永遠とはなんなのだろう。
遠く永き物、それは決して終わらない。
永遠の渦中は消えない、劣らない。
果たして、それは幸福なのだろうか。
その答えは、永遠を知る者のみが答えられよう。



回りくどい映画の冒頭のように始まるが、これが今現在ただの人間である俺、◯◯の疑問である。
なぜか俺は、灼熱の炎の牢につながれている。
その状況を遠方から見ただけでもあらかた事情を理解できるだろう。
蓬莱の人の形、藤原妹紅による懇親の作である。
不思議な事に、この炎は熱いという苦痛は感じず、むしろ冬場の暖をとる心地よさのようなものを感じている。

「なぁ◯◯、お前は私を愛してるって言ったな?」
「…………うん」
「ならさ、私と同じ蓬莱人になってくれるよな?」

妹紅は、細く白いその腕を包むように俺の頬を触れる。
腕に血が通っているのか疑いたくなるような美しく、儚いその白。
だけど、それは永遠の白。
決して汚れることは無い。

「私と同じ蓬莱人になって、永遠を共に生きよう…………」

この幻想郷に蔓延る不治の病。
それに罹った者は、慕う異性の独占を求めて狂る。
彼女も、おそらくその一人。
俺にはどうする事もできないっていうのは、解りきっている。
でも…………無駄でも。

「妹紅を愛してるっていうのに偽りはない、まぎれもない俺の真意だ」
「だったら──」
「でも、俺は元の世界に帰りたいって気持ちがどこかにある」
「………………」
「それに、いつまでも妹紅を愛してられるのかなって…………すごく不安なんだ」
「だから?」

そう言うと、妹紅は俺を押し倒した。
どこぞの恋愛モノの小説とは逆、俺を妹紅が見下ろしている。
その眼は…………紅い火と真っ赤なナニかが写っていた。

「関係ない、外の事なんてすぐに忘れさせてあげるし、◯◯が私を嫌いになんてなるわけが無い!」
「………………」

「大丈夫だよ、最初はちょっとだけ死ぬぐらい苦しいけど…………」

粘り気のある音が聞こえる。
なにかが、俺の服に滴り落ちる。
緋い、緋い血。
それを見た時、俺は蓬莱人の代謝ってどうなってるんだろという、どうでもいいことを考えていた。
もはや諦めた故の、自身がこれから化る姿への関心と、自分の思い人へ興味。
赤い、朱い、茜い、紅い、緋い、マッカな血と炎。

「直ぐに…………なれるから」
「……うん」
「くあぁっ、ふぅぅぅ!あ、あああぁぁぁぁぁ!!!」
「大、丈夫?」
「大丈夫だよ……心配しないで」

蓬莱人の肝…………そもそも、人の肝じたい初めて見る。
その滴る真っ赤な血を見て、なぜかそれに惹かれる自分がいる事に気づく。
僕は、受け入れてそっと口を開ける。
いとも簡単に僕の中へと入っていった。

「よく噛んで…………味わって食べてね」

なんと形容したらいいものか。
僕の体が、それを搾り取ろうと、自らの血肉としようとしていることがわかる。
今の僕に本当の味覚、という物を認識できるのかわからない。
でもおいしいって思う僕がいるのは明らかだ。
美味、味も、歯ごたえも、舌触りも、のど越しも、食堂を通るこの感触も、胃に到達せんとするこの躍動も。
なにもかも全て、全部が快感として感じる。
あれ、なんでだろ?涙が出てる。
うれしい筈なのに、妹紅を同じモノになれるのに………………
なにが悲しいんだろ?

「ようこそ、死ぬことの無い世界へ」

別にいいか。
だって目の前に、愛しい人がいるんだもん。
この蒼い瞳には…………もう彼女しか映らない。















本当に、あっという間に外の事など忘れてしまった。
10年が過ぎ、50年が過ぎ、100年を超え………………
俺は今年でいくつになるのだろうか?

「歳なんて関係ないよ、永遠を生きるのにそんなもの」

たしかに、そんなもの羊を数えるより無意味なことだ。
永遠を生きるってなんなんだろう。
死ぬことが無いって事は、死自体が死んだって事なんだろうか。
昔…………いつだか同じような疑問を抱いたような気がする。
永遠を生きてる者ならその答えが分かるはずだって。
だけど………………

「そんな事なんてどうでもいい、今日があって明日が来て…………」

永遠だって、有限だって生きることに変わりはない。
ちょっと形が違うだけで…………なにも変わらない同じ命。
蓬莱人も、人間も、妖怪も、神も、幽霊や妖精も………………
みんな生きてるんだ、同じように、今日を。

「そして皆、明日へと進んでいく…………ただ、それだけの事」

今日もこの碧い瞳には空が澄み渡っているから。








で、一人称が俺になったり僕になったりするのは俺の力量不足と眠気によるものなんだって先生が言っていた。

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:
最終更新:2011年09月03日 23:45