…霊夢、他の皆も、少しいいか?
アリスを捜してるんだよな、数日前から行方不明になった…
多分…アイツはもう戻ってくることは無いだろうし、止めといた方がいいんじゃ…
何でか、って?
…なら、話してやるよ。
アリスが行方不明になる直前にあった事を、な。
そして、それに至った経緯も含めて。
アリスには、〇〇っていう恋人がいた。
気前もよく、性格も…
ん?初耳だ、って?
そうだろうな、アリスは〇〇の事を誰にも渡したくない、って言ってたし、
私も当事者達に会ってなければ知らなかっただろうな。
…話を戻すぜ。
兎に角、あの2人は仲が良くてな。
何時結婚してもおかしくないぐらいだった。
…そんな時だった。
〇〇が死んだのは。
死因は、高い所から落ちた角材から子供を庇ったことによる外傷。
そんな死に方だったってのに、幸いな事にも、〇〇の身体には殆ど傷は見られなかった。
…いや、不幸にも、かな。
それを知ったアリスは…何もしなかった。
泣くことも、叫ぶことも、悔やむことも、何も。
ただ、虚ろな目で空を見上げているだけだった。
…それからは、酷かったな。
アリスは本当に何もしなくなっちまったんだ。
まるで生ける屍。
人形作りは勿論、飯を食う事さえもしなくなった。
身体は、衰弱しきっていた。
私や
パチュリーが看病していなかったら、アリスはそのまま死んでいただろうな。
そこまで酷かったんだ。
…少しして、〇〇の火葬の日。
アイツの火葬は、アリスを雁字搦めに縛った状態で行われた。
衰弱しきっている筈なのに、火葬と聞いた瞬間凄まじい力で暴れ始め、正直、炎の中に突っ込みかねない勢いだったからな。
…アリスは、〇〇が焼かれていくのを、涙を流しながら見ていたよ。
骨はそのまま墓に埋められた。
アリスに渡しても、涙を流すだけで無反応だったからな。
その後、1ヶ月は看病生活が続いたよ。
その時は前よりも酷かったな。
前の状態は生ける屍って言ったけど、あの時は死んだも同然だったから。
起きているのか寝ているのかさえも分からない状態だったよ。
けれどな、暫くして、アリスも治り始めたんだよ。
最初は、こっちの問い掛けに対して反応を返すようになった。
次に、飯を自分で食べるようになった。
人形作りをしていた時なんかは、思わず泣いてしまいそうになったぜ。
そして、もう大丈夫なのか、って聞いたら、こう答えたんだ。
「〇〇を失った事はとても悲しいけれど、また、きっと何時か会えるから…」
これを聞いた時は喜んだぜ。
漸くアリスが〇〇の死を認め、受け入れ、前に進み出したと思ったからな。
何時か、か…ハハッ。
その「何時か」があんなに早く来るなんて、その時の私は知る由も無かったんだ…
アリスが完全に立ち直った後は、私達も看病は止めた。
けれど、前のように遊びに行く事はあった。
そしてある日、アリスが何処かへ出掛けていくのを見たんだ。
ほんの好奇心で、私はアリスを尾行する事にした。
…好奇心、って言ったけれど、心配もしてたんだ。
あの時のアリスは、妙な雰囲気を纏っていたからな。
そのまま尾行していくと、アリスが建物に入っていくのが見えた。
何の変哲も無い小屋だった。
何の為にこんな小屋に来たのか、って気になってな。
入り口から、アリスに気付かれないように、そっと覗いたんだ。
今思えば、私は運が良かったのかもな。
尾行するのが遅ければ、私は何も知ることは出来なかった。
早ければ、私は口封じの為に殺されていたかもしれない。
あの場には、私を殺せる道具が山のようにあったからな…
だが…その時には全てが終わっていた。
小屋の中には、人形作りの道具、床、壁に所構わず描かれた魔法陣、そして、
「ほら、また会えたでしょう?…もう失わない。逃がしてもあげない。…永遠に、私の傍にいて…?」
蕩けそうな笑顔を浮かべながら、
生前の〇〇と寸分違わぬ人形に抱きついているアリスがいたんだ…!
あの後の事はよく覚えてない。
気がついたら、息を切らして森の外に居たんだからな。
アリスが一体何をしたのか…
それは分からない。
ただ、分かる事が一つだけある。
それは、私達の知るアリスは、もう戻ってくることは無い、ってことだ。
…さあ、話は終わりだ。
…分かってくれたみたいだな。
それじゃ、私は帰るぜ。じゃあな。
「ふふ…ご苦労様、
魔理沙。」
「これでもう、私達を捜そうとする、私達を引き離そうとする奴はいない…」
「それにしても…ここまで上手く行くとはね。」
「魂操の魔法は難易度が高いのだけれど…これも、愛の力かしら?」
「…まあ、それは別にいいか。…それよりも今は…」
「さあ…〇〇、行きましょう?2人だけの、終わることの無い楽園へ…ね。」
最終更新:2012年02月16日 13:05