俺は薄暗くて何も見えない所で目覚めた。
いや、ぼんやりと人影が見える。
「おはよう、目は覚めたかしら」
ああ、その声は紫……
目を凝らすとそこには最愛の女性が座っていた。
「ああ、おはよう。ここは……隙間?」
「ええ、少しあなたと話したいことがあって」
「人には聞かれたくない話なのか?」
「そんなところね」
人に聞かれたくないとは、よほど重要な事なのだろうか。
「ねえ、私の事覚えてる?」
「……? 当たり前だろ?」
「霊夢と
幽々子って知ってる?」
「……誰だ? 紫の友人か?」
「ええ、そうだったわ」
「紫、一体これは……」
「一週間前って何があった?」
「一週間前?紫と一緒に出かけたんだろ、覚えてないのか?」
「そんな訳ないじゃない、私があなたとの事を忘れるなんてあるわけないわ」
「なら、いいんだ」
思えば、一週間前も二週間前もずっと紫と居た気がする。
「じゃあ次、私の事愛してる?」
「もちろんだ、愛してる」
「霊夢や幽々子の事は愛してる?」
「誰だかわからないのにそんな訳がないだろ。俺は紫だけを愛して……」
「ふふっ。ありがとう、どうやら問題はないみたいね」
「……何だったんだ今のは?」
「なんでもないわ、ちょっとした検査よ」
「検査?一体何の事だ?」「あなたが私だけを見てくれるか」
俺には何のことかわからないままだ
隙間の外に出してもらった後の俺はおかしかった。
質問に出てきた霊夢と幽々子についてだ。
その霊夢や幽々子について思い出せない。
確かに覚えているはずなんだ。
そんな訳ない、覚えてるなんてことがあるわけない。
会っていたはずなんだ、それも一週間ごとに。
……俺、今なんて?一週間ごとに会っていた?
おかしい、それなら覚えてない訳がないんだ。
俺は確かに彼女達を愛していた……?
そんなわけないんだ!
何で覚えてないような奴らを愛していることがある!?
俺は紫だけ愛しているんだ!!!
一週間前は何をしてた?
一週間前は霊夢と会って、人里へ行っていた……?
宴会の準備を一緒にしていた……?
おかしいだろ、そんなわけがない
一週間前は紫と居たんだよ、俺。
二週間前は?
二週間前は幽々子と一緒に食事をした?
二人で酒を呑んでいた?
そんなはずない……二週間前だって紫と……
彼女達を愛していた、一週間ずつ会っていたはずだ。紫もその一人だったんだ。
訳がわからない、自分で自分の考えがわからない……。
三人の女性を愛して、変に思わない方がおかしい。
そんなに軟派な男だっただろうか。
何故わかるのだろうか。紫以外に幽々子や霊夢を愛していた事が。
わからない、わからない。
俺は誰を愛している?三人?紫?霊夢?幽々子?
そもそも誰かを愛していただろうか。
紫だけを愛しているはずなんだ。
でも三人とも愛して一週間に一人ずつ会っていた?
わからない。
俺は誰なんだ?
最終更新:2011年11月17日 12:48