誰かの日記帳がある。


○月×日
慧音の勧めもあって、今日から日記をつけることにした。
何を書けば良いかよく分からないが、とりあえず日々のことを書いていこうと思う。
三日坊主で終わらないように気をつけよう。

○月□日
今日は仕事の帰りに突然雨が降った。
行きは晴れていたのに……。
しかし慧音が傘を持ってきてくれたおかげで助かった。
慧音には世話になりっぱなしだ。

○月△日
今日は職場の同僚(女性)から魚を貰った。
それを慧音に話したらちょっと不機嫌になった。あれ?
何で慧音は怒ったのだろうか、うーん。
まぁ明日には元通りになるか。

○月○日
この日記も4日目に入った。
思ったより続くものだな、と自分でも感心した。
昨日の件については慧音は特に気にしてないようだった。良かった良かった。

それと、俺は近々この家を出ようと思う。
いつまでも慧音に迷惑をかけるわけにはいかないしな。
そもそも永遠の別れ、ってわけでもないからあまり気にしないだろう(人里の空き小屋を借りるだけだし)

○月●日
慧音に近々出て行くことを伝えた。
少し反対されたけど、説得したら分かってくれたらしく、承諾してくれた。
けど、やっぱり多少なりともショックだったのか、若干動揺していたようだった。

○月◆日
自分の荷物を纏めている最中に慧音とこんな会話があった。

「考え直す気はないのか?」
「無いよ。昨日も言ったろ」
「そ、そうか……。でも私は構わないんだぞ?」
「そう言うわけにもいかないさ。これ以上迷惑をかけたくないし」
「迷惑だなんて、私はそんなこと……」
「とにかくもう決めたんだ。今までありがとう、ってこれは昨日も言ったな。ハハハ……」
「ッ、○○、私は」

この後客が来たので会話はここで終わった。
慧音は何を言いたかったんだろうか?
明日にでも聞いてみよう。



新しい日記帳がある。


×月○日
今日も仕事は大変だった。
しかし妻を養うためにも俺は頑張らなきゃいけない。
いくら共働きと言っても、妻を楽させるくらいの甲斐性は持ちたいものだ。

しかし俺には気がかりなことがある。
俺は、いつ慧音と結婚したのだろうか?
以前その事を本人に訊いたら「忘れたのか!?」と喚かれて大変だった。
確かに人生の節目を忘れるとは思えないし……曖昧になってるだけだと思いたい。

おっと、慧音が呼んでいるので今日はここまでにしよう。



日記はここで終わっている。

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最終更新:2011年07月09日 22:48