「おはようございます○○様、今日も良い朝ですよ」
「咲夜さん、幾らお客でもそこまで畏まらなくてもいいですよ」
「あら、そうかしら?」
豪華な、屋根付きのベットがある部屋で目覚めた○○は、屋敷で働いているメイド長のモーニングコールを受けた。


「今日も良い天気だなぁ……」
ブラブラと屋敷の周りを、朝食後の腹ごなしに散策する。
固く閉じられた門。補強された鉄柵。そして咲夜が手入れをしている花園。
「精が出ますね。これって綺麗なバラですね。ピンク色なのかぁ」
「ええ、十六夜薔薇って言うのよ」

昼食後、○○はちょっと気になった小説の続編を探しに行く。
咲夜が案内してくれて、直ぐに探してた書棚にたどり着く事が出来た。
書棚に囲まれた机で小説を読む。コチコチと鳴る柱時計以外に音は鳴らない。
「○○、そろそろお茶にしないかしら?」
香しいダージリンと、焼き立てのスコーンと共にニッコリと咲夜が笑顔を浮かべた。


夕食の時間。
大広間の長い机には○○と咲夜が食事している。
本当は立場上別々に食べる事になっているのだが、○○の要望で一緒に食事をしていた。
それでも咲夜は甲斐甲斐しく世話を焼く。スープを足し、ワインを注ぎ、肉を切り分け、魚の骨を取る。
正に完璧なサービスを受け、○○は上機嫌で食事をした。
ただ、少しだけテーブルが広すぎて、寂しいような気がしたが咲夜の手前口や態度には出さなかった。


夜、○○は自分の寝室へと戻り、小説の続きを見ていた。
この部屋はこの屋敷で一番広くて豪華な部屋だという。
○○がこの部屋に移動してきてから付けたという大きな窓と天窓から、月夜の透き通るような光が差している。
「○○……」「咲夜さん……」
湯上がりの甘い匂いが後ろからベットに腰掛けていた○○を包み込む。
背中に柔らかい身体が押しつけられ、そして自分を包み込む白い肌の両腕。
反応する前に唇を塞がれ、○○はベットに押し倒された。
「○○……私だけを、見て、私は貴方だけ居れば……」「咲夜……」
白い裸体が視界を埋め、熱い感触に包まれながら、何故か○○は涙を流していた。

ああ、何で、こんなに寂しい感じがするんだろう。
咲夜さんが、ずっと僕の傍に居てくれているのに……。
どうして?


ひっそりと静まり返り、門が堅く閉ざされた紅魔館。
夜風と時計の音しかない屋敷の中で、二人の吐息のみが響いていた。

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最終更新:2011年11月10日 21:20