「ただいま。」
玄関を開け、射命丸文は告げる。
本棚から古いアルバムを取り出し、愛用の座椅子に座る。
一枚、また一枚とページをめくる。
それを見れば。
まるで映画の様に鮮明に、文の脳裏には、その時々の思い出が浮かぶ。
「あの日はとっても楽しかったですよね。
ほら、こっちはあの宴会の写真ですよ。
一番呑んじゃいましたね、あの時は。」
壁に貼られた写真を見やる。
一枚、一枚とそれは繋がりを持ち。
それらを全体として見れば。
完成されたパズルの如く、一つの大きな写真になる。
一人の男の、等身大の死体写真に。
「あれから何十年経ったんでしょうね。
いつになったら、そこから出てきてくれるんでしょうか?
ほら、あなたの“柱”は、ここにあるのに。
やっぱり、おかえりなさいって言って貰えないと寂しいですよ。」
机に置いた“それ”に手を伸ばす。
もういない彼の“されこうべ”を、膝の上で愛おしそうに撫でる。
「いつまでも。
いつまでも待ってますから。
だから、早く帰って来てくださいね?
嫉妬に狂ってあなたを殺した事を、こんなにも後悔しているのだから。」
今日も文の家には。
彼女以外の声は響かない。
最終更新:2011年11月23日 13:05