地上に堕ちた月兎
月の都 そこに一際そびえる窓一つない高層建築物。
遠目には墓標と見える、その建物が何のためにあるかはわからない。
いつ誰が呼んだかわからないが、人々は「白亜の牢獄」と呼んだ。
「○○さん夕食をお運びに参りました。」
ウサギの耳をつけた少女がカートを押して部屋に入ってきた。
ふと壁をみると、白い壁には無数の数式が刻み込まれている。
ウサギ耳の少女
レイセンはそれが何を意味しているかは想像すらできないが、それこそが○○が地球から拉致された原因であることは明確だ。
地上人の月面侵略。
辛くも月の都を発見されることはなかったが、見下げていた地上人が月まで飛ぶ技術を持っていることは大いに恐怖を抱かせた。
月面人か下した決断は地上の技術者、研究者を「文明を発達させない」ために月に拉致する。
部屋の主、○○も量子力学の研究からここへ拉致されたのだ。
レイセンがうずくまって必死に何事かを書きなぐっている○○に声をかける。
「○○様、夕食が冷めてしまいますよ・・・」
「うるさい!!!!」
○○の拳がレイセンの白い肌に痣をつける。
「いらないお世話なんだよ!!!この気味悪い獣人めが!!!」
「ごめんなさいごめんなさい」
「黙らせてやるよ・・・・」
○○の手がレイセンの着物を引き裂く。
行為が終わった後、レイセンは人目から隠れるように自室に戻った。
「うふふ・・・今日も○○様に愛されちゃった・・・」
○○は研究を辞めない限り地上に戻ることはないだろう。
そうしたらずっと○○に愛してもらえる。○○を一人占めできる。
レイセンは自らの肉体に残る○○の残り香に包まれ目を閉じた。
「あーあ、○○くんもっと慎重に行動しないと!」
「すみません教授。敵は内輪だけだと思っていました。」
「まあいいわ。あなたが研究していた数式方量子ビーコンも完成したし。あとは研究用の実験体を確保したら戻るわよ。」
「それなら・・・・」
レイセンの願いは叶った。
愛しい想い人を一人占めにすること。
「おら!獣人!餌の時間だぞ!!!」
「はい○○様!!」
愛しい○○が毎日世話をしてくれる。
毎日きょうじゅという人の目を盗んで私を愛してくれる。
レイセンは幸せだった。
最終更新:2011年09月29日 19:49