迷いの竹林 ○○の屋台
みすちーの旦那である○○のおでん屋台は元外来人たちで満員だった。

「がんもどきと餅巾着を。汁たっぷりで」
永遠亭診療所の万年研修医こと、八意□□はここでは肉料理を口にしない。
理由は・・・・

「こらxx!俺にビラビラしたスジ肉を見せんじゃねー!こっちは毎晩永琳のスジ肉煮込みを食べてんだから!」

「ったくお前に見せてねぇっつの!こっちは毎日似非フランス料理となんちゃってワインで大人の味に飢えてんだ!」
紅魔館貴賓室の怪人こと xx・スカーレットの嘆きは深かった。永遠に幼い吸血鬼レミリア・スカーレットは年齢は500を超えるが、その性根は幼児そのものだった。
紅魔館雑用及び世話係として、保母資格を持つxxが紅魔館に勤めたのは必然であった。
「おやつが欲しいわ」と吸血鬼化してしまったxxに待っていたのは悪夢の「幼稚園地獄」だった。
三食お子様ランチをフランス料理っぽくしたものでワインの代わりにトマトジュースは美食家である彼には正に地獄。
そのため、週一で○○の屋台に立ち寄って「オトナの味」を愉しんでいる。

今日は週に一回、紅魔館で行われる「外来人を夫に持つ会」に彼らの「妻」達が集っている。
そのため、彼ら元外来人は妻達の拘束から逃れゆっくりと旧友との語らいを愉しむことができた。

「ところで○○は今もかみさんに喰われているのか?」
「まあな。そのおかげで食糧として輸入される同胞を救うことにつながるからな」

○○には左手がない。
彼が幻想入りしたその日にミスティア・ローレライに食べられたのだ。
彼は死を覚悟した。
しかし、当のみすちーは・・・・
「おいしいから非常食決定!」
と、○○を拘束し何者かのレバ刺しを食べさせられ気づくと死ぬことも老いることもできない蓬莱人になっていた。
みすちーとは○○を食べさせる代わりに外来人には一切手を出させないことを約束させた。



時間は過ぎゆく。
「さて、おいしかったよ○○」

「来週も頼むぜ。こんどは蛸串を用意しておいてくれよ」

「八雲△△に頼むしかないから期待せずに待ってくれ」


彼らの視線の先には彼らの「妻」たちがまっていた。
「○○~おなか空いちゃった。」
○○を背後からみすちーが抱きしめる。
「ああ・・・」

○○も□□もxxも自分の意思で人間を辞めたわけではない。
彼らは何度もこの逆境に立ち向かった。
しかし・・・

彼らが行動した時、彼女たちは彼らを痛めつけることはしなかった。
ただ・・・涙で充血しやつれ果てた姿を見せたのだ。
彼らに「妻」を愛する者はいない。
だが、「妻」達が彼らを愛するのは嘘ではなかった。
それは外来人を食い物にする里人よりも信頼できた。

「俺もこの世界に染まっちまったのかな」
○○はみすちーに抱きしめられながら、もうこの世にない自らの左手を眺めた。

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最終更新:2011年11月26日 09:41