第15回.統計調査法~正規分布~正規分布表の使い方


配布資料に基づいて説明します。


まず、社会調査には全数調査と標本調査があり、全数調査は現実的に実施不可能な場合が多く、
普通は、標本調査を行う。
アンケート調査や心理実験などが標本調査の実例といえる。

標本調査で得られたデータから、基本的な統計量を計算する。
統計的推定や統計的検定の手法を用いて、これらの統計量から「未知の母数」を推定する。

統計的推定や統計的検定の理論は「正規分布」が基本となって構成される。
度数分布表から作られたヒストグラムの長方形は、長方形全体の面積を1(=100%)とすると、
1つの長方形の面積が相対度数になることがわかる。

例えば、大学生の身長データから」ヒストグラムを作ってみる。









今回のテキストの巻末にも正規分布表が付録で収録されている。
この表は、左側が「整数.小数第1位」で上の欄が「小数第2位」を示す。
そして、「その値よりも大きい部分の面積(確率)」が表の中に書かれている。

例えば、P{x≧1.23}の値が知りたければ、左側で「1.2」上で「0.03」を選び、その位置に該当する
数値「0.1093」が対応する確率の値になっている。
  • P{-∞<x<∞}=1.0(=100%)
端から端まで、すべての確率は1.0である。
また、標準正規分布の場合には平均が0で中央に位置し、中央で左右対称形なので、
  • P{x≦0}=P{x≧0}=0.5 となる。


【解答例】

(1).P{-1.2≦z≦1.0}=P{-1.2≦z≦0}+P{0≦z≦1.0}
         =P{0≦z≦1.2}+P{0≦z≦1.0} (対称性から)
         =(0.5P{z≧1.2})+(0.5-P{z≧1.0})
         =(0.5-0.1151)+(0.5-0.1587)
         =0.3849+0.3413=0.7262   ■
(2).P{z≧1.5}=0.06681 (表の値そのまま) ■
(3).P{0≦z≦1.5}=0.5-P{z≧1.5}=0.5-0.06681=0.43319=0.4332  ■

  • 次の定理が、標準正規分布(正規分布表が使える)と一般の正規分布(正規分布表は無い)を結びつける。

この定理から、すべての場合が計算できるようになる。

  • 例えば、次の問題も解くことができる。

【例題1・解答例】

入学試験の成績xは平均73、標準偏差10の正規分布N(73,10^2)に従っている。
このため上の定理より、z=(x-73)/10とおくと、zは正規分布N(0,1^2)に従うことになる。
また、上の置き換えより、x=10z+73 となる。
zは正規分布表を用いることができ、求める確率はP{x≧80}であるので、
 x≧80 ⇔ 10z+73≧80 ⇔ 10z≧7 ⇔ z≧0.7
より、
P{x≧80}=P{z≧0.7}=0.2420
受験生が150名なので、
150×0.2420=36.3
より、約36名いると予測できる。  ■

【例題2・解答例】

合格者が25名で、その確率は25÷150=0.1667である。
正規分布表から、この値に近いzを探すと、0.97であることがわかる。

すなわち、P{z≧0.97}=0.1660である。
 x≧82.7 ⇔ 10z+73≧73+9.7=82.7 ⇔ 10z≧9.7 ⇔ z≧0.97
より、成績xは82.7以上になるので、83点以上が合格になる。  ■

  • さらに、以下の問題は今後の基本になる。

【練習問題1・解答例】

仮定より試験の成績xは平均55、標準偏差15の正規分布N(55,15^2)に従っている。
このため上の定理より、z=(x-55)/15とおくと、zは正規分布N(0,1^2)に従うことになる。
また、上の置き換えより、x=15z+55 となる。
「優」の学生の割合は0.15である。
正規分布表から、この値に近いzを探すと、1.035であることがわかる。
すなわち、P{z≧1.035}=0.15である。
 x≧70.525 ⇔ 15z+55≧55+15.525=70.525 ⇔ 15z≧10.35×15=15.525 ⇔ z≧1.035
より、成績xは70.525以上になるので、71点以上が合格になる。  ■

【練習問題2・解答例】

仮定より知能指数xは平均100、標準偏差15の正規分布N(100,15^2)に従っている。
このため上の定理より、z=(x-100)/15とおくと、zは正規分布N(0,1^2)に従うことになる。
また、上の置き換えより、x=15z+100 となる。
zは正規分布表を用いることができ、求める確率はP{x≧150}であるので、
 x≧150 ⇔ 15z+100≧150 ⇔ 15z≧50 ⇔ z≧3.33
より、
P{x≧150}=P{z≧3.33}=4.342E-04=0.0004342
よって、約0.043%占めると予測できる。  ■

【練習問題3・解答例】

(1).仮定よりxは平均5、標準偏差2の正規分布N(5,2^2)に従っている。
このため上の定理より、z=(x-5)/2とおくと、zは正規分布N(0,1^2)に従うことになる。
また、上の置き換えより、x=2z+5 となる。
zは正規分布表を用いることができ、求める確率はP{x≦7}であるので、
 x≦7 ⇔ 2z+5≦7 ⇔ 2z≦2 ⇔ z≦1
より、
P{x≦7}=P{z≦1}=1.0-P{z≧1}=1.0-0.1587=0.8413   ■

(2).仮定より仮定よりxは平均μ、標準偏差σの正規分布N(\mu,\sigma^2)に従っている。
このため上の定理より、z=(x-\mu)/\sigmaとおくと、zは正規分布N(0,1^2)に従うことになる。
また、上の置き換えより、x=\sigma z+\mu となる。
zは正規分布表を用いることができる。
まず、P{x≧6}=1-P{x≦6}=1-0.9773=0.0227
 x≧6 ⇔ \sigma z+\mu≧6 ⇔ \sigma z6-\mu ⇔ z≧(6-\mu)/\sigma
より、
(6-\mu)/\sigma=2.0
が分かり、
\mu+2\sigma=6 ・・・①
また、同様に、
まず、P{x≧4}=1-P{x≦4}=1-0.8413=0.1587
 x≧4 ⇔ \sigma z+\mu≧4 ⇔ \sigma z4-\mu ⇔ z≧(4-\mu)/\sigma
より、
(4-\mu)/\sigma=1.0
が分かり、
\mu+\sigma=4 ・・・②
上の①②より、\sigma=2\mu=2、がわかる。   ■

質問や感想があればどうぞ。

  • 何でも良いので質問して下さい。とにかく計算問題ができるように、練習をしておいてください。 -- 小西 (2015-07-13 14:23:18)
  • 8月4日のアクセス件数が100でした。私も数回見ましたが、試験の前日でそこそこの訪問者が居て良かったです。正規分布の問題はとにかく図を描くことです。何の確率を求めるかが分かれば、あとは計算だけです。 -- 小西 (2015-08-05 01:41:55)
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最終更新:2015年08月05日 01:41