俺の家はえらく古い家系だと常々言われている。
個人的には非常に怪しいと思ってる。古都を何度戦乱が襲ったと思ってるんだと。
んでもってだ、家宝ってのがすげぇ綺麗で精巧な花が付いた枝だ。
すげぇ大昔に作られた……割には未だに輝きを保っている。
博物館に寄贈したらすげぇ喜ばれるだろう位に。
ウソか本当か知らんが、これ作る為に家の金殆ど注ぎ込んだとか一家離散の目に遭ったとか。
嘘くさいなぁ。マジでそうだったらさ、とっくの昔に盗られてるだろと。
俺は太陽の下でもうちょっと見たくて、収められていた箱を持って蔵から出た。
……外は古い旧家の田舎屋敷じゃなく、どこまでも続く竹林だった。
半泣きでウロウロしてた所、俺はバニーと出会った。
森でクマさんじゃなくて、竹林でバニーだった。何故かブレザーとミニスカだった。
事情を話したら「取り敢えず安全な場所へ……」という事ででかいお屋敷に連れて行かれた。
奇妙な格好の女医さんにも事情を話したら人里まで送ってくれるとの事。
安堵してたら、姫様と呼ばれるすげぇ美人の女の子が出て来た。芸能界なんて目じゃない位美人だった。
外の話をしてたら箱の中身が何か聞かれた。この人なら見せてもいいかなぁと思って見せてみた。
…………何だか凄く懐かしそうでいて、それでいて悪戯っぽい顔をされた。
姫様は笑顔で俺に言った。
「貴方、今日から私のペットね。兎ばかりじゃ偏りがあるから、1人ぐらい地上人のペットが居てもいいでしょ」
…………何だか帰還が絶望的になったと、女医さんから溜息混じりに宣告された。
「飽きたら解放してくれると思うわ。姫は飽きっぽいから……まぁ、1~2ヶ月は大人しく相手をしてあげて」
この時は俺も楽観視していた。永い付き合いだという彼女がそう言うならそれ位で解放されるかもと。
それにこの世界にも興味があったし、観光気分で居たんだ……この時は。
「お前、あれは、あれは何処にあるんだ、出せ、出すんだっ!」
暫くして、もんぺを履いた女の子が凄い形相で殴り込んできた。
「蓬莱の玉の枝だ、あの、私達の一族の運命を狂わせた、忌まわしい偽物を!!」
彼女の手には、火の玉が形成されていた。怯える俺を、彼女が覗きこむ。
「……お前は、私の血族の子孫、子孫なんだろ? 後生だ、あれを壊させてくれ「駄目よ」」
箱にぶつけられそうになった火の玉が、七色の光弾によって相殺される。
「この子は私のペットよ。この子のものは私のもの。貴女に壊させる義理はないわね」
「輝夜ぁ、私の父のみならず、私の子孫の運命までも狂わせる気かぁ……また1つ、お前をどうしても殺さなきゃいけない理由が出来たな!」
それからというもの、二人は蓬莱の玉の枝を、いや、俺を奪い合った。
少女……藤原妹紅は子孫である俺を保護するのは当然とし、蓬莱の玉の枝は藤原家の財産であると主張した。
輝夜は蓬莱の玉の枝は元々自分に献上されるものだった代物だし、ペットである俺を保護するのは飼い主の義務であると主張した。
俺は何度も二人の間を行き交った。何度も何度も何度も何度も行き交った。
半日毎に竹林の隠れ家と永遠亭の彼女達の自室を強制的に往来した事もある。
気が付いたら輝夜と同衾してしまっていた。乗り込んできて唖然とする妹紅に対し、輝夜は勝ち誇ったような顔をしていた。
次の日の朝、妹紅の隠れ家で俺は遙かなるご先祖様と肉体関係を持ってしまった。乗り込んできた輝夜と妹紅は何故か全裸で戦っていた。
(俺、なんでご先祖様と本物のかぐや姫に争奪戦しかけられてるんだろ……普通、こういう話は逆じゃないか?)
俺は妹紅と輝夜の間を何度も行き交った。数え切れない程、バターになりそうな位行き交った。
(二人とも尋常じゃないよ……俺も、尋常じゃなくなったし)
二人の弾幕に運悪く挟まれて全身をローストされた俺は、猛スピードで自己修復中だった。
(やっぱ、あの家宝には触るべきじゃなかったもんな。婆ちゃん、言うこと聞かない馬鹿な孫でご免)
あの家宝は、蓬莱の玉の枝の偽物は、永遠亭の蔵の隅っこに箱にしまわれたまま無雑作に転がっている。
妹紅と輝夜にとって、欲しい宝は……。
「「○○は私のもの!! 絶対に渡さないわ!!!」」
女達の激戦は続いていく。今日も、明日も。
最終更新:2011年07月09日 23:14