法衣を脱ぐとき


「○○さん・・・・昔話をしてあげますね・・・」

法衣を脱ぎ、褌とさらしのみの姿になった寅丸星は慈母のような微笑みで○○を見下ろす。


むかしむかしあるところにとても頭のいい牝の虎がいました。

虎の好物は人間の肉でした。

でも里の人間を食べては猟師に殺されてしまいます。

虎はとても頭が良かったので、夜一人で森を進む旅人を襲っていました。

あるとき虎は大事そうに「葉っぱ」を持った若い男を襲って食べてしまいます。

その時から、虎は喰い殺した男の声に悩まされていました。

「お前が憎い・・・・・俺と俺の娘を殺したお前が憎い・・・・あの薬草を飲ませれば助けられたのに・・・・」

男の叫びで虎は憔悴し、慰めを求めて雄の虎とまぐわったりした。

やがて虎は孕み子供を産みました。

このころには男の声も聞こえなくなっていました。

だけど・・・・・

「お前が憎いィィィィィ!!!!」

白目を剥き叫ぶ我が子を虎は喰い殺してしまいました。


「聖様に出会えなければ私は自分の仔を殺した罪に押しつぶされていたでしょう。」

○○は逃げようとする、がその四肢は無残にも砕かれあらぬ方向を向いていた。

「星・・・悪かった!もう外界へ戻ろうとしない!だから・・・・」

○○が尚も言葉を紡ごうとするが、星の唇に塞がれる。

「この味は嘘をついていますね・・・・・」

「嘘じゃない・・・・・」

荒れ果てた小屋に鮮血が飛び散り、中身の詰まった革袋が弾けるような音が響く。

星は半死の男に跨り、その最後の息吹を自らの胎内に導いていく。

「○○さん・・・もっと私を憎んでくださいね。そうしたら私と同じ妖怪虎になれますからね・・・・」

全ての徳を捨てた妖獣を血に濡れた宝塔と法衣が声もなく見つめていた。

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最終更新:2012年02月16日 12:19