははははは!お前のやりそうなことだ!。まさか水虎を凍らせちまうたぁ!」
鬼太郎「ハハハッ!、水虎の奴はコチコチに凍ってて物も言わなくなりましたよ」
真紅「…………」
 蒼坊主と鬼太郎は水虎が凍ったのを見て笑っていたが、真紅の場合は顔を引きつらせながらこう思った。
真紅「(私ったら…本当にとんでもないのと契約してしまったのかしら…;)」

 でも、そう考えるも後に真紅もクスッと笑い、次第には鬼太郎たちと共に爆笑してしまった。
 その後、真紅は鬼太郎にちゃんちゃんこを渡した、ちゃんちゃんこを着終わった鬼太郎は雛苺のねじを回し、起きた彼女に「あまり僕やねこ娘たちに心配かけさせないでよ、めっ!」と叱った。
 そうして、彼らは一反木綿に乗って横町まで帰っていく。
 横町に戻り、子泣き爺と蒼星石が凍った水虎を粉々にして壺に入れ、蒼坊主が札を貼り、そしてねずみ男が水虎の入った壺を埋めた。
 何故かねずみ男だけは傷だらけだ、鬼太郎は理由を聞くと、金糸雀が正直に謝り、逃げ出そうとしていたねずみ男をねこ娘・翠星石・蒼星石が成敗をしたらしい。
 そして翠星石も、責任を感じて雛苺に先ほどのケーキの件について正直に謝るが、雛苺はもう気にしないと言い、仲直りをした。

そして、その数日・・・・

─ゲゲゲハウス─

雛苺「びえええええ!!きたろー!翠星石がまたヒナのうにゅー盗ったのー!」
鬼太郎「もう、またかい?。翠星石」
翠星石「ちーがーうーですぅ!、チビ苺が翠星石のレースを変な風に結んだです。ほら、ほーら」
雛苺「自分でやったの!翠星石のスカポンタン!!」
翠星石「翠星石がスカポンタンならお前はカスですぅ!」
雛苺「やーー!!」
 いつものように、2人は鬼太郎の周りで大ゲンカをし始める。
 せっかく茶碗風呂を楽しんでいた目玉おやじもとうとう怒った。
目玉おやじ「こらー!2人とも少しはいい加減にせんかーっ!!」
鬼太郎「まぁまぁ、父さん」
 鬼太郎は怒る目玉おやじを嗜めた後に、窓辺から真紅が声をかけた。
真紅「フィナンシェにはアッサムティーを合わせなさいと言ったはずよ、淹れなおしなさい!」
 相変わらずの命令に鬼太郎は「ハイハイ」と答え、そして今度はあの蒼星石も・・・。
蒼星石「それに、お茶の温度は適温にですよ?」

 と、厳しい目で鬼太郎にそう伝えた。鬼太郎はハァとまたため息をしながらちょっと笑っていた。
 家の中からは翠星石と雛苺の騒ぐ声に混ざり、コオロギや鈴虫らがゲゲゲの歌を合唱していた。
 ・・・今日のゲゲゲの歌は大げんかのゲゲゲの歌だった。

ゲッゲッゲッ ギャーギャー ゲッゲッゲッ ギャーギャー ゲッゲッゲッ……

    おわり

ゲゲゲのローゼン

鬼太郎「はい、アッサムティーだよ」
真紅「紅茶がぬるいわよ!」
蒼星石「ダメです、淹れなおしてください!」
鬼太郎「あははっ…ダメか」
真紅「いいこと?鬼太郎、温度は95度以上…あなたはまずそこから学びなさいとあれほど・・・(くどくど)」
鬼太郎「(やれやれ、君っていつも紅茶にうるさいんだから・・・)」

蒼星石「さて、次回はどんな妖怪でしょうか?」

シルエットに妖怪の姿が映る

サブタイ:「かまぼこ -Kamaboko-」

真紅「お父様、鬼太郎はどこに行ってしまったの?」
目玉おやじ「あぁ、鬼太郎は今旅に出とるよ。たまにあるんじゃ」
真紅「なんですって!?、主人である私を差し置いて旅なんて!?…家来としてもっとしつけしないと」
目玉おやじ「いやいや、いいんじゃよ。たまに1人で旅させるのも良いものじゃ。それに、いつも真紅にガミガミ言われてしもうてはのぉ……」
真紅「ぐっ…そ、それにしてもこのか…かまぼこ、黄色と黒のしましまね」
雛苺「鬼太郎のちゃんちゃんこみたいなのー」
目玉おやじ「な、なぬっ!?。そ、それを食っていかん!!」

真紅「次回、ゲゲゲのローゼン…」
目玉おやじ「鬼太郎~~~!!」

妖怪:半漁人

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最終更新:2010年05月01日 13:11
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