幻想郷の夏、満遍なく大地は干からびる季節だというのに、
とある一角のみ、季節が狂っていた。
「○○、早くここを開けなさい」
「あっけろー、○○っ!」
○○の家の戸をガンガン叩いているのは、
冬を象徴する妖怪レティ・ホワイトロックと、氷精チルノ。
「○○、私の旦那になってくれるのなら、冷や飯、冷や汁、かき氷を一日三食毎日作ってあげるわ」
「今なら、あたいもムスメとしてついてくるよー」
「僕をトイレに監禁するつもりですか!っていうか、あなたは冬以外は冬眠してるはずじゃ……。
それになんで一緒にいるんですか!仲悪いはずでしょ、二人共!」
「なぁ~に言ってんのよ、○○。例え夏だとしても
チルノの力を使えば、
私の周囲だけを冬にするなんて簡単な事よ。それに、確かに妖精は嫌いだけど、チルノは別よ」
「あたいも
レティのおっぱいすきだよ」
「さぁ、○○も私の胸に「ちょ~と待ったぁ~」
遮る声が○○の後方から聞こえた。見やると、
リリーホワイトが窓に張り付いていた。
「寒いだけでなんの娯楽もない冬なんかよりぃ~、私と一緒にいる方がいいに決まってるじゃないですかぁ~」
「リリーさん、あなたの出番はまだ先ですよ!なにやってんですか!」
「○○もあったま悪いなぁ~。私はそこの冬妖怪とは違って冬眠なんてぇ~、下等動物みたいな事はしませんよぉ~。……春眠はしますけどねぇ~」
「別にうまくもなんともないですよ!」
「さぁ~、○○ぅ~。私と一緒に始まりの季節を謳歌しましょうぉ~」
「そっちにとっては始まりでも、こっちは人生の終わりだよ!」
「そんな○○にぃ~、春度十枚ぃ~!景品はこの私リ『はいはい、ストップストーーーップ!』
今度は屋根の方からダブった声がした。ここまで来ると、もう○○は驚かなかった。
「静葉さんに穣子さん、あなた達も来たんですか……」
「流石は○○」「声だけで分かるなんて」「やっぱり私達」『運命の赤い芋で繋がってるんだね!』
「ちょっと、そこの鬱病姉妹神、なに出しゃばってきてんのよ!」
「さっさとあなぐらへかえれー、べにぶたー」
「秋帰れぇ~」
「四十路おばさんとあーぱー二人は無視して」「○○、私達と一緒に暮らしましょう」
「梨に紅芋、栗に松茸、おいしい物が食べ放題」「夜の読書にスポーツやり放題」
「冬にも春にもない娯楽がたくさんの秋を」『当然、○○は選ぶよね』
「……否定できない自分が悔しい……」
そんな事を言ってみた○○であるが、どれを選んでも人生は終了間違いなしである。
どうしたものか、と悩む○○に電流が走った。
「……分かりました、今決めました」
「やっと決めたのね、○○」
「それじゃあはやく」
「この中で誰と永遠を生きるか」
『選んで頂戴!』
「僕は、夏の象徴と一緒に生きる!」
「……えっ……?」
さっきまでの熱気が嘘の様にその場は凍り付いた。
「なっ……なに言ってるの、○○」
「ここにはそんなのいないよ」
「もしかしてぇ~、風見幽香と
リグルの事を言ってるんですかぁ~?」
「あの二人は」「ひまわり育ててるだけなのと」「原形が蛍なだけの」『見せ掛けのハリボテですよ』
「今いないとしても、僕は夏の象徴が来るのを待ち続ける!例えそれがテルテル坊主だったとしても!」
熱く語る○○。しかしそのせいで、辺りは妖気に包まれた。
「○○、あなたはきっと疲れてるんだわ。今すぐその考えを修正してあげるわ!」
「しゅーせーだー」
「ついでにテルテル坊主も春祭りに上げてあげるですよぉ~!!!」
「気は乗らないけど」「今は○○を正気に戻す事が」『先決みたいね!』
なぜか結束してしまった、妖、精、神の四人が本気で家を破壊しに掛かってきた。
その時、
「にぎゃぁあああ!」
「あーれー」
「るきゃぁあああああ!!」
『ウボァアアア!!!』
凄まじい光線が、包囲している四人を的確に吹き飛ばした。
慌てて外に出てみると、そこにいたのは、
「無事だったかしら、○○」
「よかった、まだ手は付けられてないみたいだね」
先ほどまで話題に上がっていた風見幽香とリグル・ナイトバグだった。
「あの、助けてくれてありが……うぷっ……」
「お礼なんていいわよ。あなたはこれから私達の旦那様になるんだから」
お礼よりも先に、○○は幽香に抱き締められてしまった。大きな胸が○○の鼻と口を塞いだ。
「ん~ん~ん~(それはどういう……)」
「それは私が説明するよ」
幽香の横に立っていたリグルが、口を開いた。
「さっき○○が私達の事が好きだっていうの虫の報せで知ったの。いやぁ~、あれには流石に驚いたよ」
「ん~(そんな事言ってない)!」
「照れない、照れない。分かってるから。じゃあ早速、花人になるための種を植え付けましょうね。……あなたにも私にもね」
「○○の蜜は美味しいんだろうなぁ~。後でいっぱい注いでね」
「ん~(誰か、助けてぇええええ)!!!」
○○の絶叫は、幽香の胸の谷間に消えた。
最終更新:2011年09月29日 20:41