あの人と共に歩み始めてから長い年月が過ぎた。
彼はシャイだから、人前では滅多に甘い言葉を口に出さない。
それは二人きりになったときでも同じだ。
それでも、未だに彼が自分を愛してくれているのが私には分かる。
「ねぇ○○、お嬢様がまた変なことを思いついたみたいだよ。
なんでも、自分の持っている珍しいものを展示して、人里の住民達に見てもらうんだって」
あの方も最近いろいろなものに手を出すようになったわね
でもこんな辺鄙なところに人が来るのかしら……
「大丈夫だよ、あの門番さんなら。面倒見も良いし、頼りなさそうだけど結構明るいところもあるから沢山人を連れてきてくれるはずだよ。」
そうね、私も本当に世話になっているわ。
あなたと私を引き合わせてくれて、こうした関係になれたのもあの子のおかげだもの。
……でも私としてここにあまり多くの人に来て欲しくないわね。
「どうして?」
だって……
私は、布団の中で背中をむいている彼のお腹に腕を回して、手のひらで軽く撫でる。
彼の暖かさが直接感じられる。
彼は軽く身じろぎするが、決して払おうとはしない。彼なりの愛情表現だ。
今だってそのことで二人の会話の時間を取られているのに、これ以上忙しくなったら二人でいられる時間がなくなっちゃうわ。
私がそう言うと、彼は背中を向いたまま私の腕に自分の腕を重ねて恥ずかしそうに、そうだね、とつぶやく。
でも、いざとなったらあの方に頼んで二人だけの時間を作ってもらうから、そこでいっぱい楽しみましょうね
すると彼はこちらに寝返りを打ち、少しびっくりしたような表情を作った。
「お嬢様って、時間も操れるんだ。○○と同じなんだね」
彼の綺麗な瞳に写っているのは、長い銀色の髪をした少女。
私の名前は○○。彼がこの世で最も愛する女。
最終更新:2011年11月10日 17:53