「ぬお!?」

待機室の空気は暗く澱んでいた
一歩足を踏み入れたチンクが思わず唸るほどに

「あーあ辛気臭せー!」

ソファに寝ころがったノーヴェがヤケクソ気味に叫ぶ
ノーヴェが投擲した雑誌-月刊「プロレスの友」-が部屋の隅で体育座りをしたガリューに
ポコンと当る
ガリューは全く無反応
よくよく見れば背中を煤けさせたガリューの周囲にはなにやら瘴気が蟠りそこだけ地獄の
最下層のごとき異界になっている

「一体どうしたというのだ?」

「アレだよ」

壁に埋め込まれたモニターを指差すセイン
そこには満天の星空に舞う天馬に騎乗した騎兵の英霊とその腕の中で顔を輝かせるルーテシア

「ガリューよりはやーい!」

マイクがルーテシアの弾んだ声を拾う
ガリューを包む闇が一段と濃くなった

「成程ライダーにお嬢様を取られて落ち込んでるというわけか」

「話は聞いた、星野はシベリア行きだ!」

ガラリと壁を開けてスカリエッティが出てきた

「な、ドクター!いつからそこに?ってかなぜそんなところに隠し部屋が?」

「もちろん君達を盗撮するためだ!」

即答であった
脱力し両手を床につくチンク
まさにorz

「大丈夫だガリュー君、私にいい考えがある」

そのときドクターの背後に赤いロボットが見えたような気がしました(チンク談)

「むこうが乙女心をときめかせるペガサスならこちらは超合金魂を揺さぶるスーパーマシン
で勝負だ!」

懐から取り出したリモコンをポチッとな
ソファの下の床がどんでん返しに回転し東映メタルヒーロー御用達の側車付きオートバイが姿
を現す

「これぞガジェットの廃材を元に一晩ででっち上げたサイドファントム(レプリカ)!」

床下からかすかに聞こえるノーヴェの悲鳴をスルーして胸をはるスカリエッティ

「そういえば待機室の真下って…」

「浄化槽です」

セインの問いに淡々と答えるセッテ

(ノーヴェ、お前の犠牲は無駄にはしない…)

チンクは心の中で夕焼け空に笑顔を浮かべたノーヴェ(イメージ映像)に誓った

「では楽しんできたまえ」

ガリューの運転するサイドファントム(レプリカ)の側車に収まりドライブに出発する
ルーテシア

「上手くいくでしょうか?」

「問題無い、仕込みは完璧だ」

黒い笑いを浮かべるスカリエッティ
チンクの背筋を何かが駆け抜けた

「何をする気ですか?」

「“吊橋効果”というものを知っているかね?」

「まさか…」

再び懐からリモコンを取り出しポチッとな
道路を飛び出し谷底に向ってダイブするサイドファントム(レプリカ)

「ドクタァァァァァァァァツ!」

その後ルーテシアはバイクを見るとパニック障害を起こすようになったという

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最終更新:2008年08月30日 17:38