Flame vs Rider 1 ―――
トレーラーが時速100km以上の速度で突っ込んだかのような有様――
その森林の入り口を端的に現すとすればこうなるだろう
木々は為す術も無く薙ぎ倒され、見るからに惨々たる様相を呈している
それは大木を掻き分けるように突入したナニか――
いや正確には凄まじい力で無理やり打ち出され、突入させられたナニかが残した跡であり
例えるならばボーリングを大砲で打ち出して、ピンを爆砕したらこうなると言った具合か…
そして今回、そのボーリング玉の役割を担わされたモノはどうやら鉄の玉とは似ても似つかない
生物で、人間で、生身で、しかも女性の形をしていた
超絶ストライクで間違いなく10本以上は薙ぎ倒したであろう快挙は彼女にとっては何も喜ばしい事は無い
要はそれだけ盛大に打ち出され……叩きつけられた証明にしかならないのだから
「―――、……………」
美しい肉体を地に横たえ、自慢の長髪をも泥に塗れさせている彼女
チカチカと火花が飛ぶ視界、所々がズキズキと傷む自分の肉体を呆然と見下ろし、
「―――、ああ」
ようやく自身に何が起こったのかを理解する
先ほどまで金髪の愛しい獲物を追い立て、追い詰めていた自分
彼女が射程に入ったと見るや満を持して宝具を展開
そのか弱い背中を轢き潰してやろうと思い立った瞬間――
視界が紅く染まり………気がつけばこのザマ
元いた森へと叩き返され、無様に地に伏せているというわけだ
荒い吐息でゆっくりと大気を吸い、吐いて、、体を起こそうと、――
「ッ――――ッつぅっっっ!!?」
少しでも身体をずらしただけでこれだ
全身を火箸を入れられたような感覚に彼女は身を震わせ、再びその場に崩れ落ちる
「…………………そうですか………そういう事ですか……」
まったく―――やってくれますね、と口に出そうとして
代わりにゴボっと喉の奥から何かが競り上がってくる
ご丁寧にナカまでぐちゃぐちゃらしい
身を無理に身じろがせて、痛みの発信源である自身の胴体に視線を移し
己が身に刻まれた焼け爛れた傷跡を認めるのだった
そしてあの一瞬、入れ替わるように踏み込んできた紅蓮の剣に薙ぎ払われた記憶も徐々に蘇ってくる
咄嗟の反応で短剣から伸びた鎖を使い、最低限の受身は取った
だが騎士の剣をカウンターで、よりによって宝具発動の瞬間に叩き込まれたのだ
とてもその威力の全てを相殺出来るはずがない
それは紛う言なき致命の一撃
ダメージが、自身の体のどの辺りまで届いているか
どの程度の損傷を受けているか――改めて測るまでもなかった
先の戦いとて無傷ではなかったが、まだ自分には受けたダメージを遊ばせる余裕があった
もともと強大なる悪神――ゴルゴンの怪物の記憶を併せ持つ彼女
並の人間とは比べるベくも無い耐久力
無力なニンゲンが必死に打ち込んでくる攻撃を心地良い痛みと嘲笑うゆとりが先ほどまではあったのだが、
だが、コレは違う………流石にこの損傷は無視出来ない
いわば肉体の芯に届いた斬撃をその身に感じ取り
戦いが始まって初めてライダーは冷たい汗が体に滲んでくるのを感じていた
「―――、…」
そして現状――自分にはそんな事を長々と考えている余裕など無い事も理解する
これほどのクリティカルヒットを奪っておいて敵がこの身を捨て置くはずは無い
案の定、アイマスクで隠された彼女の双眸は、木々を掻き分けて猛然と突進してくる炎の剣士――
ランサーと交戦していた女騎士の姿をはっきりと映し出す
まあ、そうなるだろう……当然、この身にトドメを刺しに来るのは当たり前の流れ
しかしアレと戦っていた当のランサーは何をやっているというのか…?
まさかこの短時間で無様にやられ腐ったとも考えにくいが――
ともあれ状況を整理すべく彼女に与えられた僅かな時間は今、終わりを告げる
「………ふん!」
それは野卑な怒号をあげる事なく、こちらの姿を認めるやいなや一瞬で距離を詰めてきた
身に纏う熱気の所業か、彼女の駆け抜けた跡には紅蓮の火の粉が舞い上がり
針葉樹の茂る湿った地面にF1カーが走り抜けた後の炎の道のようなものを発生させている
派手な女だ
舌打ち一つで身構える騎兵――いや、身構えようとした騎兵
だが普段とは比べるべくもない緩慢な動作はダメージの深さ故
またも軽く舌打ちするライダーだったが当然、相手はそんな事に考慮してくれるわけもない
女騎士――彼女の名は烈火の将シグナム
その上手に抱え挙げた剛剣が唸りを上げて翻り
「でぇあッッ!!!」
ほどなくライダーの頭上に振り下ろされたのだ
「―――、くっ!!!」
警告も何も無しに躊躇いもなく、いきなり自分の頭を割りに来た一撃
先の相手とは随分と違う対応だなどと思う余裕も無い
死に物狂いの体に鞭打って騎兵は斬撃を両の短剣で受け止める
ズギャァァン、!という、鈍物に亀裂の入るような炸裂音
「ぅ、……つうっ!!」
脇腹の損傷にズシンと響く一撃に顔をしかめるライダー
体の芯に届くそれは先ほどの相手とは明らかに一線を画すもの
敵を叩き斬る事を生業とした剣士のそれに他ならない
初弾の激突――鍔迫り合いはおろか
踏み止まり、押し返す事もままならず
そのままヨロヨロと後ずさりしてしまう
そして間髪の入れぬニ撃目
体ごと叩きつけるような一撃をこれまた短剣で打ち返そうとする騎兵
だが、やはり踏ん張りが利かない…!
三合目――再び上段から降ってきた剛剣を受ける
両足が地面に沈み込み、体が折れ曲がりそうな感覚に顔をしかめる
(反応出来ない一撃では無いのですが、――如何せん…)
このガラクタのような身体ではキツイ攻撃だ
ダメージが尾を引き押し返せず、受け流せず、後退を続け――
一太刀ごとに押し込まれていくその体
美しい肌や髪を焼いていく炎熱の剣
かつて孤島の神殿に住まう神話の女怪に対し
挑みかかるは異世界の炎の魔剣士
灼熱の刃の一振りは、周囲の木々を容赦なく燃やし尽くし
立ち映える樹林は瞬く間に紅蓮の炎に包まれて
辺りはほどなく火踊る赤が支配する空間と化す
そこはさながら煉獄山――罪人たちを焼き殺す焦熱地獄
暑苦しい趣向だ……これもまた神話の再現などと銘打つつもりか?
まったく熱くて敵わない
その身を焼き尽くす炎熱の火柱が、じりじりと互いの肉体を苛んでいく
そんな熱波と紅い炎に包まれた中
蜃気楼のように――歪む空間を駆ける影絵二つ
詰める影は勇猛な女剣士、詰められるは紫紺の長髪をなびかせる騎兵のサーヴァント
騎兵の頼みの機動力は怪我によってなりを顰め……そも足を使おうにも攻める騎士がそうはさせない
「せぇえあっっ!!」
「―――こ、の…ッ!」
金属同士のぶつかる鈍い音が断続的に業火の戦場に響き渡る
卓越した身体能力と反射神経を持つライダーではあるが
普通にやれば将の剛剣は、騎兵の持つ軽量武器では到底受けきれるものではない
加えて足の踏ん張りの効かぬ今となっては、彼女にシグナムの剣を推し留める力を期待するのは難しく
そしてここで勝負所を見誤る烈火の将ではなかった
(……このまま押し潰す)
無骨な、ほとんど体当たりじみた剣戟
敵に反撃、退避の余力すら与えず鍔迫り合いに持ち込む将
二つの短剣と一本の長剣が凌ぎをけずり、ぎゃりぎゃりと、甲高い音を立てる
そして出力全開で詰める騎士のプレッシャーを押し留められず後退を重ねる騎兵のサーヴァント
「は―――、ッッ…」
こうなっては力士と子供の押し相撲だ
後方につんのめる肢体を何とか堪え
押し倒され、後ろに転倒しなかっただけでも騎兵を褒めたものである
だが――その背面には木
絶望的に揺ぎ無き大木がこれ以上、彼女の後退を許してはくれない
そして全体重、全出力を預けたシグナム
後方の巨大樹に女怪を思いっきり叩きつけたのだ
「く、――はッッ!」
グシャッ、!!という肉のひしゃげる鈍い音と共に女の、息の詰まる声が騎士の耳に入る
生涯がそのまま戦士のキャリアであるこの剣士に
切り結ぶ相手の余力を計れぬほどの未熟な要素は無い
衝撃で身をよじらせる相手の、その短剣に遮られている刃を力任せに、間断なく押し込む騎士
もう少しだ――この相手はここで倒し得る
その剥き出しの肩に食い込む業火の剣
白い肌を焼く匂いが鼻腔をくすぐる
「っ、―――はぁ、、」
女の苦悶の表情と共に口元からギリっと歯を食い縛る音が聞こえた
奇妙なアイマスクで隠された双眸に浮かぶは屈辱か、それとも恐怖か?
「………投降する気は無いか」
全霊で相手に剣を押し付けながら低い声で一言だけ
管理局員たる義務の元に降伏勧告をする女騎士
眉間に深い皺を寄せ、苦悶の表情を見せながらも相手の女はフン、と鼻で嘲笑う
「――愚問です」
これほどの殺気を孕んだ剣を叩き付けておきながら今更何を言うのか、といったところか
「ならば悪いが死んでもらう事になる」
互いに押し殺した声での問答
声帯を開く事すら至難な全力の力比べの最中に行われたそれは互いの一言を以ってあっさりと終了
あの槍兵と変わらず、この女も危険な相手である事は間違いない
空戦S+の魔道士であるフェイトをあそこまで傷つけた相手だ
手傷を負っているとはいえ手加減をする要素など見出せるはずも無い
故に容赦なく、抵抗の術を全て殺ぐ
その決意、意思を伝えるに足る騎士の刃が息も絶え絶えのライダーを徐々に犯し――
その命に押し迫っているのだった
――――――
間奏 1 ―――
単純なスペック、パフォーマンスで相手に上回られた場合とて
不意に不意を重ねる事でコンマ一秒以上の隙を生み出す事は十二分に可能である
均衡状態に陥った戦況に些細な変化を投じる事により
決して崩せぬ相手の鉄壁に亀裂を生じさせ、勝負を一気に終わらせてしまう
それが 「戦力」 を凌駕する 「戦術」 というものであり――
ライトニング1、同2の阿吽の呼吸によって繰り出された絶妙の連携が
この勝負に大きな局面を与え、サーヴァント二体という難敵を窮地に陥れていた
念話やその他、こちらの特性を生かした絶妙のシフトは
タイミングにも助けられ、相手にとって最上の奇襲となる
相手は恐るべき戦闘力の持ち主
未だその深い底を見せていないとしたら――長引けば不利
少しでも気を抜けば途端に劣勢に追い込まれる
ならば――その前に捻じ伏せる
敵がその懐を広げる前に一気に畳み掛ける
コンマの隙に全戦力を投入し
一気にランサーとライダーを潰しに行くフェイトとシグナム
そう、、それは確かに功を奏した
フェイトの雷光の一撃に飲み込まれたランサー
シグナムの剛剣にその身を薙がれ、瀕死のライダー
勝負の趨勢は―――ここに決したかに思われた
――――――
Lightning vs Lancer 1 ―――
シグナムがライダーを追撃すべく飛び込んだ森の、対面の林道
そこは何かが蒸発したような湯気が辺り一面に立ち込め
モノの焦げた臭いが周囲に充満していた
それはさながら火災の跡か――落雷の痕跡
取り巻く空気は熱気と、そして電磁波をバチバチと発生させている
それはこの地を襲った力が決して時間を置いたものではないと容易に顕しており
森林の出口からアスファルトの狭い小道に向かって生じる
地を割く巨大な亀裂が―――その破壊力を物語っていた
大地に生じた地割れはまるで全長50mほどの芋虫が地面を抉って通り過ぎたかのようだ
薙ぎ倒された木々が所々燃え盛っているのは、それが単なる物理的な膂力によってではなく
先も言ったように熱線を伴う何かによって薙ぎ払われた証
そう、、降り注いだのは天災でも自然的現象でもない
他ならぬSランクオーバー魔道士による魔力行使の爪痕だった
雷光一閃――時空管理局執務官・フェイトテスタロッサハラオウンの放つフルドライブ
プラズマザンバー・ブレイカー ―――
バルディッシュザンバーの巨大な刀身から生ずる稲妻が敵を薙ぐ
黒衣の魔道士の必殺奥義が今、このフィールドに炸裂したのだった
「はぁ、、、はぁ……」
細い両肩を激しく上下させて肺に酸素を送り込む魔道士
大魔法の行使による負荷は確実に彼女の体を苛み
全身にびっしりと汗を滲ませていた
前方に鋭い視線を向けて立つフェイト
未だ濛々と立ち込める粉塵により視界は遮られ
その先にいる敵――シグナムを苦しめた槍兵の様子を窺い知る事は出来ない
黒煙と硝煙の渦巻く中、全神経を集中させる
警戒を微塵も解くこと無く、フォルムチェンジした剣を構える彼女
――申し分の無いタイミングだった
――最善の奇襲に確固たる手応え
(倒した………)
――そして奥義に対する自信が
この戦いが終結したという確信を彼女に持たせるに至る
そうだ……無事なはずが無い
事の顛末を求めて見据えるその視線の先
もうじき噴煙も晴れ、そこには倒れ付す敵の姿が、、、
「ふーぃ…………」
「!!!」
息を呑むフェイト
その場からすかさず半歩後退
巨大なザンバーを構え直し、キッと前方を睨み据える
その先で――男の場違いな、間の抜けた声が確かに…聞こえた
そして目を凝らして見据える先には槍を両手で上方に構えて立つ
痩身ながら完璧な造形を持つシルエットが垣間見えたのだ
(ま……まさか…)
そして――― 一閃ッ!!!
「ううっっ!??」
バォウ、!!!という風を切る音と
それに伴うソニックブームが場に劈く
眼前の相手が手に持つ槍を横に凪ぎ払い
周囲にまとわり付く熱気や粉塵を吹き飛ばしたのだ
噴煙から目を庇うように見据えるその先
もはや言うまでもなく、、蒼き衣に身を包む男――ランサーは健在!
肉体の過剰運用によって火照ったフェイトの全身に今度は冷たい汗が滲む
つ、――と、頬を伝う冷や汗
それを拭う事も忘れて睨みつけるその先
男は槍を構え、変わらぬ獰猛な笑みをフェイトに向けるのだった
――――――
(効いて、ないのか……?)
焼け焦げた匂いと硝煙の渦巻く地にしかと両の足を食み―――雄々しく立つその男
まるで何事もなかったように佇む表情
苦しげな様子も感じられぬ佇まい
フルドライブの一撃を受けて、、倒したどころか、無傷…?
―――――いや、
どうやらまったく手傷を負ってないわけではないようだ
武器を握る指の何本かは歪に曲がり、巨剣を受けた衝撃で爪が剥がれた出血が見て取れる
全身から仄かに上がる黒煙は感電のダメージによるものだろう
涼しい顔をしているが決してノーダメージではない事をフェイトは瞬時に読み取っていた
(雷の使い手か――)
対して槍兵も目の前で大層な剣を構える相手を値踏みするように見据える
周囲に光彩著しいプラズマを撒き散らして立つ黒衣の女
その激しくも美しい魔力光に密かに眼を見張る
神代の世から数えてすら雷を己が武器とする闘士は稀だ
地水火風の四大元素の上位に位置するその力
威力、規模のほどは後ろ――遥か後方まで延びる亀裂を見れば一目瞭然だろう
故に稲妻を行使する者はかの時代、例外なく神聖視され
天よりの御使い、または権化として世に名を記される者がほとんどだ
つまり目の前の相手は百戦錬磨のこの英霊に戦慄たらしめるほどの
やっかいな相手である事を予感させる者だという事
「第二ラウンド突入か――そちらは選手交代って事でいいのかい?」
その戦慄は男にとっては何より望んだもの
かの槍を竦ませる要因になる事は決してない
炎の次は雷――豪華な品揃え、痛み入る、というやつだ
彼にしてみれば目の前に高級料理を並べられたようなものである
この熱烈な歓迎に対し、男の狂気じみた闘志は衰えるどころかはちきれんばかりに燃え盛る
ブスブスと肉の焦げた匂いを醸し出しながら、それでも歓喜の表情を絶やさないのは更なる死闘の予感故
先の女剣士との決着がうやむやになってしまったのは気にいらないが
それも戦場の機微というもの――多少の浮気は仕方がない
要は強敵と相まみえ、心躍る戦いが出来れば彼はそれで良いのだから
一薙ぎの風が場を撫で付けると――
辺りに立ち残っていた噴煙が舞い上げられ、泡沫のように消え去っていく
それは小休止となっていた舞台が再び幕を開けたかのような光景だ
そして佇むフェイトとランサー
互いにその姿、輪郭を今はっきりと認め――
男は口の端を釣り上げて哂い、魔道士は端正な顔立ちに戦士の魂を宿す
挨拶は無い――戦いは既に始まっている
ゆらり、と無造作に歩を進めるランサーに対し、
「っ………はぁ!!!!」
「む、――!」
自ら仕掛けるのは何と執務官の方だった
キィン――、と、聞きようのない歪な音を残し
光が走ったとしか思えない速度で彼女は一瞬にして男の間合いに入る
踏み込みの凄まじさにランサーの顔色が変わる
こちらの身が無事と分かるや否や、この金髪の大剣使いは間髪いれずに自分に襲い掛かってきたのだ
フェイトを知る者ならば目を疑ったであろう
彼女が自分から仕掛ける事など珍しいにもほどがあるからだ
しかしてそれは期せずして副隊長・烈火の将の取った判断と同じもの
離れていても通じる二人の呼吸が導き出した答えに他ならない
(良い判断だ――)
感嘆の意を示す槍兵
魔道士の精悍な相貌、金の髪を目の前に見据え
巨大な獲物を手にして、この埒外の域に達した踏み込みに溜息をつく
(なるほど…瞬間移動じみた速度と威力が身上の一撃必殺剣か――)
「はあぁぁぁあッッッッ!!!」
気合と共に彼女の細腕には不釣合いな武装を振り翳すフェイト
またも鼓膜を劈く、音も風も置いてきぼりにする歪な協音
それが響き渡ったかと思えば、槍兵の眼前には既に巨大な刃物が現出していた
大剣使いがこの速度を出せるとは――僅か一撃にして、その技量測り難し
(――暢気に構えてられる状況じゃねえか)
歓喜に咽ぶ槍兵の心中
だが機関銃の弾丸すら容易く見切る彼をしてこの斬撃を前に悠長に構えている暇は無い
機動は横薙ぎ――地面と水平に払われる黄金の稲妻に対し
ランサーもまた一歩、踏み込む
そしてこの瞬間、、
大気を震撼させる超速の攻防が今、始まっていた
――――――
踏み込みはフェイトが先を取り
後を受けるようにしてランサーが一歩
金色と青の閃光が瞬時に交わり、互いの間合いを犯す
巨大な稲妻の剣は十分な間合いと速度をもって男を一撃で薙ぎ倒そうと放ったものだ
反応も防御も許さない
そんな心積もりで放たれた彼女の切り札
「―――、と!」
それを、、事も無く掻い潜るランサー!
フェイトの視界からはまるで男が大剣をすり抜け、消えたように見えただろう
透かしを食らうとはまさにこれだ
確実に伝わる筈の手応えが得られず、陽炎を凪いだような錯覚にすら襲われる
そして身を屈め、横薙ぎの刃の下を潜って駆ける蒼い肢体
その背中と髪が雷に接触して焼け焦げるのも構わずに
薙いだ剣の死角を突いた踏み込みはまさに達人の業
死角に隠れた影に辛うじて反応するフェイトだったが、
「残念だったな! 姉ちゃんッ!」
「く、ッ!」
この時点で大剣使い・フェイトの敗北は確定したも同然
大剣という武器は懐に入れば容易く無力化する事が出来る
圧倒的な間合いと攻撃力が長所である巨大剣は、そのまま小回りの効かなさ、重量が短所となるからだ
故に一撃で仕留めるか、入られて仕留められるか――そうした勝負になるのが従来のセオリー
近接での反射神経と圧倒的な速度を身上とするこの槍兵には威力重視の巨大剣との相性は極めて良い
男にとって、威力だけの武器など攻略するのはさして難しくないのだ
「シィッ!」
薙いだ刃の下方から伸び上がる蒼い肢体
その経験――幾度と無く繰り返し、もはや身体に染み付いた体裁きを違える男ではない
刃の内側に身を置いた事により、相手は攻め手を失い無防備な体をこちらに晒す
スルリと霞が侵入したかのような男の捌きに間近で見たフェイトに寒気が走る
一寸の見切り、まるで無駄のない歩法
凶器が頭上を通り過ぎたというのにまるで乱れぬその体勢
全力の振り抜きを透かされた事により体の開いたフェイトの中心線に今、ランサーの槍が翻る
―――気づいた時には既に決まっている
それが彼ら速度を重んずる者同士の戦いだ
自分が仕留められた事すら認識出来ずに戦いが終わる事も珍しくは無い
故に槍兵……呆気無い幕切れだったとは思わない
ほんの少しの反応、踏み込みの遅れで結果が逆になっていた事も十分考えられたからだ
「バルディッシュ!」
<Yes sir ――Acceleration...>
ならば――もはやフェイトは為す術も無く全身を貫かれるしか術が無い?
「むうっ!?」
ランサーが相手の挙動に目を見開く
否―――それはフルドライブによって構築された彼女の切り札
近接特化型・バルディッシュザンバーを甘く見すぎというものだ
右凪ぎによって彼女の背面まで大きく流れた刃は
その重量、遠心力から、再び自身の懐に戻すまで多くの時を有す
刹那の時を奪い合う近接の攻防でその隙はまさに死活問題
通常ならば、巻き返しなど利かない……ここで敵の刺突に急所を突かれればそれで終わりの筈だった
――――あくまでも、、通常ならば、の話である
今、魔道士を打ち抜こうと踏み込んだ蒼いサーヴァント
右からの刃を見事掻い潜った槍兵の 「左側」 に再び現出する刃は――何だ?
「な、んっ!?」
「それ」は完全ノータイムで往復するように右から左へと切り返し
戻ってきたザンバーの巨大な刀身に他ならない
フェイトの懐に飛び込んだランサーの背側面を突くべく
「それ」はうなりを上げて迫っていたのだ
―― 初撃と変わらぬスピードで、である ――
「マジかッ!!?」
これにはランサーも驚嘆の声を挙げざるを得ない
絶妙のタイミングで相手の斬撃を抜けたにも関わらず
黄金の剣のリカバーが冗談のような速さで行われたからだ
咄嗟に槍の柄を返して巨大な刃の返しを受け止めるランサー
辛うじて受け切れたのは男の卓越した反応速度によるものだが――
「はッ…何だこりゃ!?」
グン、と体のずれる感覚に苛まれるサーヴァント
衝撃を受け流せずにモロに食らった軽量の身体が地面を食む足ごと宙を浮き―――
詰めた距離の数倍を数える距離を無様に吹き飛ばされていたのだ
ゴム鞠のように吹き飛んだ肉体
必殺の間合いの突きよりもなお速く翻る剣により
打ち負け――力負けした
その状況を迅速に消化するランサー
比較的、力の乗らない柄に近い部分で受けた相手の一撃の――何という破壊力か!
「野郎……どんな原理だ、そりゃ…?」
「バルディッシュ、速攻!」
<Continuation...>
息も付かせぬとはこの事か
またも自分方からランサーに肉迫するフェイト
「ええぇぇいっ!!」
あの巨剣を抱え、またも光の如き速度で突撃する雷光の剣士
未だにランサーの足が宙につかぬうちに彼女は、既に男の間合いの中にいた
金色に黒衣のシルエットが男の眼前に再び顕現
腰を落として両足を低く踏ん張り――バッティングのフルスィングの体勢のように力強く振り被る彼女
「んなろっ!」
これはやばい――反射的に防御を硬くするランサー
この自分が近接においてたじろいでいる……
まずはこの事実を正しく受け止め、今は相手の速攻を一つ一つ捌いていくしかない
未だ空中に浮かされているその肢体
宙にて槍を構えて受身の体勢を取るが、地に足が着いていないのでは歩法もへったくれもない
男を支える体裁き、身のこなし、そして移動能力の大半は今―――殺された
「覚悟ッ! はぁあッッッ!!!!!」
そして彼の眼前に現れたのは―――巨大な、雷を纏った扇風機
叩きつけられるフェイトテスタロッサの稲妻の巨剣
一気呵成に叩きつけ、繰り出される刃の超絶回転は
まさに巨大なそれにしか見えないものだった
(しかも、こりゃ…!)
そう、この扇風機はスイッチON・OFFで瞬時に逆回転をして来るのだ……高性能にもほどがある
宙に浮かされた状態で眼前に迫る、金色の輝き放つスクリューシャフトが今、男を滅多打ちにするのだった
(………凄え!)
ゴガガガ、! ゴガガ、!と
スクリューに異物を放り込んだような音が木霊する
この攻撃――下手をすれば先ほどの女騎士よりも、重い!
刀身を考えれば当然だ
相手の女の持つ得物は剣というカテゴリにおいて最も巨大とされるツヴァイハンダーをも軽く超えた代物
所謂、「斬馬刀」等に類する超重武装に類するものだ
白兵戦ではむしろ使い勝手の悪い、ヒトならざるものを相手に猛威を奮う特殊武装
故に重いのは当たり前なのである
ならば言うまでもなく―――白兵戦でそれをここまで縦横無尽に振るう事こそ異常…!
そう、これはまるで――信じられない事に
あのバーサーカーの暴風のような剣戟に酷似するものではないか!?
「く、おおっ……!」
浮かされたままタコ殴り――右に、左に、上に、下に
打たれる方向に身体ごとずれる蒼い肢体
まるでコインランドリーにぶちこまれた小動物のように翻弄されるサーヴァント
その状態で、それでも力に逆らわず、流れに身を任せつつ、
刃の直撃を受けきる彼こそ究極の域に達する武人と言えよう
だが、それでも受けきれない何発かが高圧電流を伴い
肉体のところどころに食い込んでいた
「ぐ、おっ――!?」
あのシグナムを相手にとって、ついにはまともに被弾させなかったこの英霊が
いとも簡単にスタン効果の雷撃を叩き込まれ、全身に痙攣を走らせる
ギ、と血を滲ませるほどに歯を食い縛り感電に耐えるクランの猛犬
神経を焼く凄まじい熱電流にその身を苛まれながら、必死に耐え抜く
並の戦士ならば、これで既に動けなくなっている事だろう
「うお、らぁぁぁぁっ!!!!」
雷光の魔道士の攻撃はまさに至宝に位置する絶技である
だが、彼もまた返す返すも並の戦士ではなかった
気合一閃――自身に接触してくる無数の刃の一つ
縦横無尽に飛来する相手の攻撃の中から、比較的甘く入ってきた一つを選び
己が感電のダメージすら構わずに、力任せに思いっきり打ち返したのであった
「ぅうッッッッッッ!!!!!!」
空気を震撼させる炸裂音と共に
紅い魔槍と稲妻剣が衝突し、大きく弾かれる
――――途端、苦悶に顔を歪めるフェイト
(――――、む?)
一気呵成に攻め続けていたフェイトが後方に飛び荒び、自ら距離を離す
それによって強制的にお手玉状態だったランサーの体も無事、落着を果たし
再び一時の間を置き―――魔道士と槍兵が睨みあう形となった
――― この間、時間にして一分弱 ―――
スピード違反同士の戦いがいかに周囲を置いてきぼりにするかが改めて分かろうというものだ
だがランサーにしてみれば久しぶりの地上こんにちわである
下手をすればこのまま延々と宙に浮かされ続けながらの交戦を余儀なくされていたのだろうからゾッとしない
「……………ッ、」
「――――、」
額に脂汗を浮かべるも一瞬
それを拭い、再び凛とした表情で男に立ち塞がるフェイト
巨大な雷刃を正眼に構え――それは徹底抗戦の意思に他ならない
(…………)
対して敵の凄まじい剣戟の攻略に苦心するも
魔道士の微かな変調に訝しげな表情を見せるランサー
脅速の闘志達――
フェイトテスタロッサハラオウンとサーヴァント・ランサーの邂逅は未だ始まったばかりである
――――――
Flame vs Rider 2 ―――
英霊――
星の記憶に名を刻まれた
数々の偉業を成し遂げ、伝承となった彼ら
決して偉業ではなく悪行を以って名を知られた者も多いが、ともかく――
そんな英霊にはそれぞれ特質・属性など、彼ら自身のパーソナリティを形成する様々な要素がある
それは英霊のタイプ、性格付けと言っても差し支えはない
彼らは本来、その用途に沿った場にしか現出せず
自身の特質に合った行動によりその奇跡を体現し
己が持つ属性以外の行動を取る事はほとんど無い
大まかな例えになるが、世界を破滅から救って欲しいと悪魔を呼び出す者はいないし
逆に呪詛を以って他者に仇為すために太陽神の加護を求める阿呆もいない
超常の力を持っている者とて万能ではなく、得手不得手というものは必ずあるという事だ
凄まじい力を行使出来る彼らであるがその「キャラクター」とでも言うのか――
伝承、記憶に記された以外のパフォーマンスを発揮する事はやはり難しい
――――――故に、彼女には
騎兵として召還されたサーヴァント、このライダーには――――
「窮地から脱出する」 「ピンチを凌ぐ」
――――と、いう特質が無い
ライダー ――堕ちた女神
ゴルゴン三姉妹の末妹メドゥーサ
彼女は圧倒的な力と恐怖で勇者たちを獲物として狩り殺して来た怪物である
だがしかし、高町なのはやセイバー等が持つ不屈、奮起、などの折れぬ精神
決して挫けぬ魂で困難を切り開いて行く者かと聞かれれば、首を傾げざるを得ないだろう
劣勢を逆転する要素を持つのはヒロイック・サーガ等に出てくる主人公達の特権だ
この騎兵はむしろ、その手の輩に倒される存在として伝承に名を残しているのだから
故に―――今現在、彼女は騎士の剣によって危機的状況にあるが
己が身を苛む剣を押し返し、覆す力を果たして得られるのか?
――――苦しい
かつて幾度と無くその身を討たれた忌わしい記憶が
彼女にこの状態から生還できる確率は五分もないであろう事を告げている
絶体絶命の窮地
紛う事なき死の危険に歯噛みしながら
今はただ抗うサーヴァント・ライダー
かの者を救い給う支えと成り
力を与へる存在が無い限り――
彼女の命運はきっとここで、尽きる事になるだろう
――――――
(………テスタロッサ、)
相手にトドメを刺そうと詰めるシグナムが遥か後方で戦っている戦友に思いを馳せる
そう―――戦っている……未だ交戦中
背中に感じる気配である程度の戦況は読める
震える地面、空気を切り裂くソニックブームの余波がここまで響いてくる
あの魔道士がプラズマザンバーを抜いた以上、狙うは一撃必殺の勝利であったはず
だのに戦闘が未だ続いているという事は――あの巨大な雷撃剣を相手が凌いだ事に他ならない
何という男か……紫電一閃に引き続き、テスタロッサのフルドライブですら奴は受けきったというのか?
バルディッシュザンバーは接近戦特化のスタイルだ
敵との距離を一気に詰めて切り伏せるいわば短期決戦用のスタイル
その凄まじさはこの身を以って知るところであるが――
――― 同時にあの武装の特質、欠点というべきものも ―――
この騎士は十二分に識っている
あの剣を抜いた以上、攻め手は自ずと近接に寄ってくる
初撃で敵を斬って落とせなかった場合、あの魔道士ならばいくつかの選択肢があるだろう
一対一ならば一旦距離を取るのが奴の最善
だが互いに奇襲をかけ、相手を斬って落とさねばならないこの状況
どちらか一方が敵を討ち漏らすわけにはいかない
ならばどうするか……知れた事
あいつは敵を釘付けにし、そこで仕留めるべく
相手に近接を仕掛ける方を取るに違いない
他ならぬ、この自分の背後を突かせないために―――
(まずいな…)
そしてそれは考えうる最悪の展開だ
力任せに決めに行くというのは本来、格下の相手や弱りきった相手に対して最大の効果を発揮する
だがもし相手に未だ余力があり、力量が上の相手にそれをやった場合――見るも無残な結果に終わるは明白
奇襲が失敗した以上、あの敵と……ランサーと正面から斬り合うのは危険すぎる
奴は、あいつは、技量においてこの自分の剣を嘲笑うほどの力量の持ち主なのだ
(何にせよ、ここでもたつくわけにはいかん……)
ならば一刻も早く自身の敵を掃討し、友のフォローに回らねばならない
微塵の猶予も無いその状況
剣に更なる力を込め、敵を容赦なく押し潰さんとするシグナム
その豪腕同士による力比べは続いていた
灼熱の熱波渦巻く樹林の奥で、既に地面は煮え滾る溶岩の如く溶け出し
片や膨大な魔力を出力に変換し、重機の如き圧殺力を醸し出す騎士
片やヒトとは肉体を形成する元素からして懸け離れた神域の存在
ギチギチと筋肉が悲鳴を上げながら互いを組み伏せようと行使する力のぶつかり合いは
もはや屈強な男の戦士さえも青ざめるほど凄まじいものだ
互いに端正で美しい容姿を持つ二人が
表情を鬼相に歪ませて敵を捻じ伏せようと唸る
さながらプレデター同士の凄惨な食らい合い
だがその均衡は―――続き、シグナムに傾いていく
徐々にライダーの双手刃を炎の一刀が押し切っていく
腕相撲と同じだ
一旦傾いた形勢を覆すには二倍の膂力を必要とされ
そんな力を搾り出すにはもはやライダーの身体は損傷が激しすぎる
「―――、、」
将の剣は先ほどの金髪の魔道士と違い、一片の迷いもなく相手を断ち切ろうとしている
武装局員ならば皆、その時の覚悟は持っている事だろうが、やはり本当に「それ」をしてきた剣とは格が違う
この紫紺のサーヴァントに本気で死を連想させるだけの気迫が今の騎士の剣にはあった
「お、のれ―――喰らえッ!」
何とか相手を剥がしたてエスケープしたいライダー
木に寄りかかり、両腕は塞がれたまま、片足で相手のどてっ腹に前蹴りを叩き込む
優雅さとはかけ離れた死に体で放った一撃は、それでも確かなる感触を足底に残す
手の三倍の力を持つ脚による打撃
事にライダーのそれは小型のショベルカーをも蹴り飛ばす桁違いの脚力だ
普通ならばただでは済まない―――
並の相手ならば内蔵をぶちまけながら吹き飛ばされてしまうだろう
だが、、
「…………!」
騎士はまるで動じない!
体をくの字に曲げて嗚咽に咽ぶどころか
焔のように燃える瞳は微塵も怯まず、力にも些かの衰えも無い
更に険しく彼女を射る烈火の双眸
騎兵の心胆を焼くには十分過ぎるものだった
(―――硬い…!)
先ほどの金髪はこれでダメージを与えられた
だが今の感触はまるで違う
分厚い城壁を蹴ったような感覚は、逆にこちらの足をヘシ折るほどの反発を受け
逆に体勢を大きく崩してしまう
そして――そんな隙を逃がすシグナムではない
「ぬあッッ!」
ライダーの双剣と上方で絡み、凌ぎを削っていた長剣を渾身の力で跳ね上げるシグナム
騎兵の上体が更に崩され、無様に起こされてガラ空きになる
その空いた胴体に目掛け、剣士は全体重を自身の肩に乗せ
その体にタックルをぶちかましたのだ
「―――ぐ、ふッ!!!!!」
そのチャージはミチミチ、と潰される肉の感触、骨が砕ける鈍い音を確かにシグナムの肩越しに伝える
ライダーの両足が一瞬、宙に浮き、指先までビーンと伸びる
そのショックで四肢がビクンと跳ね上がり、内腑を押し潰された彼女の口から吐き出された真っ赤な吐奢物が将の顔を汚す
「―――、、」
神経の隅々にまで伝わる電気を通したような痙攣がニ、三度続き
そしてほどなく黒い薄布で覆われた彼女の腰がガクンと落ちる
そしてずるずると木に寄りかかりながらに崩れ落ちるサーヴァントの上体
フィールド付きの騎士甲冑のチャージを受けたのだ
生身の肉が、それに耐えられるはずがない
普通ならばこれで絶命だ
だが、、腰を落とし、力尽きかけている身体にさえ女騎士は微塵の休息も与えなかった
へたりこもうとする騎兵の体の更に内側にその身を滑り込ませるシグナム
そしてだらしなく上がったサーヴァントの顎を―――肩で思いっきりカチ上げる!
ガチンッッッ、という、上歯と下歯が無理やり噛み合わさる音が響く!
弛緩したライダーの両足が今度は上方にと伸び上がり
倒れる事も許されぬ肢体が無理やり立ち起こされていた
顎部を硬いショルダーで打ち上げられ、視界が、意識が、彼女の体から叩き出される
「覚悟……!」
そしてほとんどグロッキー状態のライダーに対し、下から剛剣を跳ね上げる将
狙いは――首!
相手の上がった顎の下に刃を叩き込み
一刀の元にライダーの首級を挙げるつもりだ!
巻き上がる豪炎と共に繰り出されるシグナムの下段斬り上げがライダーの細い首に迫る
翻る将の肢体―――その目は海の暴徒・鮫が捕食対象を仕留める瞬間に見せるのと同様の冷酷な光を放ち
相手の女を物言わぬ躯にする最後の動作を機械的に実行に移す
この姿だけは――主にも友にも見せたくはない…
森の奥の、深い闇の中で一つの命を終わらせようとする一匹の修羅
木々が醸し出す闇よ――
愛する者の目から、この醜い姿をせいぜい隠しておいて欲しいと切に願い――
剣士は、躊躇う事なく殺戮の刃を振り上げた
――――――
最終更新:2009年10月14日 17:30