その穴蔵というか霊廟には、中華っぽい姉ちゃんと、烏帽子被った姉ちゃんと、足が真っ白な姉ちゃんと、ヘッドホン付けた姉ちゃんが居た。
何でも少し前に復活して、けんじゃ……隙間妖怪及び九尾の狐と死闘を繰り広げた後でやっつけられたらしい。
いやいや、確かこういう時には巫女とかが出て来るんじゃないか?と思ったんだが。
後々で調べて見たら、
紅白巫女:休業中 白黒魔法使い:音信不通 山の上の巫女:産休中 冥界の従者:主命で屋敷の外周を閉鎖中
らしい……これ、全部男絡みらしいんだけどな。もう、終わってないか幻想郷?
霊廟をぶっ壊した罪で修理が終わるまで霊廟から出して貰えない事になった。
事故だし関わり合いを深めたくないんで色々反論してみたが駄目だった。
4人で顔を合わせてヒソヒソ話しているので何だか気味が悪い。
……まぁ、最悪の懸念の予兆はまだない。その雰囲気はまだ出てないからだ。
寝る時以外と食事以外はせっせと修理する時間に充てる。
霊廟の所為か、湿度と温度が低い。まだこの時期なら快適だろう。冬場は最悪だろうが。
この調子なら穴が塞がるまで後数日というところか。早いところ家に帰りたい。
チャイナな姉ちゃんがしきりに話しかけてくるようになった。
道教だの不老不死だの小難しい事を講釈してくる。何か胡散臭い。隙間妖怪並に。
烏帽子の姉ちゃんを軽く煽てて話を引き出して見る。ぶっちゃけられた。アホだろコイツ。
何でも幻想郷全体に道教を広げるべく話し合いをしてたら、俺が降ってきたので尖兵にしたいらしい。
その手の宗教には興味ないと言ったら白い足の方に「おろかものめが」と言われポカポカ殴られる。
ヘッドホン付けたのが出て来て「ばれてしまっては仕方がない。修理は大まか終わったけど貴方を監禁です」
と言うわけで俺は監禁された。勝手に真相を喋って監禁ってマジどうよ。
何だか雰囲気が悪くなったので顎に拳銃を押し当てて引く事にした。
悪いが、孤高を自負してるんだ。主体性がなくて女の言いなりになる奴らと同類になるのはちとご免だ。
女の為に生きる気力が抜けた俺だ、こんな事で死ぬのもありかもな。
アディオス、幻想郷
何故か生きていた。死んだ筈なんだけどなぁ。
チャイナ曰く「半死半生だったので生きている内に施術を行い、終わった後で1回死んで貰いましたぁ」
ああ、そうか。だからあのおっぱいのでかい船に乗った姉ちゃんの手前で水平バンジーした訳だ。
霊廟にゴムの基点を設置して、ぐいーんって戻る感じ。まぁ、それはそれとして俺は今尸解仙らしい。
ドヤ顔をしているチャイナと烏帽子が言うには、肉体を一度滅ぼした後で再構成した仙人が尸解仙だとか。
修行もしてないのに仙人になれるのかねぇ。その辺は烏帽子辺りが風水でどうにかしたらしい。アホだけど術者としては一流のようだ。
ああ、どうでもいいけど、何で何時の間にこの霊廟の一員に組み込まれてるのか。
取り敢えず烏帽子の両肩をガクガク揺らしながら問い詰めてみた。
取り敢えず霊廟から脱出し……現主力拠点である洞窟に撤退したけど何故かチャイナが住み着いてゐた。
大喧嘩した後なのにあっけらかんとお帰りなさいとか言いやがる。
暇なんだなと嫌味を言ったら「布教はまだ準備段階だし、修行したいと思ってた巫女が引き籠もりになったので暇」らしい。
霊廟の主である神子曰く「まだ尸解仙になったばかりで動揺してるのだろう、同志の気が落ち着くまで家に帰そうじゃないか」だとか。
…………話聞いてないじゃねぇかアイツ。相変わらずあのヘッドホンとは会話が成り立たない。
ウンウン頷く割にゃあ、最終的な結論は全てアイツの主張だったし。
やはり、女ってのはどうにもならん生き物かも知れない。
勝手に住み着いている割にはせっせと自分の領域を作ってやがる。
俺を見る視線も親しみと…………例の粘っこい感じが出て来た感じだ。
情というものは人間と人間を繋ぐのに必須だ。
だから粘着質なのも、当たり前だと思う。接着剤みたいなもんだからな。
俺は観測者だった所為かもしれん。人間関係の粘度みたいなものがこっちに来てから見えるようになった。
俺を見るチャイナの視線、偶にやって来ては好き勝手講釈垂れていく烏帽子の視線。
粘度が徐々に強まって来ている感じだ。やばい兆候かもしれん。
対策を考えないといけないかもな。俺は何とか取り戻したセミオート拳銃のスライドを滑らせた。
続く
最終更新:2011年09月29日 20:27