「はあ・・・だけどまさかこんな事になるなんてな・・・。」
二段ベッドの上段で寝っ転がっていた式が、
ため息を吐きながらそう呟いた。
話は数時間前にまで遡る・・・。
「式、いきなりで悪いけど緊急の依頼が入ったの。
直ぐに向かってもらえないかしら?」
コクトーの入れた茶を啜っていると、橙子の口からそんな言葉が飛び出した。
ここは東京のとある某所にある廃墟。
その中にある魔術師「蒼崎橙子」の工房兼事務所である「伽藍の堂」。
その一角にあるリビング・・・と言えるか
どうか微妙な部屋に三人の人物がいた。
一人は蒼い着物の上に赤い革ジャンを着込み、
傍らには日本刀を立て掛けている中世的な美人「両儀式
もう一人は優しげで大人しそうな感じの、
前髪で左目を隠している青年「黒桐幹也」
部屋の奥のデスクに座っている、
オレンジの髪にメガネを掛けた女性がこの工房の主「蒼崎橙子」である。
「何だ橙子やぶからぼうに・・・。
そんなに大変な依頼なのか?」
俺は再び茶を啜りながら、聞き返した。
「いや、この依頼事態の難易度はそれほど高くないのよ、
だけど放って置くと後々厄介な事に成りかねないのよね。
だから、早急に行ってもらいたいの。」
コーヒーを飲みながら橙子はそう言った。
そこにはいつもの飄々とした表情は無く、
魔術師「蒼崎橙子」としての顔がそこにあった。
こんな橙子を見るのは久しぶりだな・・・。
メガネを掛けてるけど・・・。
「そんな面倒な依頼なら俺じゃなくて自分で行けば良いだろう。
その方が確実なんじゃないのか?」
俺は当たり前の疑問を言ってみたが、橙子は首を横に振った。
「私もそうしたいんだけど、
あいにくこっちも別の依頼で動かなきゃいけないのよ。
面倒くさいとは思うけど今回は折れてくれないかしら?」
ちっ・・・俺が折れるのは毎度のだろうが・・・。
しょうがない・・・やるしかないか・・・。
「わかったよ・・・。それで・・・その依頼で人を殺しても良いのか?」
「ええ、逆にそうしてくれると助かるわ。
それと・・・これが今回の依頼の内容と場所よ。
移動には私のバイクを使っても構わないわ。」
橙子から一つの封筒を受け取り、
立て掛けてあった日本刀を手に取る。
「式・・・気おつけてね・・・?」
コクトーがいつものように心配の言葉を掛けてきた。
「ああ・・・それじゃ行って来る・・・。」
俺は橙子のバイクを使って依頼の場所へと移動を開始した。
橙子から渡された封筒に入ってた指示に従って、
依頼の場所に到着したのはもう深夜の時間帯だった。
今回の依頼の内容は、ここ最近になって多発している、
連続殺人事件の解決だ。
俺が今いる場所の近くに、犯人と思われる奴のアジトがあると
書いてあるけど・・・。
改めて周りを見渡してみる。
周りの街灯のお陰でうっすらとだが全貌が見渡せた。
何かのビルを壊した後なのかまっさらな空き地が広がっているだけだ。
本当にここにアジトがあるか疑問に思うが・・・。
行く前に橙子から聞いた話じゃ今回の事件には、
魔術師らしき者が関わっているらしい。
もしそうだとしら後々面倒なことになる。
協会の連中が動き出すからだ。
橙子は協会から「封印指定」と言うものを受けているらしい。
もし連中が今回の事件の魔術師を処分するためにここ一帯を調べ始めたら、
流石の橙子でも隠れきれないらしい。
もし見つかるなんて事になったら無論連行されるし、
それに関わっている俺やコクトー、アザカにまでとばっちりが来る。
そうならないために橙子は今回の依頼を受けたらしいが。
まあ、俺的には殺し合いができればそれでいいんだけど・・・。
さてと・・・それじゃあとっととアジトを探し始めるか・・・。
そう思って周りを捜索し始めようとした時、
突然目の前の空間が歪み始めた。
「なるほど・・・一応情報は間違ってなかったようだな。」
俺は咄嗟に後ろに飛び、持っていた刀を鞘から抜いて構えた。
「さて・・・はた迷惑な犯人の顔を拝むとするか・・・。」
しかし予想を裏切って、歪みからは全く別の物が出てきた。
例えるなら薬のカプセルに触手が生えたような機械。
そんな物が計4体出てきた。
ちっ・・・生き物ならまだしも機械となると少し面倒だな。
「まあいい・・・今はただ目の前のこいつらを殺すだけだ。」
俺は一度目を閉じて自分流の切り替えをする。
そして目を開く。
そこには有機物や無機物に関係なく内包している、
「死」・・・「死の線」が現れた。
「お前らに見せてやるよ・・・。
生きているのなら神様だって殺してみせる力を・・・。」
最終更新:2008年12月19日 03:11