本日はバレンタインディ。
まるで攻城戦の末期の様相と化した外来長屋……はさておき。
人里では永遠亭の薬師がニコニコ微笑みながら洋菓子屋のオープンカフェでチョコレートをほおばっていた。
「おや、薬師さん。もうプレゼントはお済みですかい?」
一通り女性妖怪にチョコレートを売り払い切って一段落したのか、店主が声を掛けた。
「ええ、丁度今楽しんでいるところなの」
「は?」
そう言えば、薬師はプレゼントを買いに来なかった。
今こうして店で出している特製チョコレートパフェバレンタイン仕様(二人分でストローも2つ)を食べている。
「だって薬師さん、随分長屋の○○にお熱だったじゃないですか。てっきりプレゼントしたのかと」
薬師は遂に事前の材料購入すらせず、こうして当日を迎えている。
手作りではないのは店主がよく知っているのだ。
「ええ、だから、今こうして楽しんでいるの……二人でね」
クスリと妖艶に笑い、彼女は自分のお腹を優しくさすった。
「ホワイトデーは季節外れか、来年のお楽しみになりそうねぇ……」
店主はごゆっくりと頭を下げ、そそくさと店内に戻ったのであった。
最終更新:2011年11月10日 20:42