389 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/04(水) 00:19:29 ID:vayG1giE
はやてルート続き投下させていただきます
390 :Fateはやてルート56:2008/06/04(水) 00:21:14 ID:vayG1giE
泰山、その味、まさに閻魔の座所の名にふさわしく地獄を今、この地に再現する。
悪業により報いを受け、鬼に責め続けられるというその苦行を
現世にまで引っ張り出すようなその赤き料理を平然と食す者はとうに人を辞めた者に他ならない。
一行の中で沈まずにこの、灼熱を想わせる物体を啜る人外は2名。
晴れてこの地で偽りの姉妹となった西洋人の容貌をした、女、2人。
「どうかしら?私ここの料理が好きなのよね」
レンゲを手に周囲の空気とは別世界のような無邪気な笑顔を浮かべる
設定年齢現在27歳。
その隣で可憐さを消費しつつ猛然と手を進める娘。
顔にいくつもの滝を作り、息を荒くしていたとしても、眼光は鋭く獲物を離すことはない。
「これは…辛い…!だが、美味い!このようなスパイスを手に入れられるならば
我が国の民は勇んで東洋へと海を渡ったことでしょう。
きっと、故郷の味も雑が辛に変わっていたに違いない」
よいものでした。と満足気に何度も頷く。
そこで、ふと、手を止め、腹を満たした彼女がシャマル以外に見た衛宮家の面々は……青息吐息…
皆、苦悶の表情を浮かべていた。
「これは…こんな…料理が…くそっ!俺は…認めない!」
涙を流し慟哭する食の道を知る若者。彼の求める究極のメニューとはほど遠いのだろう。
握った拳は行き場もなくただ震えている。
「は…やて先輩…わた…し体が…熱くて、熱いんで…す。も…うダメです
はぁ…ああ、わたし…食べ…て…くれ…ませ…ん…か…?」
「あかん、あかん…て…私も…もうだめぇ…こんな…の…入らへん…て!?
やめ、やめてや!桜ちゃん堪忍や!い、いやぁぁぁぁ!!」
響き渡る、末期の悲鳴もこの地においては日々、日常なこと。
未遠という三途を渡った悪鬼羅刹が住まう深山町に相応しい音色である。
「南無三…だが確かに…栄養は摂取…し…た」
崩れ落ちる人影、彼はマーボー豆腐に僅かに入っていた肉類を摂取するがため、
プライドをもって完食を目指し、そして燃え尽きた…。
だが、完全喫食は果たされた。彼には賛辞が送られるだろう。
391 :Fateはやてルート57:2008/06/04(水) 00:24:27 ID:vayG1giE
ヴォルケンリッター、紅の鉄騎は進退極まっていた。
眼前には、衛宮士郎らが作る、思わず舌鼓を打ちたくなるような料理とは
全く異質なナニカ。今までの食生活は大変、とっても恵まれていたとヴィータは悟らざるを得ない。
「どうした、手が止まっているぞ」
そして、後ろで嘲笑うような空気と共に立つ女がヴィータを後ろへ退かせない。
「う、うるさい!今食べるんだよ」
「もう、何分もかき混ぜるだけで一向に口を付ける様子がないが、
馬鹿にしてすみません。自分が間違ってました、
などと、は聞きたくないものだ」
「うう…」
まだ、一行が出てきた皿をただ、随分赤いなーというくらいの
印象しか持っていなかった、あの戻ることのできない思い出の時間において
ソレの危険性を訴えていたシグナムをヴィータは鼻で笑い続けていた…。
烈火の将も大したことないな、シグナム必死だな、雑魚いぞ、むしろ劣化の将?と
そのツケは今、何倍にもなって帰ってこようとしていた。
「紅の鉄騎ほどの者が一度前にした相手に背を向けるなどということは
ないと私は信じているが…雑魚い劣化の将とは違うのだろうしな」
その声色には全く妥協する雰囲気は感じられない。
「あ、あのさ、シグナ―――」
「ああ、もしかしてこの雑魚い劣化の将が紅の鉄騎様に食べさせてあげればよろしかったのですか?
それならば早く言ってくださればよかったのに、どうぞヴィータ様」
レンゲを持ち笑顔で――ヴィータには邪悪な怪物にしか見えなかったが――
シグナムは赤い物体をいっぱいにこさえたレンゲをゆっくりと…
少女の口へと向けた…
先程口にした味が舌で再生され脳は恐怖と震えを呼び起こす。
そんなものまともな精神の持ち主には耐えきれるはずがない。
「あたしが悪かったよぅ…うぅ…もう…さぁ…許して…くれ…よぉ」
少女の心は決壊した。
幼いその顔は歪み涙に咽ぶ。涙ながらに上目遣いで許しを請う姿にレンゲは…止まる。
「…そうか、これの恐ろしさ、わかってくれたか?」
「うんっ馬鹿に…して悪かった。シグナムは…正し…かったよ」
涙を腕で拭いながらシグナムを見上げる目は澄んでいて素直ないつもの妹分の眼差しだった。
392 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/04(水) 00:25:40 ID:XY8QEju0
支援
393 :Fateはやてルート58:2008/06/04(水) 00:27:35 ID:vayG1giE
シグナムは知っている。ここの味の恐ろしさを。なればこそ
彼女が興味本位でマーボーを頼むなどという暴挙に出ることは有り得なかった。
ヴィータを改心させると席に着き頼んでいたライスをほうばる。
この店に来たくなかったのは味は当然として、もう1つ理由があった。
泰山の噂を聞いたシグナムはかつて一度だけ足を運んだことがある。
その時、店内で心底美味そうにそれを食す男がいた。
食いっぷりが気に入って自分もそれを、と注文した時、男は僅かに表情を緩めた。
だが、それは同好の志を見つけたという種の喜びの顔ではなかった。
証明はすぐに成された。
シグナムが出されたオーダーに勇んで手を付け瞬時に精神と肉体を凍らせた時、
男はそれこそ破顔一笑。愉悦に浸らんと顔を綻ばせた。
男は最初から期待していたのだ、得意な顔から絶望へと隣席の女の表情が変わることを。
ひどく気分を害したシグナムは男に何が可笑しいと詰め寄ったが、
一言、また一言と言葉を交わすうちにシグナムの気分は加速度的に悪化していった。
けれど、男の言葉に嘘、偽りはなく口から出る言葉は概して正論。
言葉に詰まったシグナムは苛立ちを抑えきれず、
椅子に当たり捨てぜりふと吐くと泰山を後にしたのだった。
そんな口惜しさと自分の浅はかさを思い出してしまうこの店には来たくなかった。
「ん?見た顔だな。久しぶりと言っておこうか」
と、いう感じでこの神父に出逢ってしまうのを恐れていたのだから。
少し浅黒い肌をした神父はそうしているのが当然と言った風体でシグナムの右隣で食べている。
「好き…なのだな本当にその赤いのが…」
男の存在には気づいていたがあえて見ない気づかないとしていた。
とはいえ声をかけられては答えないわけにもいかない。
顔には出さないつもりでいたがシグナムは微妙に嫌な顔となっていた。
男はセイバー同様大粒の汗をかきながらマーボーを食べている。ここでふと汗一つかかず、
平然とこれを食べていたシャマルを男以上に不気味だ、と少しだけ感じたがそれは些細なことだ。
394 :Fateはやてルート59:2008/06/04(水) 00:30:51 ID:vayG1giE
冷めた表情で男の食欲を眺めていると男はおもむろに顔をあげシグナムに視線を向けた。
「………………食うか?」
「食わん」
「そうか…」
シグナムの気のない返事にも特に気を落とした様子もなく
神父は再び意識を皿に向け黙々と食べ始める。
じっとその様子を観察しているとシグナムの服の裾を引っ張る者がいた。
「なぁ、シグナムそこの人知り合いなのか?」
シグナムの背から男を盗み見るのはヴィータ。
少し、おっかなびっくりといった様子で男を伺っているのは、
あの、赤いのをセイバーもかくやという速さで食べているからだろう。
もしかしたらさっきの仕打ちはヴィータにトラウマを植え付けてしまったかもしれないと
シグナムは不安を覚えた。
「まぁ知らないこともないが特に親しいわけでもない。むしろ悪い関係だ。
名前は―――知らんな」
「私もお前の名は知らんな。私は言峰綺礼。見ての通り神父をしている」
レンゲが皿に置かれカランと乾いた音がシグナム達の耳に届く。
言峰と名乗った男は次の皿を目線で店主に合図すると顔だけを向けた。
「中華臭い神父というのは如何なものかと思うが…まぁいい。
私はシグナム・ヴォルケンこっちはヴィータだ。いつぞやは世話になったな」
不機嫌な顔は相変わらずだが地か、対応は割と素直にやってしまうシグナムだった。
「私はお前には見所があると踏んだ。だからあの時お前には期待していた」
この男特有の含みのある微笑みは初対面の時の事を思いださせ、シグナムはほとほと嫌気が指してきた。
「こういう男だ。とても付き合っていて楽しい男ではない」
「はぁ、そうかな」
「そう、捉えられても仕方あるまいが、どちらでもよいことだ。
会いたくなったら言峰教会に来るといい信徒でなくとも少しは歓迎しよう」
男は相変わらず静かな微笑みを浮かべ語る。
「誰も行かんと思うが」
「言峰教会だろ?場所知ってるよ。今度行ってみるか!?シグナム」
思いの外言峰綺礼に興味を覚えた様子のヴィータにシグナムは溜め息を、言峰綺礼は不気味な笑顔を向けた。
「お前たちは本当に見込みがある。歓迎しよう」
と呟きながら
395 :Fateはやてルート60:2008/06/04(水) 00:33:08 ID:vayG1giE
その死闘は永く、けれどほとんどの者から無視され展開されていた。
「ふふ、もう離れないんですか?私から?逃げても無駄ですけど」
「な、なぁもうマーボー抜けとるやろ?そやろ?
も、もうええんちゃう?私は桜ちゃんの胸にはちょお興味あるんは確かやけど…
意外とノーマルなんよ?」
床に仰向けに倒されたはやてを覗き込み桜は妖艶に笑った。
はやてはマーボー食べてかいた汗とは別の冷や汗を今は浮かべ後輩の一挙手一投足に苦笑いで答える。
桜の髪ははやての頬を撫で、互いの顔は息を感じとれる程、近い。
「知ってますよ。はやて先輩は先輩一筋だって…」
そう云うや桜ははやての右の頬を左手で触れ、
右手で―――レンゲを振り下ろした。
口に押し込まれたそれを嚥下させられる。入りきらなかったものは口から一筋となり流れ出た。
口は開きっぱなし…はやての反応は…ない。
「はやて先輩、食べても何しても胸が大きくならないとかいつも言ってましたけど
横に太るなんて心配したことないですよね?それがどんなに羨ましかったか…
今日は少しは膨らんだみたいですけどまだ足りません!」
はやてのマウントをとった桜は1人回想の中悔しそうに身を震わす。
そして意を決すると左手に餃子の皿をとった。決して死ねという意味ではなかったろうが…
「あ…れ…?」
餃子を乗せた皿がはやての唇にあたるとカツンと響く。
はやての肌は固く、まるで無機物。
「せ、先輩!?なんでこんなに固く!?」
答える者はなく桜の思考は一時停止を余儀なくされる。
「気づかんもん?ショックやなぁ」
ドドドドドドドド!!!
桜の背後から聞こえる声は……衛宮はやての―――声!
「それは信楽焼や」
「ええーーー!!」
「悪い子にはお仕置きが必要やな」
驚きのなか戦意を失っていた桜の耳にはやての手が伸びる。
「いっ痛!先輩痛いです!」
(シャマル、ありがとうな)
(いえいえ)
(でもなんでわざわざ信楽焼なんて転送したん?)
(イメージです♪)
(………)
396 :Fateはやてルート61:2008/06/04(水) 00:35:04 ID:vayG1giE
「すいませんーー悪乗りしました」
「よしよし。そんならこのへんで終わりにしよか」
耳を伸ばしたり戻したりされていた桜はしゅんとなり反省の弁を口にする。
はやては笑って手を離した、と足が――――震え、痺れ――崩れ…る
「あ……」
ドシャアという音を立てはやては倒れた。
「はやて!」
究極のメニューの世界への没入を周囲の悲鳴とともに止め、士郎は駆けた。
抱えあげたはやてに意識はあるも反応は弱々しい。
「ごめんな…今日1日もたんかった…」
「気にするな。とりあえず家に帰るぞ」
士郎は冷静だった。息を飲む桜と、厳しい眼差しのセイバー、ヴォルケンリッター。
ドアを開け外で待機していたザフィーラも異常に感づき店内に駆けつける。
そんな中、ただ1人、一同の様子を観察するかのように眺める男。
「悪いのか?」
「ああ、神父のあんたには分からないかもしれないが持病なんだ」
言峰の問いにはやての腕を肩に回しながら士郎は答えた。
「まだ、解放されていないのか。それは難儀だな。八神はやて」
言峰綺礼は柔らかい表情でそう告げた。
「なん…やて?」
「八神?」
神父の言葉に体を預けるほど力がなかったそれが強く反応する。
かつての――名に、反応する。
397 :名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/04(水) 00:35:41 ID:vayG1giE
指摘ありがとうございます。今日以上です
最終更新:2008年06月04日 21:48