「私から離れるなよ。数は少ないが獰猛で人間を食い物としか認識してない奴が居るからな」
そう言うと彼は大人しく私の後を続いて来る。
背後に見える屋敷は、全くの静けさに満ちていた。
竹藪の中も同じように静けさに満ち、時折吹く風が揺らす葉の音程度しか聞こえない。
まるで永遠亭と、その住人が放つ狂気に怯え、竹林そのものが息を潜めているかのよう。
「大丈夫だ、このまま行けば一刻足らずで私の家だ。里まで行くには夜道は危険だからな、私の家で世を明かそう」
しかし、彼は、○○は気付いてない。
竹林が静まり返っているのは、永遠亭から放たれるモノだけではないんだ。
「大丈夫だ、○○、心配する事はないさ。このお礼は行きつけの酒屋の一升分の清酒で充分だよ。お前と私の仲じゃないか」
そのお酒で、三三九度の盃をしよう。何、お前と私の仲だ、まさか拒む事はないよな?
結局、○○が里に帰り着く事は無かった。
最終更新:2011年11月10日 22:40