―――それは小さな出会いでした…
―――それは小さな出会いだった…
―――それは小さな出会いやった…

だけどその出会いは昔の私達に大きな影響を与えてくれた、そして今の私達を形作る土台となった。

―――私が鉄槌に打ちのめされた時に
―――私が親友の危機に辿り着いた時に
―――私が嘘に踊らされすべてに絶望した時に

今でも脳裏に焼きつくあの姿

―――悲しくも温かい瞳とそして頼りがいのある背中を持つあの人
―――大きな力と優しい瞳を持ったあの人
―――如何なる絶望にも挫けず信念を貫こうとした人

そして私たちは教わった、彼から多くの、そしてかけがいのないものを

―――信念(エゴ)を貫く困難さ、だがそれを貫くための不屈の心(レイジングハート)を
―――強き力(バルディッシュ)のあり方を、そして優しさを
―――生き抜く意味、信念、そして彼から受け継いだちょっとだけの創造の力(シュベルツクロイツ)

彼は自分のことをこう言った。

―――正義の味方になれなかった、贋作者(フェイカー)と…

出会いは闇の書事件、私高町なのはが久々に黒星と言うのを味わい、私フェイト・テスタロッサ・ハラオウンが親友の危機に急ぎ、そして私八神はやてが家族の帰りをただ待っていた、そう今でも覚えているあの日に…

                             「受け継ぐこと」

守護者は目覚めた、セイギノミカタになれなかった英雄は再び目覚めた。それは本人が望んだ事、彼は救うために世界と契約した、その契約はまだ切れたわけではない…
己が信念を過去の自分に託しすべてを投げ打った男は目覚める。この世界を救うつまりはこの世界を破滅に導かんとする者を討たんが為…嗚呼、英雄は征く…

「再び生を受けるとは…まぁいい、答えは見つけた…なら始めよう」


―――フェイトの場合

「てめえ何者だ?この女の仲間か?」
鉄槌の少女は乱入者を威嚇する、振り下ろされた鉄槌は二振りの刀の一方によって防がれる、だが乱入者は何も答えない。

「ちぃ、何も言わずに斬りかかるか!」
少女の声にも気にせずそして一気に乱入者は切りかかる、振り下ろされる二振りの刀、少女はそれを受け止める…そして乱入者は始めて口を開く。

「生憎騎士とか気取ったことはないのでな…そういう事には疎い」
乱入者による斬撃は数を増し少女の鉄槌を傷つけてゆく、そしてその一撃がその少女の右肩を切り裂く、苦悶の表情を浮かべ、苦痛の声を出し、
たまらず少女はその場から離脱する。そして襲われた少女高町なのはは問う。
「あの、貴方は誰なんですか?管理局の人?」
だが乱入者は何も言わず、そのなのはとフェイトという少女をまるで認識しないように夜空に向けて飛び出した。だがフェイトは彼を追いかけた、
床に付着した血、私は分析する、彼は殺す気だ…いかなければ…止めなければ。

フェイト・テスタロッサにとってその光景は驚く、ビルの屋上で斬り合う男女、男はさっきなのはを助けた男、
女はなのはを襲った少女の仲間と思われる。なら敵はその女だったが…男も味方とは限らない。そして自分の所属を述べ投降を進める、
そして両者ともそれが眼中にないようにただ剣を振りかざしそして互いにぶつかり合う、私は衝動的に飛び込んだ、こんな事をやめさせる為に、
だけど一蹴された。へし折れるバルディッシュ…そして痛感する私は無力だと…

負傷したにもかかわらず、私を助けようとした親友の体から手が生え出る一本の手、苦悶の表情を浮かべる親友、そして男は二振りの剣をしまい、
一つの弓とそして一振りの螺旋状の剣を取り出し構える。剣を矢として放つよりも私は畏怖した、その剣「偽・螺旋剣」に内蔵されし魔力を…丸で周りの魔力がすべてその剣に宿るように…
そして放たれる矢、それは結界を砕いた。

「貴方は…一体?」
「お前は何の為に刃を振るう?」
「え?」
「答えはないか…」
男は夜街の中へと消えていった、私は何も出来なかった、親友を襲った存在に太刀打ちできなく、
そして男を逃がしたことを…だけどその男は「悪」とは思えなかった、町に消える彼の背中、ただの背中、
だがその背中はあまりに大きなものを背負い続けてきた…私フェイト・テスタロッサ・ハラオウンは思った。

―――なのはの場合

「成る程、救いたいと言うのか…取り込まれたものも、取り込んだものも」
男はあきれた口調で言う、男は言う、むしろ両方とも消した方が多くを救えるのではないのかと?私は否定する、それは絶対認められない
私の力は救うため奪うものじゃない、それに取り込まれたものは親友、取り込んでいる者は悲しんでそして助けを求めている。
私には聞こえる二人の嘆きが救いを求める声が、だからこそその男が考えているものを否定する、それは私自身のエゴかもしれない本当にそれは悪いことかもしれない…
だけど私は諦めない、私の心はレイジングハート(不屈の心)、どんな苦難にも困難にも挫けない怯えない怯まない負けない私が歩み続け人を助けるため折れない心。

「成る程…だが今の君に言えるか?この状況で?」
冷酷ともいえる現実的な問い、親友を取り込んだ存在の力は圧倒的だがそれでも不屈の心で立ち上がる、もしあれがなければ自分のあらんばかりのすべてをぶつけても乗り越えていったのだろう、「あれ」の原因、
それは今負傷した高町なのはを抱えている一人の男、褐色の肌、赤いコート、白い髪、「理想を抱いて溺死しろ」と私と親友のエゴを踏みにじったその男と戦った。何より自分を分かって欲しかったからだから
互いの意思をかけて衝突したそしてそれに敗北し、負傷した体をもってしても意思を変えずそして親友を救うためになのはは戦ったがこの身はすでに満身創痍、9歳の体はコワレカケテいたそれでもなのはは
信念を貫こうとする自分が自分である為のエゴを貫く為…


「昔お前のような男がいた―――」

男は話し始めた。

「お前みたいにすべてを救おうとした男がいた―――

「形が違えどお前と似たようなエゴを持った男がいた―――

「彼はそれを貫き、多くを救った―――

「だがすべてを救えなかった、何かを生かすことは何かを犠牲にしなければならない―――

「男はそれを憎み憎悪しながらも後悔しながらも突き進んだ、彼は自分のエゴの為に多くを救い続けた、大を生かし小を殺す―――

「10を救う為1を、100を救う為10を1000を救う為100を10000を救う為1000を―――

「そして彼は殺された、救いたい人達によって―――

「彼は絶望し、過去を恨んだ、エゴを押し通した自分に―――

「だが―――心の奥底にはあった輝きは光を失ってはいなかった―――

「ゆるぎない自分が未来を誓い、旅立った空は孤独にも似た自由、だけど引き返したくなかった―――

「果てのない理想を描いた…変わらない輝きを持っていたあいつの何もかもが報われて―――

そしてなのはは理解する。
「まさか貴方は…」
この人は…だが男は何も言わずに一方を見る、親友を取り込んだ存在…互いに見詰め合う。

「一つ…一つだけううん、二つ、いや三つ約束してください」
「何だ?」
「必ずフェイトちゃんとはやてちゃん、闇の書さんを助けて…そして貴方も必ず生きて帰ってきて…そしてもう一度私の話を聞いて」
「随分と難解な要求だな、その一つでも反故したらどうする?」
「なら私があなたを全力全開でぶっ飛ばします」
昔の私なら決して口にしなかった言葉、その言葉に男は笑みを浮かべる―――

「え?」
その顔は少年のように…夢を失っていない、諦めてない、それを追いかける優しい笑顔―――そして彼は二振りの刀を取り出し、取り込んだ存在と戦いはじめた

…彼は約束を守り、そして破った。


そしてなのはと取り込まれつつも自我を取り戻したフェイトは見る、男が、自身のすべてをかけたもの、血と憎悪、怨恨、
そして悲しみの果てにたどり着いた一つの究極の技…
迷い続けた旅路、そして受けた多くの傷その果てに探し続けた答えの一つ…


―――はやての場合

「もういい、やめて、お願いや!やめて!」

私は叫ぶ脳裏に掠めるヴィジョン、自分の家族が一人の男を死に至らせようとした、最初はその男を憎悪した大切な家族を傷つけそして奪おうとしたその男に、
だけど今は憎む気にはなれなかった。砕け散る二振りの刀、吹き飛ばされビルに叩き付けられる、そして打ち出される矢は闇の存在によって防がれる、だがそれでも挫けぬよう、
それは殺すためではない救うために。

「もう私はそんな事を望んでない!私は…」
その存在に必死に声をかけようとする、しかしその存在は頑なだった。
「主が気にすることではありません、主は覚めなき夢を…幸せな夢を」
たしかに片足がはまり込んでいる夢はとても心地よいものだった、今はなき父や母、そしてヴォルケンリッターの
皆が笑い会って食事をするそれは決してかなわないはずの願い…温もりずっと求め続けていたもの、だけどそれは…
「せやけどそれは夢や!夢と現実とちゃう!」
私は叫ぶ。そしてその偽りのヴィジョンは砕け散る。
「主!それは…」
抗議するような表情を浮かべるその存在…その存在の顔に触れる、暖かい。
「もうこれは終わらせなあかん、だからもう一度始めよう」
「でも私は…」
「貴方の罪は私も背負うせやから…貴方には名前をつけなあかん…共に生きるための大事な家族やから」

だからこそこの今を蝕む悪夢を打ち破って欲しい、私はその男に叫ぶ…「止めて欲しい」と男の返答、それは男から発せられる言葉…
そしてすべてを今ある黒き空間を書き換えるほどのもの、歯車と剣が突き刺さった丘、そして男はあらゆる武器、武具を持って戦う、
剣が砕かれ、砕かれた刃が自身を傷つけようとも、そして意思によって受ける攻撃によって男は満身創痍だだけど男は諦めない尚も剣を、斧を、槍を携え挑む。私は叫ぶ…

「断ち切って!この悲しい歴史と悪夢を!これで終わりにして!」
その意思が伝わったのか何も持っていない男から生み出された一振りの光り輝く剣…如何なる戦場でも無敗を誇る偉大なる剣「エクスカリバー ―約束された勝利の剣―」、
奇跡と偶然が重なって投影されたその剣が闇の意思を切り裂く、しかしその意思の拳が男を貫く、そして流れ込むもの

―――正義の味方になりたかった男の話、背負うものの重さ、そして意思…救うというエゴ…

そして八神はやてはその男の一部を受け継いだ…。そして男が残した置き土産は悲しい別れはなく、そして新たな出会いを生んだ。

―――ちょっとした昔話

「すごい」
「なのはさんの過去にそんな事が」
「うん、そうだね」
「ねぇ、その人はどうなったんですか?」
「その人?ううんと…」
「「どうなったんですか?」」
興味心身に聞いてくる二人。
「ええと…」
あの時光の粒子となり消えていった彼、多分私の約束を破ったと思う、確かにそうだが私は思っている。
「きっと今もどこかにいると思うよ…あの人は答えを見つけたから」
「一度会って見たいなどんな人かわくわくするな~~」
「スバルったらまったく…でも私も会ってみたいな」
「にゃはは」
多分、どこかで自分のエゴを貫いていると思う。自分の過去を話したとき…今の自分に大きな影響を与えたあの笑み、今でも私は私のエゴを通す…あの人みたいにそれが私高町なのはが高町なのはとして生きている証なのだから
(もし今度会えたら、今度こそしっかりとお話を聞いてもらうからね)

「僕も大きくなったらそんな人になりたいです」
「私も」
過去に出会った背中の男…だけど
「だめだよ、エリオ、キャロ…あんなのになっては」
この二人にはそうなって欲しくない。
「え!どうしてですか!」
「そうですよ、フェイトさん、その人の事褒めていたのに」
怪訝そうな顔を浮かべる二人
「そういう意味じゃないよ」
「どんな意味ですか?」
「大人になれば分かるよ」
そう、私は彼のようになって欲しくない…あの時流れ込んできた彼の記憶、多くの悲劇を見て、絶望に打ちひしがれた彼それでもエゴを押し通し磨耗しそして守るべき人たちによって殺されるそんな彼になって欲しくない。
「私がなって欲しいのは」
そう私がなって欲しいのは彼のような大きな力と優しさをもった男のように…そうなって欲しい、それも私のエゴ
(今度会えたら、私の背中はどのように見えているのかな?少しは成長できたって言ってくれるかな?)

「なのはちゃんもフェイトちゃんも彼の事を話したんか」
「ええ、よっぽど過去の事を聞きたかったらしいですからね」
「そうやな…彼から受け継いだモノはとても大きいからな」
夜天の王が受け継いだ、生き抜く信念とちょっとした創造の力
「私もです」
「そうやなリインも受け継いだもんな彼から」
「ええ、一度会って礼を言いたい」
悲しい別れをしなければなかった、しかし彼が残して言ったモノ、あらゆる制約を打ち砕く剣「ルールブレイカー」そのおかげで悲しい別れはおきなかった…いや別れはあった。
あの時笑顔で光の粒子となって消えていった彼…自分と家族を救った彼
「だからこそ彼から受け継いだモノはまもらなあかん、ついて着てくれるかリイン?」
「貴女が望むのならどこまでも私も…騎士たちも、妹も」
「そう言われると心強いよ」
(せやな、受け継いだモノはちゃんと守っていく…だから改めて私は貴方に礼を言う


―――「アーチャー」貴方は・・・正義の味方だった)

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最終更新:2008年10月20日 20:20