(あー、家の周りが暗いな、またルーミアが居るのか)
自分の家が少々辺鄙な場所にあるためか、俺は妖怪と多少の交流がある。
また冷蔵庫の食料を漁られているのかと思いながら俺は玄関の戸を開けた。
「あっ、お兄ちゃんお帰りなさーい」
どうやって入り込んでいたのやら、宵闇の妖怪ルーミアが家に居た。
それだけなら、まだよくあることだった、だが……
「! おいルーミアその腕はどうしたんだ!」
ルーミアの右腕が根元からざっくりと切断されており。
下の床にはキッチンの方から血の跡が点々と続いていた。
「あっ、これはねー、ちょっとお料理の材料に使ったんだ」
「料理!? それより早く手当てをしないと!」
「あ、傷は大丈夫大丈夫、時間が経てばこれぐらいすぐに治るから。
それよりも、私の作ったお料理食べてほしいな……」
そう言ってルーミアはキッチンの方に飛んでいった。
「あ、待て!」


「えへへ……どうかな?」
キッチンの机の上に置かれているのは少し大きめのハンバーグ、材料は言わずもがな。
この辺りの血の量は特に酷い、強烈な血の臭いは掃除してもしばらくは取れないだろう。
「ルーミア! 何でこんな事したんだ!」
「ふえ? 私いけないことしたの?」
「自分の腕を料理するなんて、どう考えてもおかしいだろ?!」
「えーそうなの? お友達の妖魔の話では、好きな人には自分の体を材料にお料理
をするのが愛情表現になるって聞いたんだよー?」
「……ルーミア、気持ちは俺も嬉しいよ。でもな自分を傷つけてまでこんな事をするのはおかしいと思うんだ」
「じゃあ、人間はこんなことしたりしないの?」
「まあ、そうなんだよ、妖怪どうしならたぶんいいと思うんだけど、人間相手にこれはな……」
この光景を見たのが普通の人間だったならば、嘔吐や気絶は避けられないだろう。
では、何故俺が平気かと言うと、ルーミアが頻繁に自分の食事をここに持って遊びに来るからで。
ここで食べるのを止めろと言っても聞いてくれないので、こちらも血の臭いや死臭には慣れてしまった。
知り合いに聞いた話では、曰くこの家は死霊の館だとか呼ばれているらしい。
「うん、分かったもうしない」
「そうか、それならいいんだ」
「だから、お料理食べて?」
「うん?」
何だか、不吉な言葉が聞こえたような……
「もうしないから、私の作ったお料理食べて?」
(……これを食べろと言うのか)
外見上は何の問題もない、かかっているケチャップは周りのせいで血の様にも見えるが。
だが、一番問題なのはこのハンバーグを美味しそうで食べたいと思っている自分ではないだろうか?
「私が愛情を込めて作ったからとっても美味しいよ?」
厄介なことにルーミアの目と視線からは純粋な好意と愛情しか読み取れない。
(そういえば、好きだとか愛情表現だとか言ってたな……
料理の衝撃で忘れかけていたけど告白されるなんて思わなかった)
上目遣いでこちらを見ているルーミアに、どう対応すればいいか頭を悩ませる俺だった。

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最終更新:2011年11月13日 14:04