アットウィキロゴ

鏡爺と花人形その3

鏡爺と花人形その3


「これが『照魔鏡』か…くっくっく…これでわしの野望も叶うわい」
 それを聞いてわしは少し後悔した。じゃが、これでおハナに会えるかと思うといてもたってもいられなくなっての。
「これでいいじゃろ。約束じゃ。早くおハナの居場所を教えてくれい!」
「ん?おぉーそうだったな。約束は守らねばな…」
 奴は懐に手を伸ばした。するとわしに向かって白い粉を投げつけてきたんじゃ。
「ぐわーっ!こ、これは塩か!」
「その通り、塩は銅をさびさせる。昔の鏡は銅で出来ておる。お前のような鏡妖怪は塩に弱いらしいな。」
 わしは悶え苦しんだ。意識が遠のき本体の鏡に戻ってしまった。気を失う前、わしは必死に問いかけた。
「おのれ~!わしを謀りおったな!まさかおハナの事も…」
「もちろん知らんよ。お前がご執心と聞いたから名前を出したまでだ」
「くっ…」
 わしはもう話す力も残ってなかった。
「ぬらりひょん様、こいついかがいたしましょう?」
「もう用はないが…せめてもの情けじゃ、壊さず捨てておけ。そうだな、潮風が吹く浜辺あたりがよかろう。がーはははははは!」

「それで魚食ってた俺達の前に現れたってわけか」
 複雑な表情をしてねずみ男が問いかけた。事実を知ってしまった以上、責め続けるわけにもいかないのだろう。
「すまん、お主がハナ、ハナと言っておるのが聞こえてきて、おハナをさらったつづらと同じものがあったから…」
「ハナじゃなくてカ・ナ!しっかりしてほしいのかしら」
 金糸雀が不服そうに詰め寄る。
「てめーがそんな事言える立場ですか!そんなじーさんをてめーは騙したんですね」ギュ~!(と、頬をつねる)
「痛いのかしらー」
「それにしても…皮肉なものですね」
 鬼太郎がそう言うと、皆黙ってしまった。何の意味か分からない鏡爺だけがきょとんとしている。
 おハナ=水銀燈であり、ぬらりひょんとミーディアム関係を結んでいる。もし水銀燈がいつものようにぬらりひょんの傍にいたら、労せずして感動の対面が出来たはずなのだ。居場所を知っていると言った嘘もある意味本当だ。
いや、鏡爺がこうして無事な今、水銀燈と 会わせるのはそう難しい事ではない。ぬらりひょん共々待っていればあっちから攻めてくるのだから。
 しかし、水銀燈に会わせる事は本当に良い事だろうか。鏡爺は思い出を極端に美化しているが、今の邪悪な水銀燈を見たらショックをうけるのではないのか。一様にそう考えていた。
「お主達、さっきおハナを知っているような事を言ってたな。このとおりじゃ!何でもいいから教えてくれい!」
 鏡爺は皆の輪の中心に入り何度も何度も土下座した。鬼太郎がそれを止めようとする。
「鏡爺、やめてください」
「頼む、わしにはこれしか出来ん。お願いじゃ!」
 水銀燈への思いは想像以上に大きかったのだ。その様子に一同はむせび泣いた。
「仕方ない。鏡爺、多少酷な話になるが教えよう」
 目玉親父が潤んだ目で意を決した…

 ドーン

 その時、家の外で大きな音が鳴った。同時に大きな揺れが皆を襲う!家はぎしぎしと音を立て、屋根の一部が崩れ落ちる。
「地震!?」
「きゃ!なんですかー」
「わー揺れてるのー」
「な、何だ、こりゃーよー」
「鬼太郎!助けて!」
 一同騒然となる中、鬼太郎が一瞬早く冷静に戻った
「父さん、外で何か起こった様です」
「うむ、このままここに居ては危険じゃ!皆、表に出よう」
 目玉親父の合図で一斉に表に駆け出す。すると…
「お主ら一体どうしたんじゃ!」
 別行動をしていたはずの砂かけ婆、子泣き爺、一反木綿、ぬりかべが目の前に倒れている!
「おお、親父殿、皆も一緒か!」
 目をくらくらさせながら、砂かけ婆が気が付いた。真紅が問いかける。
「どうしてここに来られたの?」
「それが、分からんのじゃ。わしらはその鏡の前に行った。すると鏡の中から黒い霧みたいなものが出てきて、それに包まれた所までは覚えとるんじゃが…」
「お爺さん!何かやったの!」
 真紅の問い先が鏡爺に変わった。
「お主らはわしとずっと一緒だったじゃろうが!わしは何もしとらん!」
「じゃあこれは一体何?」
「わしが聞きたいくらいじゃ!こんな事今まで一度たりとも無かったわい!」

 ドーン!

 再び地震が起こる。さっきより若干大きいようだ。
「うわっ!まただ!」
 ドールズは空を飛んで揺れを回避したが、妖怪達は立っていられない。
「えっ?何かしらー、あれ」
 一足早く宙に飛んでいた金糸雀が、遠くを見て呟いた。つられて皆も同じ方向を見る。
 遠くの方で何か蠢く物体があった。驚く皆をよそにそれは深く屈み飛び上がった。空の彼方まで上ったそれは、一度最高点まで達し豆粒のように小さくなったが、落下してくるに従いその巨体をはっきり見せ付けた。

 ド・ドーン!

 着地した!最大級の揺れだ!妖怪達は散り散りに吹っ飛び、宙にいたドールズも風圧で飛ばされた!
「うわあ─────っ!」
「痛えーっ!」
 辺りを大量の砂埃が覆った。一寸先も霞んで見えない。皆は飛ばされた場所で動く事もままならず、そこから呼びかけあい仲間の安否を確認する事しか出来なかった。
「あっ!鬼太郎なのー」
「雛苺!大丈夫かい?おーい!他に誰かいないかー」
「鬼太郎!ここよー」
「猫娘も無事か」
 暫らくすると少しずつ視界も晴れ、仲間同士が次々合流していった。おのおのダメージは軽いようで、とりあえず皆は安堵した。
 しかし、油断してはいられない。先ほどのやつは間違いなく近くにいる。やつが再び動き出せばまた先ほどの二の舞だ。いや今度こそ誰かが犠牲になるかもしれない。緊張の糸が張り詰める。それを破ったのはねずみ男の叫びだった。
「あわわわ…、出た──────────!」
 皆は一斉にその視線の先を見た。
 先程の衝撃でひび割れた大地、その上に、山のような巨大な妖怪が立っていた。
 高さは30メートルぐらいあるだろうか、お盆のような丸く平たい頭に醜悪な顔があり、首から下は雲の絵のような手足が付いている。その目は爛々と輝き、足元で驚愕している皆を見下ろしていた。 

 ※ttp://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%94%BB%E5%83%8F:SekienUngaikyo.jpg
(こいつがゴジラぐらいの大きさで立っている、と脳内補正でおねがいします)

「なんとあれは雲外鏡!」
 少し後方に居た鏡爺が驚嘆の声をあげた。
「なに!あれが雲外鏡じゃと!」
「父さん、雲外鏡って?」
 鬼太郎の問いには鏡爺が答えた。
「鏡の中の世界における最悪の化け物じゃ。あいつがその気になればわしの世界なんぞあっという間に壊されてしまうぞ」
「こんな妖怪がいただなんて…」
 真紅達ドールズもあっけにとられていた。ダイダラボッチや蛟竜など今までにも巨大妖怪と対峙した事はあったが、今回はフィールド内部の話である。自分達の世界がいつ何時脅かされるかもしれないのだ。

「がはははは、今日こそ決着をつけてやるぞ鬼太郎!」
 雲外鏡の方から聞きなれた笑い声が響く。その声の主は雲外鏡の右手に抱えられていた。そう、もちろん…
「ぬらりひょん、またお前か!」
「今度と言う今度は年貢の納め時だな、鬼太郎。鏡の世界でこの雲外鏡に勝てる奴はおらん。お前たち、まとめてあの世に送ってやる! 」
「そうだそうだ!やっつけてやるー」
 その手の中からぬらりひょん、そして朱の盆が表れる。
「ぬらりひょん!貴様と言う奴はー!いったいわしに何の恨みがあるんじゃ!」
 その会話に鏡爺が割って入った。無理もない、つい先日、騙された挙句殺されそうになったのだ。
「おお、鏡爺か。やはり命は大切にするもんじゃな。お主のおかげでこやつらを簡単に鏡の中に集められたわい。『照魔鏡』の事といい 、お主には感謝の言葉は言い尽くせない。がはははは」
「な、何をー!降りて来い」

「あら、おばかさんがい~っぱぁい。ねえ、ぬらりひょん。あいつが鏡爺なの?」 
 そんなやり取りの中、ぬらりひょんの後ろから別の人影が現れた。銀色の髪、黒い翼をもつその姿を確認するや鏡爺は愕然となった。
「そうだ、奴がここのフィールドの主だ。もうすぐいなくなるがな。奴が鬼太郎達を集めてくれたおかげで勝利は目前だ。お主もローザ ミスティカという物をあっさり集められるだろう」
「ふーん…そこのお爺さん、とりあえず礼を言っとくわ」
とは言ったものの水銀燈のその態度に感謝の欠片もなかった。
 対する鏡爺は魂を抜かれたかのように硬直していた。手は振え、顔に冷や汗をかき、やっとのおもいで呟いた。
「あ…、お…、おハナ?」

 話は少し前にさかのぼる。

 場所は再びぬらりひょんのアジト。そこの一室で、ぬらりひょん、水銀燈が鏡の前に立っていた。その鏡は直径2メートルもある巨大な円形で、縁には髑髏を象った模様がある物々しい形相を呈していた。
「見よ。これが雲外鏡だ」
「何これ?ただ大きなだけの骨董品じゃない」
「そう、ただの骨董品だ。これが無ければな…」
 ぬらりひょんは懐より先程の手鏡を出した。
「これは『照魔鏡』と言う伝説の鏡だ。これを使えば雲外鏡の封印を解くことができる」
「ふ~ん、それをどうするのよ」
「こうするのじゃ!」
 そう言ってぬらりひょんは『照魔鏡』の柄を持ち雲外鏡の前に照らし合わせた。すると…二つの鏡が共振しそれぞれ光りを放ち始め、同時に屋敷全体がゴゴゴと音を立て揺れだした。
「!! 何なのよ!」
「さあ、目覚めよ雲外鏡。貴様の封印を解いてやったぞ」
 すると、地の底より響き渡るような低い声が部屋全体を包み込む。
《誰だ~、俺の眠りを妨げる奴は~》
「くくく…目覚めたか雲外鏡。わしはぬらりひょんじゃ。『照魔鏡』を持つ貴様の主だ」
《………主》
「そうだ、鏡世界最強の妖怪よ、お主はこれからわしの命令を聞きわしの為に働くのじゃ!」
《わかった、主よ、用があるならいつでも呼べ》
 その言葉が終わると同時に鏡の光が消え揺れが収まり、屋敷は以前の静寂を取り戻した。

「これで雲外鏡はわしの物となった。後は鬼太郎どもを鏡の内部におびき出せば…」
 そこまで言ったぬらりひょんは隣にいた水銀燈を横目でちらりと見やる。
「その役目を私がするって事?」
「そうだ、あのガラクタ人形の一匹でもさらってくれば奴らはのこのこやって来るだろう、そこを雲外鏡で一網打尽にしてやる!」
と、そこで廊下を慌しくやって来るドタバタと言う音が響いた。その音は部屋の前で急に静かになり、少し間をおくと扉よりぜいぜいと息を切らせた主の盆が現れる。
「ぬらりひょん様ー!大変です!」
「なんだ騒々しい。朱の盆、鬼太郎達に何かあったのか?」
「それが、奴ら鏡爺の空間に…」
 身振り手振り大げさに、朱の盆は鬼太郎達の行動を伝えた。
「何だと!それは間違いないのか!」
「はい。誰かがさらわれたって言ってました!」
「それはそれは好都合。くくく…運もわしに味方しておるわい」
 その会話に水銀燈が割って入る。
「何それ~?あいつらフィールドに入ったって事?私は特にやることないの?」
「今となってはな…。どうだ?見物に来るか?奴らが無残に消えてく様を見に」
「真紅達が消えたらローザミスティカを集めるようだし、それに面白そうね…」
「決まりだ!朱の盆、出かけるぞ!」
 準備を整えた三人は意気揚々と雲外鏡の中に飛び込む。
「あわわわ…」
「うわっ、おっきー」
 空間の中には既に雲外鏡が待っていた。そのあまりの大きさに朱の盆は震えだし、水銀燈さえも一瞬たじろいだ。ぬらりひょんだけが平然とした態度でそれを見つめ、差し出された右手に悠々と乗り込み後の二人もそれに続く。
「行け、雲外鏡!目指すは鏡爺の空間だ!」

「なんだ水銀燈、何か怯えておるのか?」
「は~?バカ言わないでよ。確かにこの先にあいつらがいるわね」
 雲外鏡に運ばれる最中、水銀燈も気配のおかしさを感じていた。それと同時に感じる奇妙な感覚。遥か昔に嗅いだような懐かしい空気の匂い。だが、今の彼女にそれが何なのか知る由はない。
 雲外鏡はフィールドの扉を吹き飛ばしつつ猛スピードで飛び続け、程なくして扉の前に着いた。
《主…主!》
「うん?」 
《すぐ外に妖怪がいるんだが》
「何だそれは?見せてみい!」
 雲外鏡の目からサーチライトのような光りが放たれる。その先にはガラクタ置き場に立つ砂かけ婆、子鳴き爺、一反木綿、ぬりかべの姿が映し出された。
「あ奴らも来ておったのか。雲外鏡、奴らをここに引き込めるか?」
《御意》
 雲外鏡は左手をそこに押し込み皆を掴み強引に引っこ抜いたかと思うと、フィールド内部に放り込んだ。
「全員!まとめて!始末してやる!がはははは!」
 そしてそのまま入り口を突き破り、鬼太郎達がいるフィールドへ降りていった。
最終更新:2007年11月20日 23:34
ツールボックス

下から選んでください:

新しいページを作成する
ヘルプ / FAQ もご覧ください。