お山の神社への距離は、即ち外来人にとっての外界の距離と言う。

こっちに来たその日に帰るならほんの数時間。

誰かと縁が深くなった後だととても遠く。

誰かから好かれてしまったら、彼岸よりも遠くなってしまう。


愛情が縁が狭まるほど、外界との縁は遠離ると言う。


「まぁ、俺にとってはどうでもいいけどね」

外界から来た若い衆を神社まで送り届けてから、俺は山道を下っていく。

「後生だ見逃してくれ~!!」
「絶対に逃がさないわよ!!」

少し離れたトコでドカンドカンと爆発音が聞こえる。
多分、どこぞのカップルが帰るだの帰さないだの騒いでるだけだろ。

連中の気持ちは察する事は出来ても理解は出来ない。
少なくとも嫁さんと出会ってから今まで、帰る気にはならなかったからだ。

連中の様に1m神社に近付く毎に弾幕が激しさを増すような事はない。
今日だって思い人と共に境内を掃除する青年を託す為悠々と神社を出入りしている。

神社にたどり着く為に戦列を組んでは突進し、悉く阻止されお持ち帰りされている青年達を見送りつつ思う。

「気持ちのすれ違いってのは悲劇だなってね……」

さあ、嫁さんの待つ家にたどり着いた。
今日も良い仕事とボランティアをした。良い気分だ。

「ただいま、帰ったよ幽香」

僕の、腰からぶら下げていた鞄から、蔦や枝をしならせて朝顔やら瓢箪やら夏の草木が降りていく。
それらはスルスルと玄関脇の鉢植えへと戻っていった。

「……心配性なのは解るけど、もうちょっと信用してくれてもいいかなって思ったり」

博麗神社への出入りも、巫女に思い人が居るから許可しているようなもんなんだろうな。
取り敢えずお帰りの挨拶の前に俺にギュッと抱き付いているカミさんの頭を撫でてあげながら、俺は小さく嘆息した。

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最終更新:2011年11月06日 11:49