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694 :リリカルブラッド:2008/08/03(日) 23:35:31 ID:Tr37NxkJ
いつも多数の感想ありがとうございます
励みになりますマジで

ではエピローグ、投下します
変な所で切ってしまったおかげでいらぬ誤解を与えた部分もあって申し訳ない
そこら辺は解決させたつもりです

でも「要塞」と「鞍」はやっちゃった感があるのでwikiで修正します

ではなのはルート・エンディング  落とします


695 :なのはルート――エピローグ:2008/08/03(日) 23:38:11 ID:Tr37NxkJ
――― 身体が、、動かない ―――

朦朧とする意識を取り戻し
その肉体に思考の戻った彼女が初めて思った事がそれだった

気だるげながら覚醒している意識
にも関わらず、その肉体のパーツのどれをとっても
彼女の思いのままになる箇所が無い

まるで鎖に縛られているような――
金縛りにあってしまったかのような――

そんな感覚が彼女――高町なのはを襲う

(………………)

もっとも彼女は理解している
それは当然の事態だと

魔力エンプティに加えて
あの墜落事故を遥かに上回る総ダメージ量
かつてない激戦に苛まれた身体の疲労
どれを取っても、自身の肉体の限界を三段は超えている
起きてすぐ、動けるはずがない

もしかしたら後遺症が残る可能性も――


「―――気がつきましたか……ナノハ」

最悪の事態が頭の中をよぎる
そんな中、高町なのはに声がかけられた

自分は今 硬いベッドに寝かされ床に伏せている
そこまで自分の意思で辿り着いた記憶はない

そうだ―――
そんな事も思考に入れられないほどに彼女は疲労していたのだ
恐らく自分をここまで運び、介抱してくれた
今、自分を心配そうに見下ろす金髪の少女

「セイバーさん……」

名前を呼ばれた騎士の少女がほっと一息つく
そんな様相を見てとり――

「手当てしてくれたんだ…」

自分に施された簡素ながらの治療
巻かれた包帯などになのはは気がついた

「ありがとう……面倒かけちゃった、、」

騎士に申し訳無さそうに頭を下げる

「礼には及びません……大した事はしていない
 鞘の回復が良いタイミングで行われたため、元より外傷はなかった」


696 :なのはルート――エピローグ:2008/08/03(日) 23:39:57 ID:Tr37NxkJ
アヴァロンの回復は凄まじいものだった
体組織のほとんどが引き裂かれた、再起不能レベルの傷をすら蘇生させ
神経に痛みは残るも、骨や筋肉に後遺症が残る事は――どうやら無いようだ


「………ここはどこ?」

現在の状況を確認する魔道士

セイバーの話では、あの後
共に支えあいながら上空を飛び続けた両者であったが
疲労困憊で限界をとっくに超えていたなのはは戦闘が確実に終了した事を認識した途端
力尽き、その意識を落としたのだという

そして、なのはという司令塔を失ったセイバーであったが、
組み込まれていたレイジングハートのリカバリープログラムのおかげもあり
ちぐはぐながらも何とか飛び続け、ここに着陸したというわけだ

「的確な指示でした……彼女の助力がなければ二人して地面に落下していた事でしょう」

<shanks> 

主人想いの杖に賞賛の言葉を送るセイバー

ここは―――山岳地帯

ただでさえ人気の途絶えたこの世界にて
更に人の寄り付きそうの無い、秘境じみた景観
相応の距離を飛んだセイバーは
そこに、山師の使うような古びた小屋を見つけ――

なのはを寝かせるため
そこに降り立ち、今に至るというものだ


こんな人里離れた場所に身体を休める小屋があった事も
中に治療道具があった事も出来すぎなくらいの僥倖である

素直にそれに甘え
ようやっと一息つけたセイバーとなのはであった、が――


「セイバーさん」

そんな柔らかい空気を否定するかのように
なのはは固い声でセイバーに問う

「どうしましたか? ナノハ」

「…………」

一呼吸、、じっくり一呼吸置いてから――

「勝ったの? 私達…」

その問いを魔道士は口に出す

「…………」

「…………」


698 :なのはルート――エピローグ:2008/08/03(日) 23:41:05 ID:Tr37NxkJ
「空にてその問いには答えたはずです ナノハ
 私達の勝ちです、と」

「じゃあ……質問の仕方が悪かったんだね」

黒真珠のような光を放つ目を眼前の騎士に真っ直ぐに向け、


「倒したの? 私達……本当にあの人を、、」

その問答の核心を切り出した

「……何故、そのような事を?」

「うん、、一応、確認、、、」

「そのような心配をする必要はありません……
 貴方は消耗し切っている、、体に障ります」

言葉を濁す騎士

歯切れの悪いセイバーを前にして
高町なのはは断固引く気は無い

「あれほどの墜落に巻き込まれたのですから
 普通に考えれば無事に済む確率の方が遥かに――」

「セイバーさん」

なのはの双眸が正面からセイバーを射抜く

その真っ直ぐな瞳は
あらゆる虚偽やはぐらかしを見抜く鷹の目のようだった

――――フゥ、と…

防戦に徹しようとしたセイバーが
その無駄を悟り、溜息を一つ、、、、

そして白旗を揚げる

「アレで大人しくなってくれるような輩なら――苦労はしていません」

「………そっか」

騎士の、その言葉の意図する所は明らか
十分すぎるほどの答えを得て、、

なのはは再び、ベッドに体を横たえた

最後のあの空で確認をした時から……
セイバーには分かっていたのだ

サーヴァントであるが故に――

あの爆炎の中
男の強大な気配が微塵も消えていない事に、、



699 :なのはルート――エピローグ:2008/08/03(日) 23:42:39 ID:Tr37NxkJ
疲労で力尽きる寸前のなのはには伝えなかった
これ以上の負荷をかけないためにあえてはぐらかした

その事実―――

倒してなどいない……

まだ、、何も終わっていないのだという事を……


「しかし何故? 最後の一撃は快心の手応えだった
 あの一刀、、相手を打破した事に疑いの余地は無いはず」

「全然快心じゃないよ…
 あんなの、逃げながら手を振り回してただけ、、」

試すようなセイバーの問いかけに真っ直ぐに自分の意見を示すなのは

「あんなに強い人を倒そうっていうのに、気持ちの乗らない攻撃を何発繰り出したって届くわけが無い……
 初めから、撤退しながらの攻撃が通用する相手じゃないのは分かってた
 あの局面じゃ、良くて相手を押し返すのが精一杯、、そう思っただけ……」

「………」

人は弱い生き物だ
そこに希望を見出せば、安易な認識にその身を委ねてしまう
そんな中、一切の希望的観測・妥協を許さない思考

(やはり、大した人だ……貴方は――)

改めて、目の前の魔道士を見直すセイバー

「セイバーさんは――」

「え?」

騎士の顔を見ず、天井に視線を彷徨わせながら

「もう一度、あの人と……戦うの?」

なのはは躊躇いがちに少女に声をかける

「―――はい」

即答だった

「この身は再び――あの男と雌雄を決する事になるでしょう
 それは決して覆せぬ事実」

瞳に強い意思を込めて――騎士は臆する事無く答える
あの恐ろしい敵と……再び相見える事を

天井を見据えていた高町なのは
その瞳が、揺れる

「止められるなら、、止めたい……」

躊躇いがちに紡がれたその言葉は
高町なのはの偽らざる本心だった



701 :なのはルート――エピローグ:2008/08/03(日) 23:43:48 ID:Tr37NxkJ
「今度こそ死んじゃうよ、、あんな人を相手に……ん、、――」

その言葉を遮るように、、、
なのはの口に人差し指が当てられた

「それ以上言うと、また喧嘩をしなければなりませんよ?」

苦笑混じりにピシャリと、はっきりとその言葉を切り捨てた

あの男との闘いは聖杯戦争を勝ち抜く上で
騎士の決して避ける事の出来ない戦いなのだ

なのはだって分かってる
自分の言葉じゃ、それを止められないという事に

やるせない気持ちになってしまい
魔道士は、騎士の少女の見えない方向に寝返りをうち
口を閉ざしてしまう

再び、沈黙が支配する山小屋

その中において――

騎士は、いずれ来るであろう
その宿命の戦いに想いを馳せる


あの強大な王と向かい合う――自分の姿を幻視しながら


――――――

地平に消えていくその姿

籠の中に囲った鳥が

檻を食い破り

空に飛び立っていった

その様を、、

男は無言で見つめていた


燃え盛る炎の中、悠々と歩を進め
その荒野の只中に立つ黄金の肢体が一言――

「―――ススで汚れた」

現状の不快感に対する率直な感想を述べていた


遥か彼方を飛び退るセイバーと女
あの距離では……
新たな宝具を展開したとて、もはや影すら掴めまい



703 :なのはルート――エピローグ:2008/08/03(日) 23:44:47 ID:Tr37NxkJ
「セイバー ――――」

使用した全ての宝具が男の宝物庫に還ってゆく
ヴィマーナの残骸、撃ち尽くす寸前だった英雄王の無尽蔵の宝具たち

これだけの戦力を投入した事など――
いつ以来であろうか?

しかもそこまでして、成果が全く芳しくなかったというのだから
男の苛立ちは想像に難くないであろう

「もし次に相対せし時―――その輝きが色褪せたままであったのなら…
 お前を見初めた我の見込み違いであったという事」

遠ざかっていく背中
その金色の髪の少女に向け
その真紅の瞳に暗い陰を落としながら


「その時は――我自らの手で唾棄してくれよう」

男は言い放つ

この強大な身が見初め、認めたモノが
醜悪なイロに染まる事など在ってはならない

そのような事、、この万物を支配する王が許せるわけが無い

「―――――」

次、、、

そう、、、次といえば――

――― 次は勝とう ―――

あの端女……高町なのはの言葉が耳について離れない

結局、最後の最後まで王同士の逢瀬を邪魔してきたあの女
市井の身でありながら、あのセイバーを御し
従えるかのような様相も気に食わないし
男の誅殺から逃れ、その無礼な発言の数々を償わせられなかったのも口惜しい

そうだ
認めねばなるまい

もしこの邂逅――
男と騎士王の一騎打ちであったなら
自分は間違いなくセイバーを陥落せしめていた筈だ

それが叶わなかった原因――

あの女の存在が、、覆した
決まっていた事象を、、塗り替えたのだ

―――言葉には言霊が宿るという

その場凌ぎの言葉だったにせよ
「次」と口に出してしまったのなら、それが何らかの力を持つ事もあるだろう



705 :なのはルート――エピローグ:2008/08/03(日) 23:48:08 ID:Tr37NxkJ
またいつか、あの女は我の前に現れるかも知れない
何故かそんな気がする
ならばその時こそ―――


認めねばなるまい


「最低でも三日は生かさず殺さず――苦痛と悲鳴を極限まで搾り出し――」

自分が手ずから引き裂く価値のある存在と認めた上で…………
阿鼻叫喚の苦痛と絶望を絡めて――


「その後、生きたまま心身ともに刻んで地獄の狗にたらふく食わせてやろう」

処断してくれよう

どうして生まれてきてしまったのか…
そう後悔するほどの裁可を、その身に下してくれよう


その瞳に残忍な光が灯る
あの女はこの英雄王を怒らせてしまった
もはや、安らかで幸福に満ちた最期を迎える事はないであろう


正直、今回の醜態
流石のギルガメッシュにも落胆はあった
だがその憤りを言葉にして吐露するのも詮無い事

そろそろ常の王の顔を取り戻さねばならない
いつまでも情念に囚われ
安い感情を暴露したままではいけない

何せ――――見ているモノがいるのだから

この身をこそこそと、下卑た視線で覗き見ている輩がいる

初めから気づいていた
この歪な世界、この作られた矮小な箱庭
そんなモノを支配して愉悦に浸っている愚かな痩せ犬の存在に――

英雄王が、空を見やる

その何も無い虚空に目を向ける

日が昇り始め
燦々とした空気が男の肌を撫でる中―――

英雄王がやおらその宝物庫から
一振りの剣――乖離剣エアを取り出し
何もない空へと向けた


「―――――我がそこに行くまでだ」

そして一言………
男は確かに彼らに対して言葉を放つ


706 :なのはルート――エピローグ:2008/08/03(日) 23:49:13 ID:Tr37NxkJ
「――――それまで精々愉しむが良い」

全てを掴む男であるが故に神にすら宣戦布告するが男の在り方

世界を切り裂く剣を虚空の誰かに向けながら―――

イレギュラー ――― 英雄王ギルガメッシュは


このセカイに宣戦布告をし、、何処かへと去っていくのだった


――――――

「……どうするの? これから、、」

「…………」

なのはが、騎士に背中を向けたまま……
その問いを口にした

そう―――

一息ついたその後は、どうするのか?

なのはの問いに、、沈黙を以って答えるセイバー

どうするか、などと―――答えは決まっていた

セイバーには為さねばならぬ事がある
当然、なのはにも…

互いに未知なる世界に放り込まれた身
一刻も早く己がマスターと、仲間と合流し
今後の対策を練らなければならない

本来ならば、ここで悠長にしていられる身ではない

そして……互いに進む道が違う以上―――

だが、、

「…………当ては無いんでしょう? 
 行き先や方針が定まらない以上、一緒に行動した方が絶対にいいよ」

後ろ目で控え目に少女の顔を見ながら
共に行く事を進言するなのは

心情的な者もさておき、安全面や行動範囲の面から言っても
ここで別れるより、もう少し様子を見た方が良い

「ナノハ――」

そんな思いを胸に騎士との同行を求める高町なのはに対し、セイバーは――

「―――事を為した暁には、貴方に紹介したい人物がいます」

唐突にその話を切り出した



709 :なのはルート――エピローグ:2008/08/03(日) 23:50:06 ID:Tr37NxkJ
「私に…?」

「ええ――彼は私のマスターというべき存在……
 自分の正しいと思う事を貫き通す、強い心を持った好もしい人物です
 きっと貴方とも良い友達になれる事でしょう」

「えっと、、ん 別にそれは良いけど」

突然の申し出にキョトンとするなのはを見て、フフ…と笑うセイバー

だが、、、

「あ――――」

そのセイバーの微笑が突如崩れ、奇妙な表情になる

そこまで自分で切り出しておきながら
間の抜けた声を上げてしまう剣の英霊

この少女にしてはあまりに迂闊
我ながら重要極まりない事を失念していたのだった

「??」

首をかしげるなのは

「いや、その……」

騎士の挙動不審な顔を無言で覗き込む高町なのは

「こちらから切り出しておいて何ですが――合わせても良いものか……」

「??? どうして…?」

その少女はこちらと目を合わそうとせず
しどろもどろになりながら答えた

「想像を絶するほどの―――――――無茶、をやらかすので……彼は」

、、、、、、、

なのはの目が丸くなる

ビルの屋上で言い合いになった原因
セイバーの無茶に高町なのはが激怒した時の事を思い出したのだろう

この魔道士が、命を粗末に扱う無謀な行為を決して許さないという性格ならば
自分の命を採算に入れずに行動する人間を見て
果たしてどういう反応をするか、、想像に難くない

「………うーん、、、」

上目使いにこちらの様子を見てくる少女に対し
やや苦笑いのなのはである

「セイバーさんが10だとするとどれくらい?」

「貴方を10として測定不能です」

「………………」



718 :なのはルート――エピローグ:2008/08/04(月) 00:09:53 ID:F2zIEFo8
控え目な騎士がここまで言うのだ
それはもう……相当なレベルと見て間違いない


「うん、、、何となく分かったよ」

この騎士のマスターである
失礼な事はあまりしたくないが、そこまで無茶苦茶な事をする人物
この騎士の許しが得られるのならば、、

「じゃあ是非とも会ってお話しないとね…」

「お手柔らかに――」

職業柄、少しお節介をするのも吝かじゃない

「でもいいの? セイバーさんのマスターなんでしょう?
 自分で言うのもなんだけど私は厳しいよ?」

「甘く見ないで欲しい!」

「っ!?」

ガバっと詰め寄ってくるセイバーに心底驚く高町なのは
物静かな騎士がこんな顔をするなんて、、まるで予想だにしなかった

「その厳しい貴方でも矯正しようが無いほどのレベルです……
 言葉はおろか相応の体罰を以ってしても――実際に死にかけても改善しない筋金入りの難物なのです……
 ですから、、もし教鞭を振るうのでしたら、死なない程度にお手柔らかに、と」
拳を握って、捲くし立てるように次々と言葉を放ってくるセイバーに
あんぐりと口を開けて防戦一方のなのは

「全く……今回、ナノハ――貴方と共に戦えて久しぶりに気兼ねの無い連携戦を堪能出来た…
 いつ以来でしょうね…こんな開放感は
 パートナーの身を気にせず戦えるというのがこれ程に有意義な物であったとは、、
 そうですね……ナノハと引き合わせた際にシロウ、、マスターには貴方の爪の垢をそのまま飲んで貰わなければ――」

(う、うわぁ……)

なのはの目は見開きっぱなしだ
……クソミソである
まさかこの少女がここまで人の事をコキ下ろすとは思いもしなかった
眉をハの字にして腕を組みながら、う~…と唸り
そのマスターを罵倒する騎士に唖然としっ放しの高町なのは

、、、、ではあったが――――そう

(………………………)

(そっか………)

聞き手役に徹しながら
知らず自身の口に
笑みがこぼれてしまっている事に気づく魔道士
魔道士でなくとも……気づく筈だ

顔をしかめながらぶつぶつと文句を言い続ける騎士
その声色が―――とても暖かい  


719 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/04(月) 00:12:21 ID:13puzDcD
支援


720 :なのはルート――エピローグ:2008/08/04(月) 00:12:22 ID:F2zIEFo8
こんなに優しく、温かい思いを込めて話されてしまっては誰だって気づいてしまう
そのマスターという人がこの少女にとってどういう存在なのか

まるで、この世で一番大切にしているものに触れている――
そんな幸せで嬉し気な気持ちが滲み出てきているようで
その表情が、、、本当に綺麗で……
話を聞きながら少し見とれてしまう高町なのは

本当に綺麗だったのだ――
瑞々しくて、幸福に満ち溢れていて

それは自分に似ていると思っていた騎士の、自分には無い一面であった

なのはには知る由も無い――
自分に未だ芽生えた事の無い、その思い――

一人の人間をただひたすらに愛する、という事
狂おしいほどにその相手一人を求め
己の全てを捧げたいと思う事 

既存の理想と秤にかけてさえ、その者を想う心が勝ってしまう…

この少女をして、「己が願いよりもシロウが欲しい」と――そう言わせてしまう程の

――― 恋焦がれる、という事 ―――


その表情を眺めながら高町なのはは思った
自分にはいるのだろうか?
頭に浮かべるだけでここまで幸せな気分になれる――そんな人が

ユーノくん…
フェイトちゃん…

子供の頃から助け合い、自分を支えてくれた
とても大切で――いなくなる事なんて考えられない友達

はやてちゃん…
ヴィータちゃんや、ヴォルケンリッターの皆…

いずれもかけがえの無い仲間で
この人たち無くして今の自分は無い

スバル…
ティアナ…
自分の手がけた教え子たち…

自分を慕ってついて来てくれる、可愛い後輩たち
このコ達がもし戦場で還らぬ事になったら自分は――多分、泣くだろう


ヴィヴィオ………

あのコを助けるため――
自分は一度、公務の身でありながら私情を優先した
あり得ない事だった…
頭の中がぐちゃぐちゃになって……
自分の信ずる道も責任も二の次になってしまった


721 :なのはルート――エピローグ:2008/08/04(月) 00:13:19 ID:F2zIEFo8
もし次、同じ事が起こって
ヴィヴィオを助けるために周りを犠牲にしなければいけない時
自分は決して私情を優先しない事を心に固く誓っている

でも――どうなのか……

本当にそういう場面に直面したとして、、、私は―――


―――――私は


「―――― ………痛むのですか?」

「………えっ!?」

フリーズする高町なのは
別の事に思いを馳せていた所に声をかけられ、咄嗟に反応出来なかった

「あ、………えと、、うん……無茶苦茶な人だよね、その人…」

「やはり疲れているようですね 
 すみません……私の方が話に夢中になってしまって、、」

「ううん、セイバーさんとお話しするの、楽しいよ?」

それはお世辞ではない
この、どことなく自分に似ている騎士とのお喋りは
なのはにとって新鮮で楽しかった

セイバーにとっても同じ
尊敬するマスターはいる
主従を尽くしてくれた者もいた

だが、自分と全くの対等の位置に立って
あくまで同じ目線で
時にはケンカをして
時には支え合う

彼女にとっては初めての感覚であったのだろう

その―――友達、というものが

他愛のない話をした
自分の事や友達の事を話した
色々な事を話した

なのはも今や
目の前の少女が本当に現世の人間でない事――
何か超常の存在である事は理解している

だが、その事は―――また、今度ゆっくり聞こうと思った

この次――目を覚ました時にゆっくりと……


――――――


722 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/04(月) 00:15:20 ID:TPWwY3kA
支援


723 :なのはルート――エピローグ:2008/08/04(月) 00:15:23 ID:F2zIEFo8
談話は長くは続かなかった
高町なのはの肉体が再び強烈に休養を欲し
彼女に抗えぬほどの睡魔が訪れる

「ごめん……少し、、寝ていいかな…」

重くなる瞼をしばたかせる魔道士が
抵抗し難い睡魔に身を任せてしまう前に
一言、セイバーに断りを入れる

「ええ――お休みなさい…ナノハ」

「はは、、流石に疲れてるみたい、、、
 起きたらまた……お話聞かせて」

「―――――、、ええ」

既に夢現に入っているかのような
小さくはっきりしない声で問答するなのはに微笑を返し
少女は彼女に毛布をかけ、眠りを促す

気持ち良さそうに身を委ね
目を閉じ、数刻を待たずして……すぅ、すぅ、――と、、

まるで電源が切れたかのように寝息を立ててしまう高町なのは

(無理も無い…)

現世の人間では願っても覗く事すら叶わぬ
神代の激戦―――それに身を投じ、戦い抜き、生き抜いた

硬い寝床にその身を横たえる高町なのはを見やる少女……
本来、健康で血色の良い筈の顔が落ち窪み、心なしかやつれている
そのか細い体には、傍から見てもまるで生気が通ってない――まるで病人のようだった

当たり前だ……

彼女はヒトの身でありながら一晩で英霊と二連戦したのだ
まさに精魂尽き果てたのだろう
疲労困憊の痛々しい姿を、まともに正視出来ず目を逸らしてしまうセイバー

彼女にはもっともっと休息が必要だった―――

額のタオルを絞って変えてやるセイバー

そして……

魔道士が完全に寝入るのを見計らってから――

「…………っ!」

フラリ、と立ち上がる白銀の肢体
その足元が、まるでおぼついていない
ポタリ、ポタリと―――少女の額から汗が滴り落ちる

高町なのはを前に穏やかな表情を崩す事なく、談笑をしてきた少女
自分とて魔力を限界まで出し尽くしてしまった、という事を隠しながら、、、

魔道士のそれと違い――
サーヴァントにとっての魔力は……命そのもの


724 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/04(月) 00:15:54 ID:13puzDcD
支援


725 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/04(月) 00:16:20 ID:XF7K659v
支援


726 :なのはルート――エピローグ:2008/08/04(月) 00:16:44 ID:F2zIEFo8
この場にて…
限界を超えて、死に瀕していたのは高町なのはだけではない
むしろセイバーの方が、より深刻な状態であったのだ

だが彼女は、魔道士が峠を越して意識を取り戻すまで――
それを見届けるまで倒れるつもりも、こんな姿を魔道士に見せて心配させるつもりも毛頭なかった

この魔道士の無事を……回復を認め、全ての憂いを絶ってから―――


「――ナノハを頼みます」

<allright>

床に置いてあるレイジングハートに彼女は別離の言葉を告げたのだ

自分と共に行くと言ってくれた彼女――
だが、セイバーは絶対にそれを承知するわけにはいかない
彼女を同伴させるという事は、自分の戦いに魔道士を巻き込むという事

言うまでもなく此度の戦いに彼女を巻き込んだのは自分…

その挙句、なのはは負わなくても良い傷を負い、こうして地に伏せっている
彼女を再びこんな目にあわせてしまう事など、セイバーは絶対に了承出来ない
聖杯戦争とは謂わば参加者各々の私闘である
その私事に関係の無い者を巻き込むなど――
騎士として恥すべき行為に他ならないのだから

無防備な彼女を残して去る事には当然、危惧を抱くセイバーであるが
このような山小屋では人の目につくかどうかも怪しいし、彼女の敵に発見される確率は低いはずだ
そして、ケモノや魔獣が跋扈していたとしても
この魔杖――レイジングハートが簡易結界を張って防ぎ、彼女を起こしてくれると言っている

むしろ自分がここにいては逆効果なのだ
他のサーヴァントにその身を感知されて襲撃される恐れがある
そして、こんな状態では他のサーヴァントからなのはを護って戦うなど不可能――
今度こそ彼女を死なせる事になる


「ふふ、このような気遣い……
 貴方に聞かせたら、また叱られてしまいますね」

それを素直に話した所でこの魔道士は納得すまい
むしろ、そんな言い方をすれば逆に食いついてくる
困ってる時はお互い様、とばかりに助力を申し出てくるはず

こんな所は本当に――マスターに似ている

だから――騎士は黙って出て行かざるを得ない


「はぁ、――――はぁ………」

ふらつく身体を引きずるように……騎士は山小屋の扉を開け放つ

一面に広がる岸壁と渓谷
切り立った崖の下からは針葉樹林による緑の絨毯が一面に広がっている


727 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/04(月) 00:18:20 ID:13puzDcD
支援


728 :なのはルート――エピローグ:2008/08/04(月) 00:18:38 ID:F2zIEFo8
苦笑する剣の英霊

これは、、冬木の地に戻るのに相当、手間がかかりそうだ――と、、

そしてその小屋を後にする前に
騎士はもう一度、振り返る

部屋の奥……深い眠りについている一人の魔術師
否、魔道士に向かって一言―――

「必ずまた会いましょう……タカマチナノハ
 この剣にかけて――約束です」

――別れは言わない
――いずれまた再会しよう
――この素晴らしき友と

その思いを胸に秘め、

エースオブエースと騎士王の道はここで一先ず別れ
別の道を往く事になる

本来、交わることの無かった二人の英雄の邂逅

その物語は―――幕を閉じた


だかしかし、それは
この世界で繰り広げられる事になるであろう
血で血を洗う壮絶な闘争劇の――


―――序章に過ぎないのかも知れない


無限の欲望の手によって起動した神々の遊戯版が
次の駒を選別すべく、軋みを上げる

狂気の愉悦を称えたこの遊戯――

次に舞台に上がるのは誰なのか……


カラカラと、まるでしゃれこうべの哂いのような音を立てながら起動する選別の祭壇
答えは、誰にも、、、知る由は無い


――――――

「……………」

「……………」


そして時は今、―――


魔道士が、騎士の少女と別れた山小屋にて


729 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/04(月) 00:19:33 ID:13puzDcD
支援


730 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/04(月) 00:19:41 ID:XF7K659v
支援


731 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/04(月) 00:21:27 ID:13puzDcD
支援


732 :なのはルート――エピローグ:2008/08/04(月) 00:21:35 ID:F2zIEFo8
「――――取りあえず……話、長っ!、、」

血みどろのレクリエーションを終えた魔法使いが二人
ズタボロの身体を横たえながらの情報交換の真っ最中であった

「話を聞かせる気があるのアンタは?
 途中四回ほど、眼を開けながら寝てました私スミマセン」

「あ、貴方が詳しく聞かせろって……!」

「どう考えても騎士とアンタのGirl,s beの部分とかいらないでしょうが
 もっとよく考えて話作りなさい  

そんなだから、ことごとく説得失敗するのよこのバカメ」

「っ……!」

「全く、貴重な時間を無駄にした……この話で分かった事と言えば
 貴方がその仕事に破滅的に向いてない、って事くらいじゃないの…
 ほら、バンザーイ! 薬塗るから」

「言いたい放題言わないでッ……私だって必死にここまで、、、」

互いの身体に乱暴に手当てを施しながら
かつてセイバーと心温まる話をした場所で
それとは全く似ても似つかない、腹ただしい罵倒を飛ばしてくる蒼崎青子


「それで―――サーヴァント……セイバーとはそれっきり?」

「う、うん……私が起きた時にはもう、、」

「ふん、、」

微かに落胆の表情を浮かべる高町なのは
彼女が再び目を覚ました時――少女の姿はなく
自分と袂を分かってしまったと理解した時、とても悲しかった

やるせない記憶を思い出すなのは
その後、悲嘆にくれつつも身体と魔力の回復を待って
この山小屋を基点に付近を調査していて
この物騒なマジックガンナーにイチャモンをつけられたというわけだ

もっとも、その辺りの経緯など青子にとってはどうでもいい
問題なのは―――

(英雄王に騎士王? ……どおりで私の魔法にビビらない訳ね
 ウチの世界の上位の神秘と既に一戦交えてたってワケか――)

内心で驚愕するブルー
やはりこの娘、戦闘力に関しては予想を遥かに上回るものがあるという事だ

「ぢゃあ 私にやられた傷なんて蚊に刺されたようなもんだね やはは」

「貴方に一番こっ酷くやられたんだけど……ブラスターの後遺症も心配だし、、」


733 :なのはルート――エピローグ:2008/08/04(月) 00:22:41 ID:F2zIEFo8
青子の所持していた怪しげな処方器具のおかげで
本来なら焼き付いて使い物にならなくなる筈の魔力回路が、身体が
恐るべき回復を見せている

「ごめんねー……でも、まあ効いてよかったわ
 異世界の人間だから心臓の位置が逆です、とか言われたらアウトだった」

「確かに……何をされたか分からないけど、、」 

「分からなくていいわよ
 ブサイクな性悪メガネの研究成果なんて私だって深く突っ込みたくないし」

「????」

分からない言葉で話す青子に、なのはは首をかしげてしまう

(と、とにかく……あれほどの攻撃魔法を使えて治癒術にも秀でてるなんて、、
 言ってる事はデタラメだけど、やっぱり凄い人だ…)

(むう、、姉貴のとこからガメてきた人形処方がこんな所で役に立つとは――
 あとで肉体変異とか起こらないでしょうね…? 何てったって姉貴のだからねぇ、、)

各々、思案にふける両者

「そういや、アナタ 何で私にブラスターっての使ったのよ?」

「え……?」

思い出したかのような青子の質問に
ギクリ、という表情を見せるエース

「おかしいじゃない? 英霊相手にも温存しようってくらい危険な技を
 私相手には気前良く使ってたようだけど」

「あ、、う、うん……それは、、、」

言えない――

教導隊の偉大な先輩達の姿がフィードバックして
つい、本物の全力をぶつけてみたくなった、などと…
この目の前の人間のスチャラカぶりを見せられた後で、、
今更、そんな事が言えるはずも無い

「ちょっと……自信なくしちゃって、、」

「自信?」

なので、珍しく口から出た適当な言葉でお茶を濁そうとする彼女

「一撃必殺のつもりで磨いたスターライトブレイカーを立続けに破られて、、
 もっと強く、もっと高出力で、っていう思いが爆発しちゃったんだと思う……
 結局、青子さんにも破られちゃったわけだけど」

「――――そっか」

「うん、、」

兎に角、気を使いまくりの高町なのはである


734 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/04(月) 00:23:19 ID:13puzDcD
支援


735 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/04(月) 00:24:11 ID:f6KaPd6L
紫煙


736 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/04(月) 00:25:07 ID:13puzDcD
支援


737 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/04(月) 00:25:51 ID:XF7K659v
支援


738 :名無しさん@お腹いっぱい。 :2008/08/04(月) 00:26:01 ID:Xi6Ytm2E
やっと読むのが追いついた支援


739 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/04(月) 00:27:58 ID:dUQE4tI2
支援


740 :なのはルート――エピローグ:2008/08/04(月) 00:28:44 ID:F2zIEFo8
何せ彼女はここまで豪放無法な人間と接した事がない
方向的にはアリサバニングスタイプなのだが――

アリサは所謂ツンデレで、このアオアオは根っこの所が外道なのだ
どこの引き出しを開けて応対すれば良いのか未だに分からないエースであった

「要は――――八つ当たりじゃねーか」

ガリ、!!

「痛いっ!!!?」

対応を間違えればこうだ、、

只今、薬を塗られていた両脇
そこにある傷を思いっきり、爪で引っかかれ悲鳴を上げてしまう

「ぼ、暴力は止めてよッ!」

「ムシャクシャしてやった…今は反省してるって類の言い訳と同じじゃないのソレ?
 そんな事で人に大砲ぶっ放す奴が暴力云々で指図するな」

「次やったら本気で怒るよ…?」

「怒りっぽいわねぇ、、情緒不安定にはイリコの味噌汁が良いと聞くわ」

「……ッッッッッッ!」

終始、こんな感じである
自分のような性格の人間の天敵とは、こういう人なんだなと
つくづく骨身に染みる高町なのはであった

本局の人間が見たら卒倒してしまうだろう
あのミッドの空の英雄――
誰もが尊敬と恐れを込めて称えるエースオブエースが
今、完全に小突かれ、振り回されているのだから

「ところでもう一度確認するけど――」

青子が、唸りながら睨み付けてくるなのはを適当にあしらいつつ問う

「英霊と戦ったのね? アンタは…
 一方的にやられたわけじゃなく、ちゃんと戦いになったわけね?」

「うん……でも、互角の闘いだったとは思わない
 地力では完全に上をいかれてた、、」

真面目な話にシフトした――
その雰囲気を感じ取り、おふざけモードから復帰する両者

「そりゃ奴ら、人間超えてるからね……根本的な部分で上をいかれるのは仕方がないわ
 でも――――攻撃は効いたんでしょう?」

「うん……ベストショットを普通に防御されてたから
 効きは薄かったと思うけど、、確かにダメージは与えてたと思う」


741 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/04(月) 00:29:41 ID:13puzDcD
支援


742 :なのはルート――エピローグ:2008/08/04(月) 00:30:02 ID:F2zIEFo8
「…………………」

口元に手を当てて考え込む蒼崎青子

(やっぱり、、そういう事…?)

英霊に―――神秘に攻撃を通した
サーヴァントの対魔力Aをブチ抜いた、という事実

自分の使う魔法以外
この世に現存するあらゆる魔術は騎士王の影を突破できない
ならば、答えは簡単だ

同じ魔弾使いでありながら、、
何故かこの相手の「魔法」を見た時、胸くそが悪くなった
生理的嫌悪が先立ち、何が何でも否定してやりたくなった

――――アナタのそれは魔法じゃない、と

今までの話を総計して――
この娘や、その世界の住人の使う「魔法」とやらが
青子の考えている通りのものだとしたら、、、

(水と、油、ね……)

それはどこまでも相反し、反発し合うモノであろう

それを表情には出さないミスブルー
だが、あまり芳しくない仮説が立ってしまった事に心の底で焦燥を覚える

「ときになのは―――貴方の所属する、その管、、」

「時空管理局…?」

「そう、それ―――アナタはその下で動いてるのよね?」 

「うん、、」

「じゃあ、今ここで起こってる事……上に揚げるワケ? 
 英霊や、私の使った―――魔法の事とか」

「………」

何気ない質問だった
少なくとも、なのはには他愛の無い質問に聞こえた

その質問に隠された意味、その声に微かに込められた危険な響きに――
なのはは気付けない

「そうなると思う……まだ上手く報告書に纏める自身ないけど」

気付けないままに対話した
背後で自分に処置を施してくれている魔法使いに背中越しに答える彼女

「正直、話が複雑で私一人の判断では動けない…
 もし戻れたら一度、上の指示を仰がないと――――、、」

故に――


743 :なのはルート――エピローグ:2008/08/04(月) 00:31:30 ID:F2zIEFo8
「……ッ!!!!??」

高町なのはは突然
自身の心臓を背後から貫かれたかのような錯覚に襲われ――

そして後方で、彼女のたくし上げたシャツの下をまさぐって
軟膏を塗りたくっている青子の腕を、、、勢い良くバシィっと払いのけていた

「――――痛いじゃないの」

そのまま、前方――
レイジングハートのある位置まで転がり
なのはは杖を片手に臨戦態勢を取った

「どういうつもり……?」

「何が?」

眼前にて向かい合う両者

その常に称えた笑みを完全に消し去り――
狼のような鋭い視線をこちらに向けてくる、ミスブルー

それに対して、なのはも立ち上るほどの戦意をぶつける

「それはこっちの台詞だよ……」

「だから何がよ?」

「どうして……殺気をむけるの、、?」

「いや――別に」

ふざけている――そんな言い分は通用しない

今、背中越しに感じた殺意は紛い様のない本気のものだった
幾多の戦場を駆けてきた高町なのはがそれを読み間違える筈がない

スゥ、、と目を細めてミスブルーに問いかけるエースオブエース

「青子さん」

「………はぁ、、」

事と次第によってはもう一戦やらかす事も辞さない
そんな目で意を叩きつける高町なのはに対し
青子はため息を一つ――

「いや何ね……ちょっと愕然としたというか
 やっぱりアナタ、少しおつむが足りないんじゃないの?って」

「意味、、分からないよ……」

「分からない? 本当に?」

くしゃ、っと頭を掻き毟るミスブルー

「それがどれほど軽率な事か分からない………だから致命的なんだって言ってるの」

ため息交じりに呟いた



746 :なのはルート――エピローグ:2008/08/04(月) 00:33:40 ID:F2zIEFo8
こちらの手から逃れ、迎撃の構えを取っているなのはに対しての最後の言葉はもはや、ぼやきに近い

「なのは――歴史のお勉強」

「………え?」

「フロンティアを気取る余所者がネイティブに対してする行動、仕打ちは場所、時代を問わず終始一貫している
 ―――さて、どうするでしょう?」

「……………」

まるで自分を試すような青子の口調
威圧されている感がどうしても抜けなくて
なのはの声も固くなってしまう

「ひょとして……管理局の事を言っているの?」

無言で睨み合う両者
その読めない表情の裏にある意図を必死に探ろうと苦心しつつ
高町なのはは注意を払いながら、一言一言を紡いでゆく

「言っておくけど、時空管理局は征服とか、無茶な武力介入はしないよ…
 ちゃんと人の話は聞くし 過ぎた力の暴走や破壊を止めるために介入はするけど
 それは危険な力を抑止、保護するだけ、、必要以上の関与はその趣旨じゃない…」

「保護、ね―――じゃ、対象がその保護を拒んだらどうなるの?」

心の奥底まで覗き込んでくるようなミスブルーの視線に
チリチリと全身が総毛立つ思いに駆られつつも、臆することなく答えるなのは

「………なるべく現地の人達との軋轢や摩擦を起こさないように対処するから
 相手やその付近に気づかれないように陰ながらに対応する、と思う…」

「ナルホド―――模範的な答えね
 そしてハネ返ったマヌケは気づかないうちにビーカーに入れられてるってワケ?」

「………そんな風に断固とした姿勢を取ってくる人も中にはいるけれど
 仮に戦闘になったとしても、ギリギリまで相手を傷つけないよう留意する
 あくまで対象の保護が最優先だから、、、そのための非殺傷設定だよ…」

(―――――はぁ……)

ため息の連続だ
本気で気が重くなるミスブルー

(駄目だこのコ……やっぱり何も分かってない)

その 「保護」 という題目が――
まさにこちら側にとって死活問題だという事……

恐らくこの目の前の純真無垢な小娘はその保護とやらを嬉々として受け入れたのだろう
そしてその組織の管理化に入り、平和のために力を与えられ……
もとい、その力ごと飼われて尖兵として飛び回っている


747 :なのはルート――エピローグ:2008/08/04(月) 00:34:54 ID:F2zIEFo8
………少し尖った言い方になってしまった

お国のために働く警察や軍隊を
宇宙規模で果てしなく巨大にしたような組織――と考えれば

それなりに分かり易いか――

ならば単純だ
自分たちが、その公務に勤しむような連中と相性が良いか否かを考えれば答えは簡単
この胸クソ悪さにも説明がつく

この目の前の、正義を本気で信じている娘のように
その管理局とやらの「保護」を素直に受け入れる輩がこちらの世界にいるか…?

断言する
そんな奴は一人もいない

神秘とは人の手の介入を許さないから神秘なのだ
つまりはよく分からないモノだからこそ、力を発揮する

だが、、その管理局――
ミッドチルダの力とやらは、それとは全くの真逆の存在

発展に発展を重ねた科学技術――
それによって紡がれたプログラムにより
術式を技術化、体系化し行使される力

その技術は――
異次元間の航行や人体練成、、
つまりはこの世界における禁忌の領域

「魔法」に匹敵する程にまで至っているのだ

それほどの科学技術を持った相手に保護される
そんなモノと、こちらの世界が混ざり合えば――

秘匿に秘匿を重ね
この星に脈々と受け継がれてきた神性は白日の下に晒され
その技術に全ての秘なるモノが解明されてしまうかも知れない

そうなれば、その力は魔法じゃなくなる
この地球に魔法は、、魔法使いはいなくなる

どうだろうか―――

そこまでの介入をされた以上、抑止は動くだろうか?
一応、表面上は平和的な営みである以上
アラヤもガイアも静観を決め込むだろうか?

だが、無秩序は無秩序なりに
こちらにも最低限の律を守る機関は存在する

協会とか教会とか―――
あそこら辺は、この第三者の介入を決して許しはすまい

まあこんな風に、力を巡っての異世界間の交流は大概、ロクな結果を生み出さない

両者間に決して小さくない波紋、諍い――
最悪の場合は全面戦争もあり得るだろう


748 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/04(月) 00:35:46 ID:Yu3QvoVA
支援


749 :なのはルート――エピローグ:2008/08/04(月) 00:36:13 ID:F2zIEFo8
この魔法少女の言う時空管理局という組織
彼女の言葉が眉唾でないのなら――その規模、力は想像の範疇を超えている

太陽系は愚か、地球圏以外に他の知的生物の存在すら認知していない地球人類
その前に突如現れた、宇宙全域に広がる管理局という組織
まるで出来の悪いSFだった

目の前の娘の話だと、その管理局というのはそこまで物騒な集団ではないとの事

ただ、魔法使いの心に危惧が残るのは仕方のない事だろう――
物騒な対応をしないのは相手が従順だからであって、もしそうでない場合は……?
徹底的に抗う姿勢を見せた相手に対し、その巨大な力を持つ組織がどういう対応に出るのか…?

彼らの目には
手段を問わず、ただ頂に至る事を第一とするこの世界の魔術師はどう映る?
法やら秩序やらを重視する者たちにとって、むしろ物騒な存在はこちらではないか?

高町なのはは「魔法使いは大勢いる」といった
それは、このテの魔法使い――似たような武装をした連中がごまんといる、という事

この高町なのはレベルの敵がわんさか攻めてきた場合、、結構シャレにならない事態になる

いや、それ以前に――
SFのご多分に漏れず大気圏外からの殲滅兵器とか持っていて
それをぶっ放された場合、、完全にお手上げである

あらゆるifを想定し、、、考え尽くし―――

(は、、はは………何よコレ、、、)

げんなりしてしまうミスブルー

これではまるで、小学生の考えた荒唐無稽な妄想と変わらない
馬鹿馬鹿しい気分になってくる青子

とにかくあまりにも相手の事が分からず
それに大して情報が少なすぎて想像すら出来ない

この相手に本腰を入れられた場合、自分達は抗えるのだろうか?
否、抗う術があるのだろうか?

―――分からない

事態は深刻な所まで進んでしまっているのか?
ただの取り越し苦労なのか?

―――何も分からないのだから……

(何だか――重い話になってきちゃったわね……)

珍しく額に皺を寄せ、深く考え込むミスブルー

そして青子の動向を逐一見逃さぬよう
その表情を凝視するなのは

エースオブエースの視線に晒されている事をまるで無視して
考え込んだかと思えば、ため息をつき、
空気の凍るような表情を見せたと思えば、う~…といったダレ顔になる


750 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/04(月) 00:37:19 ID:13puzDcD
支援


751 :なのはルート――エピローグ:2008/08/04(月) 00:37:28 ID:F2zIEFo8
その百面相をまじまじと見ていたなのはが、、声をかける

「青子さん、、」

「考えてる……話しかけないで」

決まりが悪そうに青子の方からつい、と目を逸らす

ガシカシ、と頭を掻くミスブルー

完全に魔法使いの――
蒼崎青子の専門から大きく外れる事態になってきた

(イマイチ実感が沸かない……ジェダイの騎士とか出てこないでしょうね?――)

そうだ
ファンタジーとSFが混ざり合うようなものだ
流石のミスブルーも全ての事態を的確に把握できるはずがない

(そもそも私、自分達の愛する世界を護りたい!とか、、ガラじゃないのよね
 あまり真面目な方でもないし)

それはある意味、達観した有り様だっただろう
超越した力を持つ人間が、過度な思い入れで行動すれば
それはときに悪い結果に転がってしまう

だからこそ、浮世の事にはなるべく関与しないようにしてきたのだが……

「ま、いいや」

だが、それでもこれだけ大きな事態に関わってしまった以上――スルーは出来ない

「さて、これからどうしようか……当てはあるんでしょ?」

「いや、当てはこれから、、」

「どんくさい公務員ねぇ……」

「…………放っといて、、」

自分は魔法使いなのだから
昔のような臭いノリで事に当たるのも悪くはない

「私も付いてったげる」

「え”?」

「………」

「………」

突然に切り出された同行の意
いつぞやの騎士に対し、自分が申し出たそれを
今度は目の前の女性から自分が受ける事となった高町なのは

それはあの時と同じ、判断としては悪くない
前後不覚の現状で、一人よりは二人で行動した方が間違いなく安全だからだ

だというのに、、、


752 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/04(月) 00:38:18 ID:Yu3QvoVA
支援


753 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/04(月) 00:38:44 ID:13puzDcD
支援


754 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/04(月) 00:40:47 ID:13puzDcD
支援


755 :なのはルート――エピローグ:2008/08/04(月) 00:41:59 ID:F2zIEFo8
「どうやら異世界の魔法少女は礼儀を知らないと見えるわね……」

「う、ううん!……ち、違うの、、そうじゃなくて、、」

一瞬、表情が強張ってしまった高町なのはに対し
こめかみをピクピクさせるミスブルー

流石のマジックガンナーも、厚意を向けた相手に
あからさまにイヤそうな顔をされて深く傷ついたようだ

「サーヴァントには一緒に行こうとか言って泣きついたんでしょうが…
 心細いアナタのお守をしてやろうという私の親切心が分からない?」

「べ、別に泣きついたわけじゃないよ……」

なのはの美徳は、人を選ばず公平に他者と接する事が出来るところである
だから本来ならばこの申し出に対し、喜色を示して対応しているはずなのだが――


「じゃ、取りあえず―――」

「え、、? あの……」

何を思ったか、目の前の長髪の魔法使いはその簡素なTシャツをおもむろに脱ぎ出し
その一糸纏わぬ姿をなのはの前に晒していた

「早くしなさい ほら、こっち来て」

「ええと、、――――――な、何を……?」

目の前のスレンダーで無駄な肉の無い裸体を全く隠さず、何かを促すブルー
その意図が分からず……そして何となく目のやり場にも困って
しどろもどろになるエース

再び、こめかみにピキっと青筋の立つ音が、、

「こ・れ・を・!! 塗れっ! って言ってるのっっ!! 」

「え、、、あ、……」

先ほどまでなのはの傷口に処されていた軟膏を指差して青子はがなり立てる
なのはのACSで背中から岸壁に叩きつけられた青子の傷もまた
処置しなければならない重症であった

「ああもう、イライラする!! 自分がつけた傷でしょうが! それくらい察しなさい!!」

「そんなの言ってくれなきゃ分からない……! 青子さんは言葉足らなさ過ぎだよ!」

「この場面で私が服を脱いで他に何があるってのよ!?
 私が小娘にハダカ見せて喜ぶ変態に見えるのかっ!?」

そうだ
喜色を以って対応する筈の高町なのはだったのだが

それは――やはり誰にでもある事なのだろう

はっきり言って、、高町なのはは蒼崎青子が苦手だった、、、


756 :名無しさん@お腹いっぱい。 :2008/08/04(月) 00:43:21 ID:Xi6Ytm2E
支援


757 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/04(月) 00:43:27 ID:13puzDcD
支援


758 :なのはルート――エピローグ:2008/08/04(月) 00:44:07 ID:F2zIEFo8
(ア、アリサちゃんを常時怒らせたようなものだと思えば、、我慢できなくもないけど…)

礼儀正しさの見本のような彼女である
ここまで無礼で無遠慮で、人の領域をドカドカ踏み荒らす人間を前にしてはやはり戸惑ってしまう

謂れの無い叱咤に釈然としないものを感じながら
塗り薬片手に、暴虐ブルーに奉仕するエースの中のエース

対して青子の方は、ぶつぶつ文句を言いながら
存外にもこの目の前の娘の事を気に入りだしていた
根性があって、真面目でからかい甲斐のある―――玩具として、であったが、、

それに何というか
まるで正義を本気で信じていた学生時代の恥ずかしい自分を見ているようで
Sっ気が刺激され、ついイジりたくなってしまうのだ

同じような世界を生きていながら
昔、自分が置いてきたものを今もなお持ち続けている異世界の魔法使い

旅のお供として、これ以上の肴はない
退屈のしない道中になりそうだった

「じゃあ……塗るから、、動かないでね」

「痛くしたらぶっ飛ばすわよ
 ああ、それとそのツインテールが腰に当たって気持ち悪い
 切りなさい  今すぐ」

「…………」

―――――― ガリリ、ッッ!!!

「きゃひィッ!!!???」

途端、青子がシメられたニワトリのような悲鳴を上げる

「ごめん……痛かった?」

「か、、――――こ、、こ……」

予想だにしない高町なのはの襲撃
そのあまりの激痛にビクン、と痙攣させる青子先生

「そうだね……傷口を引っかかれるのってとっても痛いよね、、
 その痛みが分かるなら、二度と他人にそんな事しようなんて考えないし
 あと、簡単に人をぶっ飛ばすとか蹴っ飛ばすとか、、強い言葉を使わないで
 それから――あ、動かないで青子さん  また手元が狂うから」

常時開放型の青子も恐ろしいが
突然にスイッチが入ってしまうなのはもまた、負けないくらいに怖かった

ベッドの上でのたうち回る青子を押さえつけて
冷淡な視線を向けながら説教を落とす教導官

先程のお返しに、と、傷を引っかくどころか捻りを加えてエグっていった
なのはの返礼=倍返しはもはやこの世の理の常識である

物静かで、とてもそんな風には見えないが―――
高町なのはもまたS属性持ちであったワケで、、


759 :名無しさん@お腹いっぱい。 :2008/08/04(月) 00:45:11 ID:Xi6Ytm2E
S支援


760 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/04(月) 00:45:27 ID:U5v9J0dV
サドマゾ支援


761 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/08/04(月) 00:45:40 ID:13puzDcD
支援


762 :なのはルート――エピローグ:2008/08/04(月) 00:46:29 ID:F2zIEFo8
「このガキ! 歯を食いしばりなさいッ!!」

上に乗っかっていたなのはを押しのけて青子がガバっと起き上がる

「その若さにして総入れ歯になる覚悟は既に出来てるワケだ!
 明日の朝食は何がいい? 噛めない顎で食べられるモノを用意してあげるわ!」

跳ね飛ばされ、ベッドから転げ落ちて床に叩きつけられるなのはだったが
そのまま無理なく受身をとって、中腰の姿勢で相手を正面に構える

「そんな心配しなくていいよ……朝食くらい自分で作れるからっ、、 バインドッ!!」

山小屋に響くドタンバタンとした喧騒は
もはや何度目になるか分からない魔法使い同士の取っ組み合いの音、、

セイバーとは全く逆のベクトルになるが――これはこれで良いパートナーなのかも知れない……

この後、暫く彼女たちは行動を共にするわけであるが
その道中は終始、こんな感じなのであろう
だが、、喧騒と戯れ交じりの中にあって――青子の思考には未だ拭えぬ陰があった

―――この娘の世界と自分達の世界は、決して関わるべきではないと思う

閉鎖的な意見と言ってしまえばそれまでだが
秘匿された世界、その頂点に位置する魔法使いが
その魔法を無遠慮に暴かれる事態を避けたいと思うのは当然の事

それに……もしこの交わった異世界の住人たちが
自分たちの世界を、宝の山を掘り起こすかの如き認識で
スコップ片手に堀り起こしにくる連中であったならば――

その介入を、無礼を
否、、その侵略を決して許すわけにはいかない

今は悪ふざけのノリで高町なのはと話してはいる彼女ではあるが
自分の立ち位置、彼女の立ち位置を考えた場合――
恐らくこの先、迎合の道を往く事は無いのかも知れない

いつか――本気で 

――― 今度は命を賭けて戦うことになるかも知れない ―――

ミスブルーは飄々とした笑みを崩さない
その瞳に、暗雲と漂う暗い感情を映すことは無い
時が来るまで、決してその隠した牙を表に出さずに彼女は高町なのはと共に行く

(このコを見る限りじゃ取り越し苦労だと思うけど……
 多聞に漏れず、色んな人間がいるからね、、、どの世界にも――)

各々の思惑が錯綜するこの世界にあって
今宵、魔法使いたちの夜が――

人知れず明けていくのであった

――――――



765 :リリカルブラッド:2008/08/04(月) 00:49:57 ID:F2zIEFo8
終わりですよ

今後、物語を肉付けするために
幕間を二~三挟んでから第二章・フェイトルートに突入するつもりです

遅筆にして冗長なのは変わらずですが

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最終更新:2008年08月04日 13:56