仕事の帰り道、舗装された道路を歩いていたはずなのに、知らない間に竹林の中にいた。
おかしい、と思った瞬間、右肩と下半身全部を光弾に吹き飛ばされた。
なにが起きたのか理解出来ず、僕は意識を失った。
次に目が覚めた時、二人の少女が僕の事を見下ろしていた。
「あなたも蓬莱人なの!?」
起きて早々、興奮した面持ちの二人にそう訊ねられた。
蓬莱人、と聞かれても、一般人である僕にはなにがなんだか分からない。
「あの……、蓬莱人って一体なんですか?」
「あなたなにを言ってるの!右肩と下半身を吹き飛ばされたのに、生きてるどころか再生してるのよ!
これが蓬莱人じゃなくてなんだというの!」
「いや、そんな事を言われても説明の仕様が……」
全くといっていいほど僕は状況を理解できなかった。
すると、黒髪の少女、蓬莱山輝夜さんが、
ここが幻想郷という妖怪や神が存在する世界であるという事、
自分達が蓬莱人という、不老不死の存在である事、
目の前にいる白い髪の少女が、藤原妹紅という名前である事を教えてくれた。
「さぁ、私達の事は話したわ。次はあなたの事を話して頂戴」
なんだかとんでもない事になってしまった。
ここが自分のいたのとは違う世界だなんて、信じたくもなかった。
信じられないとはいえ、今は目の前の二人に自分の事を説明しなければならない。
「僕の名前は○○。僕がいたのは、医療技術が発達して、全ての人類が殆ど完全な不老不死を手に入れた世界なんだ」
僕の説明を聞いた二人は、口を開けて黙り込んでしまった。
とりあえず、いつまでもここにいる訳にはいかない。
早く元の世界に戻る方法を聞かなければならない。
「あの、元の世界に戻るにはどうすればいいのですか?」
「うーん……、博麗神社に行けば戻れると思うけど……」
「その博麗神社はどこにあるんですか?」
「もう夜だし、この竹林は妖怪が出るから、下手に動いたら危険よ。
だから、しばらくは私の屋敷に滞在しなさい。それに、不老不死とはいえ、吹き飛ばしちゃったお詫びもしないと」
「輝夜、他人に頭を下げた事もないお前がなにを言ってるんだ!
この竹林は私の庭、○○を博麗神社に送り届けるなんて造作もない事だ。○○、私と一緒に来るんだ」
「右肩を吹き飛ばしておきながら、お詫びも出来ないなんて、流石は蓬莱人形ね」
「なんだと!」
険悪な空気が漂い始めた。このままだとまたさっきの喧嘩に発展しかねない。
「お詫びは結構ですから元の世界に戻る方法を「○○、私と一緒に来なさい」えっ、うわっ!」
いきなり輝夜さんに手を掴まれ、空高くに浮かび上がった。
遥か地上では、妹紅さんが大声で叫んでいるが、なにを言っているのか分からなかった。
「大丈夫よ、○○。私の屋敷にはあんな汚いのはいないから。ゆっくりくつろぎなさいな」
「出来れば早く帰りたいのですけど……」
永遠亭での生活は、屋敷の住人である永琳さん、鈴仙さん、てゐさんが世話してくれたので非常に快適だった。でも、
「○○、貝合わせをして遊びましょう」
「○○さん、あなたの世界の医療について、私の部屋でじっくりとお話したいのだけれど」
ここに来てから早十日、一向に博麗神社に連れて行ってくれる気配がない。
よくしてくれるのはいいのだけれど、最近外がうるさい。あと輝夜さんと永琳さん、くっ付きすぎ。
「あのぉ~、いつになったら元の世界に戻れるのでしょうか?」
「そんなの後でいいじゃない。貝合わせが嫌なら、お昼寝でもいいわよ」
「○○、私の部屋が嫌ならラボに来てくれない?不老不死同士で、子「大変です!妹紅に門を突破されました、こちらに向かっています!」なんですって!」
「○○、大丈夫か!汚されてないか!」
「あっ、妹紅さん、別に怪我はしてませんけど」
「私の○○を奪いに来たのかしら妹紅。堕ちたものね、人形!」
「私のおむ……サンプルをみすみす奪われる訳にはいきません!」
「○○、今すぐ助けてやるからな」
「あの……、博麗神社は……」
ほんと、いつになったら帰れるのだろうか。
弾幕勝負を始めた三人を見ながら、僕はそんな事を思っていた。
最終更新:2021年08月15日 04:25