蝉の声が昼下がりの幻想郷の人里。
畑仕事に精を出す里の青年達が談笑しながら昼飯を食べていた。
里人A「こう暑いと食欲が湧かないなぁ…。」
里人B「そうだな梅干しがあるから保っているがなぁ…。」
夏バテ気味の里人を横に握り飯を頬張る青年。
〇〇「そうですか?自分はこう暑いと逆にガッツリ食べたいですよ。」
そう語るのは〇〇と言う名前の外来人の青年。
カブトムシを捕まえて売ろうと邪な理由で住んでいる場所の近くの森に明け方入ったら霧が立ち込め気がつけば人里の入口に居た経緯がある。
里人A「〇〇、お前さんが羨ましいな。」
里人「それで?食べるなら何がいいんだ?」
〇〇「肉を食べてスタミナつけたいですね。牛丼か暑い時に熱い物ってことですき焼きもいいですね。」
里人A・B「「物好きだなぁ~。」」
三人の笑い声が木霊した。
夕方〇〇は、自身が住んでいる小屋の玄関であまりの驚きに固まっていた。何故、そんな状態になったのか。
それは一ヶ月前に迷い込んで来た彼を受け入れてくれた恩人で人里の守護者である上白沢慧音が包帯だらけで居間に座っていた。
慧音「やぁ、遅かったな〇〇。」
〇〇「あ…あの慧音さん…どうしたんですかその体?…。」
慧音「あぁ…これか?覚えていないのか?今日、里人達との会話で言っていただろう?『スタミナつけるために牛丼かすき焼きが食べたい』って聞いてな。牛肉を仕入れるのに苦労して…な?」
〇〇「仕入れるのに…苦労…?」
慧音「さぁお腹空いただろ?夕飯は出来ているぞ。〇〇が好きなすき焼きがな?」
そう言うと慧音は立ち上がり玄関に佇んでいた〇〇の両肩を掴むと引き込みにこやかに微笑んだ。
〇〇「け…慧音さん…頭から角が…。」
慧音「おや、いかんいかん。今日は満月だから興奮すると本来の姿になるんだよ私は。」
〇〇「本来…の姿…?」
〇〇は怯え体がガクガクと奮えた。
慧音「そんなに怯えないでくれ〇〇、君を食べやしないさ。さぁ召し上がれ。」
そう言って〇〇を向かい合うよう座らせた慧音は、さっきとは違う濁った目と歪んだ笑顔と蠱惑的な表情で〇〇を見ていた。
最終更新:2011年11月23日 13:36