諺で「秋茄子は嫁に食わすな」とある。
あれは何も嫁いびりではなく茄子は体が冷やしやすく、また種子が少ないから子宝が恵まれなくなるからだと一般的にはそう知られている。

しかし、「嫁」とは本来は「夜目」であり収穫して越冬のために蓄えてある食料を獣に食われないように用心する意味合いもあるらしい。


そんな言い伝えを外来人の青年〇〇は危機的状況で考えていた。


少し前に幻想郷に迷い込んで来た〇〇は森で迷っていた所を偶然にも滝行をした帰りの聖白蓮に助けられ、命蓮寺で暫く世話になっていた。
幻想郷について説明を受けた時に、神、妖怪、妖精が当たり前に居る世界に驚いていたが寺にも居るその者達みたいに善し悪しのが居ると理解した〇〇は気さくに、または大らかに接していた。

しかし最近、〇〇も寺の手伝いをしていたこともあり里の空いてる小屋に住むことになり命蓮寺を出て行った。
その事を不服だったナズーリンは自分の使役であるネズミを使って〇〇を常に見ていた。

そんなある日、ナズーリンは見てしまった、知ってしまった。
〇〇と里の娘が仲睦まじい光景を。
彼女は焦燥感を隠せなかった…が、すぐに行動に出た。

「そうだ、〇〇を私が救おう。」

秋になり夜が長くなり〇〇は早々と床についていた。そんな時にふと、何かの気配に目を開けると雨戸からの僅かな月の光でナズーリンが立っているのがうっすらとわかった。

「やぁ、〇〇久しぶりだね。」

「ナズーリンさん、一体いつからそこに?」


「いつからって、いつもだが?」


「…え?」


「そんな事より、〇〇。秋も深まって夜半はどうも体が冷える。暖めていい夢を見せてくれないかい?」

そう言って〇〇の床に入って来るナズーリンの顔は歪んだ笑顔をしており、逃れられそうにない状況に〇〇は引き攣った笑顔で笑った。

「ははっ。」

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最終更新:2015年05月06日 21:05