紅魔館

その大広間を少年が逃げ惑う。

少年を追うのはかつて母親と慕った少女、レミリア・スカーレット。

「○○つーかまえた」

鉤爪のような指が少年の服を引き裂き、中性的な肢体を曝け出す。

レミリアがごくりと喉を鳴らす

「嫌!お母さん助けて!!」

少年が懇願するが、レミリアからは返ってきたのは平手打ちだけだった。

「お母さん?下賤な人間のくせに!」

少女の牙が○○の首に喰らいつこうとした時だ。

虹色をした弾幕が殺到する。

「美鈴おねえちゃん!」

「早く逃げてください!人里まで逃げれば大丈夫ですから!」

「主人の楽しみを邪魔するなんて・・・・その身引き裂いてくれる!!」

○○は走った。

「咲夜追いなさい」

「はい」


「○○さんはうまく逃げましたかね。お嬢様」

「咲夜なら○○を傷つけずに人里まで誘導できるわ・・・・」

「お嬢様・・・・」

「人として生きなさい○○・・・・」


○○は赤ん坊の時に幻想入りした。

隙間妖怪からの「贈り物」として。

人里で育てることも考えたが、それでは吸血鬼としての威厳が損なわれる。

そこで、熟成させてから収穫すると偽って○○を育て始めた。

だが、○○が成熟するにつれ吸血鬼の本能が頭をもたげ始めた。

○○を貪り尽くしたい、犯し尽くしたい。

レミリアは「家族ごっこ」を自らの手で終わりにすることにした。

もう○○はレミリアをお母さんとは呼ばないだろう。

それでいいのだ。

隙間妖怪からの贈り物でも○○には自らの人生を歩む義務がある。


傷だらけの身体を引きずって○○は人里に辿りついた。

何があったのか、何一つ答えることなく・・・・


半年後

人里で御用聞きをしながら○○は生活していた。

森の中を進むうちに懐かしい気配に気付き○○は振り向いた。

瀟洒なメイド 十六夜咲夜が立っていた

「○○さん・・・お久しぶりです」

「咲夜おねえty・・・・」

咲夜の手の内には湯気を放つ何者かの臓物が握られていた。

「許してください○○さん・・・・・」


レミリア・スカーレットは○○を失った後、笑顔を失くしてしまった。

そしていつにもまして尊大に振舞うようになった。

「咲夜!咲夜は何処!」

「ここに・・・」

人形のような表情からは何事も伺えない。

「本日は特別な趣向を用意いたしました」

「何か特別な日だったかしら?」

「ええ・・・・」

レミリアの前に大きな箱が運ばれる。

箱の中には・・・・

「○○ッ!!」

花婿姿の○○。その胸には銀のナイフが突き立てられている。

「従者あるべき姿とはは主人のしたいことを実現することでございます」

「貴様ァァァぁッァぁぁッァぁl!」

レミリアの紅い瞳から銀の涙が流れる。

その腕が咲夜の細い首を砕こうとしたときだ。

「お母さん・・・・」

甘い吐息

柔らかな肌

芳しい洗い髪の香り

そこには生き生きとした○○が立っていた。

「どうして・・・」


咲夜の手の内にあったもの

それは蓬莱人の生き肝だった。

何時までも繰り返す永遠ニート姫と焼き鳥女の殺し合い。

咲夜は時を止め、負けた方の生き肝を頂いてきたのだ。

「これを食べるということは人を辞めることです。それでもあなたはあの方と一緒に歩んでいく覚悟はおありですか?」

咲夜の脳裏をかつて、敬愛する主人から掛けられた言葉が過る。

「お母さんにここまで育ててくれたんだ。そのお母さんが苦しんでいるなら僕にできることならなんでもするよ。」

その眼差しには迷いはなかった。



「だからお母さん・・・・僕を食べてもいいんだよ」

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最終更新:2011年11月14日 09:19