「ねえ、衣玖さん。俺達って出会ってから結構経ってるよね」
「そうですね、○○さん」
俺は人里で雑貨商営んでいる。たまたま買物に来た衣玖さんになんとなく話しかけてみたみたのが
俺達の出会いだった。
「すごく失礼なこと訊いてもいいかな?失礼だと思ってるんなら訊くなよって話なんだけど」
「あらたまってなんですか。私で答えられることならなんでも答えますよ。
それに今更私と○○さんの間柄じゃないですか」
「じゃあ、失礼して・・・苗字何だっけ?」
「はい?」
質問された衣玖さんは目を丸くしていた。
我ながら馬鹿な質問をしてると思う。衣玖さんの名前は印象深いものだ、苗字の方はと言うと名家でも
ない限りあまり覚える気がしないのだ。名前はその人を表すものだから覚えるようにしているが。
だが、しかし、これだけの付き合いのある人なのに苗字知らない失礼だろうと思い、誰かに訊こうと思った
のだが、俺は衣玖さんの知り合いは知らないのだ。
「永江・・・永江衣玖ですよ。また、どうしてそんなこと訊くんですか?」
「人の名前ってさ、姓と名ってあるじゃん。名の方はその人を表す唯一のものだから覚えてるんだけど
姓の方は名家でもない限り覚える気がしなくて、結構忘れちゃうんだ。かなり失礼なこと訊いてると
思う。でも”親友”の衣玖さんの苗字はちゃんと覚えておこうと思って」
衣玖は”親友”という言葉にショックを受けた。彼は妖怪の私でも優しくしてくれる、そんな彼が好きだった。
彼も私のことを好いてくれているものだと思っていた。それを”親友”なんて・・・
「そうですか・・・、苗字を忘れないいい方法がありますよ」
「もう忘れませんよ。やっぱ怒ってます?」
「いいえ、怒ってませんよ。貴方が”永江”の姓になればいいんですよ」
そう言った衣玖さんは俺に電撃をあて、羽衣でがんじがらめにして天界へと連れ帰った。
気付けば俺は永江○○となっていた。
最終更新:2011年07月10日 05:42