日記代わりにしていた古びたノートに最後の言葉を書くと、○○は湯屋へ赴き身を清める。

○○は身を清め終えると待っていてもらった黒谷ヤマメとともに妖怪の山へと消えた・・・


外来人○○は他の外来人と同じく金子を貯める為にありとあらゆる仕事を行っていた。

無論、楽しみも必要だ。

予てより昆虫採集を趣味としていた○○にとって幻想郷は宝の宝庫だった。

モルフォ蝶を○○が追い森の奥深くまで分け入った時、水浴びをしている彼女と出会った。

濡れた髪と健康的な肌、そしてその蜘蛛の足に魅入られてしまった。

やがて御用聞きとして地下へもぐるようになると○○とヤマメはその距離を縮めていった。

そして・・・・


何時もの洞窟

そこには○○が貯めていた金子全てを使った結婚衣装を着こんだヤマメを抱きしめる○○の姿があった。

幸せに満ちた○○と対照的にヤマメの表情は浮かない。

「○○・・・・本当にいいの?」

「ああかまわない。こんな美人と夫婦となれて幸せだ」

ヤマメは意を決し、○○から送られた結婚衣装を脱ぎ棄てた。

服に隠された蜘蛛の足を広げる。

グロテスクで官能的なその姿に○○もまた服を脱ぎ捨ててヤマメを抱きしめる。


洞窟に男女の喘ぎ声が木霊し、汗と淫臭が包む。

○○もヤマメも何度絶頂を迎えたかわからない。

ヤマメが絶頂を迎え、○○を抱きしめた時だ。

○○から紅い花が咲いた。

ヤマメが○○の首筋に喰らいついたのだ。

ヤマメが歓喜と悲しみの涙を流しながら尚も男を貪る。

男は悲鳴をあげることも抵抗することもなくただただ、穏やかな表情でヤマメを見つめていた。


○○は冷静に自分を見つめていた。

生きたまま貪り食われているのに、彼は痛みを感じることもなくその心は幸せに満ちていた。

以前、交尾をした後牝に貪られるカマキリの雄について考えたことがある。

ああこれが俺の生きた意味か・・・

視覚が闇に包まれながら○○はそう思い至った。


ほの暗い空間。

初めてみたときは広く感じていたが、今は身をかがめても狭いくらいだ。

足を広げた時だ。

その空間にヒビが走り、光に包まれる。

「やっと生まれたかい?坊や」

光に慣れるとヤマメの顔があった


どうやら俺は土蜘蛛に転生してしまったようだ。

ただの楽しみで殺生を行った報い?

それとも何らかの能力?

ヤマメが怪しげな術を使った?

様々な疑問が浮かぶが、未だ話せない身の上で確かめるすべはない。

ただ、あの全てを投げだしても得られない極上の快楽がまた味わえると思うと歓喜に震えていた。

「おや、おしっこかい?まだまだ赤ん坊だね~」

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最終更新:2011年11月13日 10:13