お燐が倒れた。地上の宴会でタマネギをかじったら急に倒れたそうだ。
かなり危険な状態だったらしく、完治まで1………たくさんヶ月かかるらしい。
当分の間は一人で灼熱地獄の管理の仕事をやることになる。
いつもは私とお燐の二人で仕事をこなしていたから、いざ一人だけとなると大変だ。
 …と、思ったら、臨時で代理の相方が入ることになった。
代理の名前は○○といった。私と同じさとり様のペットだ。
…その名前に聞き覚えがあるような気がしたけど…気のせいだろうか?

 仕事を手伝ってくれるのはいいけど、必要以上に馴れ合う気にはならなかった。
私のことがわかるのはお燐だけ。私が真に心を許せるのはお燐だけ。お燐だけでいい。
そう思って、私は必要なとき以外はできるだけ○○に話しかけないようにしていた。
だけど…何のつもりか○○は積極的に話しかけてきた。
 ○○は妙に馴れ馴れしかった。言ってる事がよくわからないし、なんとなく気に食わなかったので、
最初のうちはひたすら無視していたけど、いつからだろうか?どうしてだろうか?
気がつくと、私の方から○○に話しかけるようになっていた。

 暇ができるとひたすら語り合うときもあった。
仕事が終わった後、一緒に遊びに出かけることもあった。
初めてのお燐以外の「友達」…でいいんだろうか?

○○と一緒に過ごす時間は、今までにないくらいに充実していた。…そんな気がした。
でも、その時間も終りがやってきた。お燐が復帰して、○○がお役御免になったからだ

―――

 仕事場に行っても○○はいなかった。その代わりにお燐がいる。
それは嬉しい。お燐がいてくれるのは嬉しいことだ。
そうなんだけど…どうも落ち着くことができなかった。
数ヶ月一緒にいた奴がいなくなっただけなのに、どうしてこんなに辛いんだろうか?
○○がここにいれば、この辛さはいくらか和らぐんじゃないか…。
 …ねえ、○○はどこ行ったの?
ついそんなことを呟いてしまったら、思いもよらずお燐からの返事があった。

「仕事終わったら会いに行こうか。」

 今すぐじゃだめ?そう言ったら即・却下された。

 長い長い、とても長い。途方もなく長い仕事時間をようやく終えて、私はようやく○○のところへ
行くことができるようになった。
お燐と一緒に○○が居る部屋まで全速力で直行。○○の姿が…ついに見えた。
一日ぶりの○○の姿。私は思わず駆け出…そうと思ったら、お燐は一足早く○○に向かって駆け出していた。
そして嬉しそうに○○に飛びついくとこう言った。

「○○!代わりに仕事やらせちゃって悪かったね!」

 ○○は飛びついてきたお燐を受け入れ、お互いに抱きしめあった。

  抱きしめた。
   抱き しめあう?
    …抱きつき。
     抱 き し め あ っ た。

 そのとき、私は強烈なめまいに襲われた。頭の中がもやもやして、何も考えることができなかった。
今、目の前で何が起きているこの現象はなんなのか?これはどういうことなんだろうか?

「苦労かけた分、誠心誠意お返しを…っとっとっと。悪い、お空。」
 お返し?お返しって、何の?

「お空?その様子だと…忘れたのかね?何度か言ったんだけどなあ。」
 何を…なんだって?

「あたいは○○と付き合ってるんだ。こうして三人で顔を突き合わせるのは初めてだね。」
 付き合ってるだって?

「○○もお空のことを気に入ってくれたみたいだし。あたいら仲良くやっていけそうだね。」
 仲良くやっていく?お燐が誰と?○○が誰と?私が誰と?

 お燐は○○の側にいる。○○はお燐の側にいる。私はそれをただ見ているだけ。
それが意味することは―――

 ………気がつくと私は、全身全霊の力をお燐に叩き付けていた。

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最終更新:2011年11月11日 23:58