バーサーカー、聖杯戦争においてある意味最凶を誇るサーヴァント、しかしそのあまりに
強すぎる力は時には主でさえも死に至らしめてしまう…だが奇跡と言うべき彼の新しきマ
スターとなった少女は何故か彼の力に飲み込まれる事はなかった。
―――ほんの一瞬だった…
管理局の隊員と思われる男の槍型デバイスが少女の右目を切り裂く、戦闘機人とはいえモ
ニターしかも生体パーツを破壊された事による苦痛はすさまじい、それでも少女は反撃を
行おうとするが相手の方が一枚上手だった、反撃をあっさりかわし、今にも自分にむけて
その槍を振り落とさんとする。
「許せ…」
男は言う。
――――ここまでか…
少女は思った、まさかこんな呆気なく果ててしまうとはな…そう思った時だった、少女の
目の前に見た事のない魔方陣が現れ何かが現れた、その光景に男も少女もその少女を助け
ようとした女も呆気に取られた。
―――明らかに人間とは思えない身長、そして無骨なまでの筋肉、黒い肌、ぼさぼさに伸
びた髪、そして身につけているのは布製の腰みの…そして手に握られた石をただ乱暴に削りだしたとしか思えない刀が握られていた。
そしてその男は一気に時空管理局の隊員に襲い掛かる、隊員は槍を突き刺そうとする、しかしその男はその剥き出しの素肌で槍の一撃をあっさりと受け止めた、
そう何も、防具もBJもプロテクションすら張っていない地肌で…驚愕の表情を浮かべる隊員、そして男は咆哮をあげると石剣を隊員に向けて振り落とす、
隊員がプロテクションを張るがそれをものともせずに切り裂いた、ただ己の力で、よくあるバリアが徐々にひび割れていくと言うものじゃない、
斧で細枝を切り裂くように、ペーパーナイフで濡れたテッッシュペーパーを切り裂くように、包丁で豆腐を切るような、
そんな感触でプロテクションを叩き割った。
大量の血飛沫を上げて倒れ付すゼスト・グランガイツと呼ばれた隊員、驚く少女と女、そして少女は声をかけようとしたが男はある方向を見ると歩き出した、
呆気に取られた光景、少女と女は彼を追うことに躊躇し留まった、男の向った先には…そして轟音と男の声にならない咆哮、そして二名の女性と思われる
罵声と悲鳴と絶叫…恐る恐る少女は男の方に歩を進ようとした、そして男は戻ってきた。
何も持っていないはずだった片方の手にただの肉塊化したかつて管理局のメガーヌ・アルビーノ、クイント・ナカジマと呼ばれる女性を引き釣りながら、
そして男は女の方へ敵意を向けようとしたが少女は諌めた、「こいつは味方だ」と、そして男は少女に向けて膝をついた、少女は驚いた表情をする、
「何故」と…そして理解するこいつは私の事を「主人」と思っているのか…
「チンクだ…私はチンク…」
少女はその男に向って言った。
「お前の名前は?」
少女は男に問う、だが男は何も答えない…その男はすべての理性を犠牲にしてまで力を得た、そして男の口は語らない…困惑する少女チンク、
そしてなんとなく手を差し出す、そしてその男「ヘラクレス」の事「バーサーカー」は大きな手で少女の手に触れる…そして温もりを感じた。
――――小さき戦闘機人と狂戦士は遭遇した。
「これが「バーサーカー」ッスか、でけえッス!」
赤髪の少女はバーサーカーを見上げて言う。
「ふん、ただ大きいだけだよ」
ちょっと敵意をむき出している金色の目をした少女が言う。
「こら、彼の悪口をいっちゃ駄目だってチンク姉が言っていたでしょ」
たしなめるように青髪の少女が言う。
「でもよぉ…」
金色の瞳を持つ少女は何かをいいたげにしていた。そしてチンクはバーサーカーにオーダーを下す。
「バーサーカー、私の妹達の…」
「ウェンディッス!」
「ノーヴェだ」
「チンク、よろしくね」
三人の少女はバーサーカーに挨拶をする、ただバーサーカーは彼女達を見ているだけだ。
「仲良くやって欲しい」
言葉通じたのかバーサーカーは頷く、サーヴァントにとってマスターの命令は絶対だ、そしてバーサーカーは彼女達を「守るべき存在」と認識する。
バーサーカーとは彼の名前だったが彼女達はそれを知らない、だが彼を見てそう名づけた人がいた。その人は…
「彼をどう思う、ウーノ」
名づけた人はモニターに映るバーサーカーを見ながら自分の秘書とも言える人に問う。
「彼はあまりに危険すぎます、一刻も早く排除を」
秘書はあくまで冷静に分析して判断する、ここに存在しながら主の命令を全く聞こうとしない存在は排除すべき存在なのだ、
そしてウーノと呼ばれる女性は同じ存在である妹、4番と名前のついた女にも同調を促す。
「え、ええ…でも彼を排除しようなんて…」
4番クアットロはかなり及び腰だ。
「無理だね」
名付け主であるジェイル・スカリエッテイは淡々と言う。自分の作った作品が任務を終えて帰って来た時にやってきた招かざる客…
その男はただ5番目の娘に絶対的忠誠を誓い、その娘の親である自分に対して全く忠誠を誓うそぶりはみせない。だが彼を排除するのは無理だった、
レリックやジュエルシードを応用した束縛術、官制術は彼には全く通用しなかったのだ、そして様々解析から彼が「サーヴァント」
と呼ばれる異世界の英雄だと言う事…そして排除と言う要因は「クアットロ」の体験からして不可能と分析した、元々自身の姉である
チンクなどを見下す傾向が強いクアットロはそれに付き従うバーサーカーに対しても遠巻きに侮蔑する発言をしていた、
だがバーサーカーにとっては何も感じなかっただろうがうっかり口をすべらせて彼の主に対する悪口を聞いた途端…
彼はクアットロに襲い掛かった。
ジェイルにとってその光景は身を震わせた、悲鳴を上げて助けを乞うクアットロ、しかもチンクは調整中のため動くに動けず、
慌ててとめるためにガジェット部隊を差し向けたがオリンピックで世界記録を打ち立てるように次々と粉砕☆玉砕☆大喝采!であり、
彼を止めようとして迎撃にあたったトーレ、ディエチ(後期型はまだ製造途中)をあっさりと返り討ちにした、
そして3ケタ単位の本来なら別任務用にあてたガジェット部隊を投入したけどそれも足止め、
アーチャーが決死の覚悟で挑んだ時には到底及ばず殲滅された。
結局は目覚めたチンクによって止められるまでの彼の暴れぷりはすさまじいものだった。
無論クアットロは言うまでもない、最早彼女がチンクに対してぎこちないながら敬語で話し掛けるようになるのはその典型と言えよう。
それと同時にジェイルは思う
―――世界とは面白いものだ
自分の知らない未知なる存在の力に彼は魅了された、出来れば彼を自分の手駒として、否、自分の手で動かしてみたい、
無限の欲望の欲求はどこまでも留まらず、だが彼にかけられている術は全くなアンノウンであり、
こちらの技術のすべてをあわせても彼を従わせる事は出来なかった。
「まぁいいさ、ウーノ、彼は私には忠実ではないが、チンクには忠実だ、心配要素は何もない」
「しかし…」
抗議の声を上げるウーノ、無理もない…
「それに、今彼に繋ぐ鎖はチンクだけだ…その鎖を奪う真似をするだけの戦力はこちらにあるのかね?」
「・・・」
口ごもるウーノ、彼女の分析でこちらの全戦力を持ってバーサーカーにぶつけたが、結果は彼を撃破しても最高全滅(皆殺し)、
最低でも7割の戦力喪失という非常な現実なのだ。
「もうすぐ理想の世界が成就する」
「尚更…」
「いいんだよ」
ジェイルは微笑む。
「あれぐらいの危険要素がなければつまらないじゃないか…それに彼はチンクがいるかぎり私の夢への力になってくれるさ」
――――それが自身の破滅に繋がるとはまだ思ってもいなかった。
「私達もやっと全員揃ったか」
「そうだな」
研究所の一室における小さな茶会、バーサーカーの主でもあるチンクとそしてバーサーカーと初めて遭遇した
外部人であるトーレは満足したように紅茶を飲んでいた、対抗勢力襲撃までの4日、準備は万全、後は行動に移るのみだ。
そして自動ドアが開くとピンク髪の女が現れる。
「失礼致します、トーレ、チンク」
無感情な声で7番目の戦闘機人「セッテ」が挨拶する。
「どうしたセッテ」
「空戦シムのスペースを使用したく、許可を戴きに参りました」
その無感情な声に若干嫌悪を覚えるも、トーレは言う。
「空いているのなら好きに使え、いちいち許可は必要ない」
「失礼致しました、以後そのように、それと…」
まだ何かあるようにセッテは言う。
「チンク、バーサーカーとの単独模擬戦の許可を…」
凍りつくチンクとトーレ
「彼とか…」
「ええ、彼の戦闘能力から実戦を学び以後の作戦に備えるべきかと」
「いや、むしろ今他の妹達は機体洗浄でもしている頃だろう、親睦を深めてはどうだ?」
チンクはそう誘う、少なくとも友軍勢力との交流は大事だと認識しているのだ。
「ありがとうございます、ですが空戦ならびに彼との模擬戦を」
熱意もなにもなく語りかけるセッテに根負けしたのかチンクは渋々了承する。
「そうか…分かった、だがくれぐれも無茶はするな」
そう言うとセッテは一礼して退室する、そしてチンクはバーサーカーに指示を送る。
「セッテがお前の相手をしたいと…出来るだけ作戦に支障が出るほどの怪我は負わせるな」
そしてバーサーカーに連絡を送ると溜息を吐く。
「変わった子だな」
「完全な戦機か…」
ポツリとトーレは言う。
「バーサーカーか…作戦に参加するのだろ彼も、参加せざる得ない」
トーレはぽつりと言う。トーレも彼の強さを身にしみて実感していた、不用意な発言をしてクアットロがバーサーカーに襲われた時、
そしてある遺跡のロストロギア回収に向った時…前者は自身で立ち向かったが、こちらの攻撃が通じずインパルスブレードが呆気なくへし折られ、
そして後者はその遺跡を守護するがごとく存在する数多の巨大生物などを蹂躙した事、彼がいれば心強いものは何もない。
「ただ、戦機といえば、あいつの方が完全な戦機いや戦鬼だな…」
トーレは呟く、あれほどの力と引き換えに知性と感情を失い名前の如く「狂戦士」として暴れまくる彼、彼を抑える事が出来るのはチンクただ一人のみ…
「そういうな、あれで彼は妹達の面倒をよくみてくれる」
チンクの命令によってバーサーカーは妹達の面倒をよく見てくれるのだ、無論面倒といっても模擬戦なのだが…結果はいつもバーサーカーの蹂躙なのだが…
まぁウェンディ達がバーサーカーに対する行動もある意味仰天するものだが。
「でかいっす、高いっす」
とバーサーカー肩によじ登ってきゃいきゃいしているウェンディやセインやノーヴェとか
―――そして管理局襲撃…
それがエースオブエースの羽を?ぎ、雷光の心を砕き、夜天の王に再び絶望を与える事になるとはまだ誰も思わなかった。
「そんな、真竜ヴォルテールが…ただ魔法も使えない男に倒されただと!」
「シャマル…ザフィーラ…お願いや返事してくれ…返事して…うわぁぁぁぁぁぁぁぁ」
「エリオが…キャロが…潰れて…こんなの嘘…嘘と言ってよぉぉぉぉぉ」
「私のせいで…スバル…ティアナ、ギンガさん…グリフィス君まで皆…私のせいだ…」
「う、うわあぁぁっぁぁ、なんだよこいつは!」
「ヒィィィィィ、ギャァァァァァァァァ!!!!」
「来ないで…来ないで…お願い死にたくな…」
剣を拳を振るうごとにこの世から抹消される管理局の隊員、そして彼らの放つ攻撃はバーサーカーに何のダメージを与える事無く、
そのあらゆる魔法が彼に触れることなく次々霧消していく。
―――声とは形容したがい声が響く
―――その度血の華が咲き、仇花のように響く絶叫
―――こちら攻撃は全く通用しない
―――何もかもが嘘に思えた、これは夢だ、現実ではないと…
とある管理局員の回顧である、地上を蹂躙する、ガジェットも何も引き連れていないただ一人の巨漢、
だがその男は単独で3ケタを超える管理局の戦闘員に向って恐れもなくただ嬉嬉するように突っ込んでいく…
そして殺戮は終わり阿鼻叫喚の地獄となった場所は血の池となりそして管理局員であった肉塊が意たる所に散乱していた。
―――J・S事件(詳細は詳細版J・S事件参照)
管理局史上最悪の事件、管理世界最大の被害を生み出した、最も被害がひどかったのは地上本部攻防戦、後のスカリエッティ研究所攻防戦(※別項)における戦闘。
―――機動6課
JS事件を見越して創設されたが、地上本部攻防戦に多数の隊員を喪失し、実質的な戦力が維持できず解体、
部隊創設を後押しした3提督(P750)、リンディ・ハラオウン(P1054)、クロノ・ハラオウン(P379)、
ならびに同部隊長である八神はやて(P893)に対する責任問題が本局で問題となりつつある。
―――ナンバーズ(戦闘機人は別項)
J・S事件における主犯ジェイル・スカリエッティ(P450)の尖兵的存在として12体製造ガジェットドローンと
共に管理局地上本部を襲撃、後のスカリエッティ研究所攻防戦において、首謀者スカリエッティ含む1、3、4、7、
そして本局に潜入していた2は射殺されたが、他のナンバーズは現在も逃亡中
―――CODE:バ-サーカー(トップシークレットにつき閲覧は重要関係者のみ可)
J・S事件において最も管理局に損害を与えた身元不明の男、地上本部攻防戦において機動6課、ならびに陸士108部隊に
多大な損害を与え、スカリエッティ研究所において本局部隊に多大な損害を与えた。損害が大きかった理由として、
殺しても何度も復活し、尚且つこちらの魔法攻撃がほぼ通用しなかった為である。最終的にこちらの切り札、
第97管理外世界(管理外世界項目参照)におけるロストロギア「聖杯」に対する強制執行のさいに術者を殺害、
捕獲したコード:S、コード:A、コード:R投入によって撃破、しかし彼の行った時間稼ぎによってナンバーズの大半は逃亡した。
※尚コードシリーズはバーサーカーについて何か知っている模様
最終更新:2008年06月30日 17:09