グランギニョールの想い


「可愛い私のお人形さん今日のおかげんはいかがしら?」
今日も彼女は歌うように僕に話しかける。

 人形は喋らない

感覚のない腕が彼女を抱きしめる。
彼女は嬉しそうに目を細めその唇を重ねた。


私はベットの脇に腰かけ、○○に話しかける。
彼は答えてくれない。
ただ燃えるような情念を滲ませながら○○は私を見つめていた。
彼を人形にしたのは私。
薬で感覚を失っているうちに魔術で人形にしたのだ。
そうすれば・・・・


あの日、アリスは僕に告白した。
愛している、外界へ戻らないでと。
そして僕は答えた。
外界へ帰る気はない。僕もアリスを愛していると・・・
アリスの声で目覚め、一緒に朝食を作り愛し合う日々。
アリスとの生活は幸せに満ちていた。
でもアリスにとっては・・・


「ねぇ○○?私のこと好き?」
「ああ好きだよ」
「じゃあ・・・どこが好き?」


その日から○○を疑うようになった。
私を好きといったのは私の庇護を得るため?
私を愛していると言ったのはただ性欲を満たしたいだけ?
心を読むことができない私にとってはこの方法でしか彼の愛を確かめられない。

きっとこれは滑稽な人形劇
恋人の愛を信じられなかった、哀れな魔女の末路

きっとこれは幸福な人形劇
彼女の愛を一人占めにした幸福なただの人間の物語

グランギニョールの幕は下りない

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最終更新:2012年02月16日 12:33