魔法の森に建つ一軒家

それが○○と母親の住処だった。


作業場にある書架の前に○○は居た。
その手にあるのはカルテと書かれたファイル。

「おかあさんは本を読みなさいって言っていたけど・・・これでいいのかな?」

少年はファイルを捲る。
脳の断面図や色あせた写真が貼られている。

「ええと・・・アルツハイマーの前駆症状?○○に記憶の混濁が見られる・・・・・これって何?」

ガタッ!

「・・・・○○?何をしているの?」

「おかあさんおかえり・・・・」

振り向くと○○の母親 八意永琳が立っていた。

永琳が○○の肩を掴む。

「答えなさい!何をしているの!」

「ごめんなさい!本を読もうと思って・・・本は作業場しかないから・・・」

永琳は○○の顔に恐怖が浮かんでいるのを見て怒気を納める。

「そう・・・本を読むのはいいけど、ここは危険な薬品もあるから入る時はおかあさんに相談すること。いい?」

「うん・・・・その本に書いてある○○って僕のお父さん?」

「ええ。あの人は外から来た旅人だった。一緒に生活して研究をして・・・・でも○○は思い出を無くす病気にかかったの。」

「その病気はおかあさんの薬でも治せないの?鈴仙先生でも治せないの?」

「あの人の最後はとても安らかだった。ねえ○○?お父さんがいなくて寂しい?」

「僕は寂しくないよ?それよりもおかあさんはお父さんがいなくなって悲しくないの?」

「そうね・・・○○がいてくれるから幸せよ。そうだ!今日の夕食は○○の好きなハンバーグにしましょう。」

「おかあさん大好き!」

「元気な子ね」


○○の日記

おかあさんとご飯を食べた後一緒にお風呂に入った。
僕がお風呂に入るとおかあさんは僕を抱きしめてくれる。
何かぬるぬるしたものがお尻にあたるけど、おかあさんは暖かくて柔らかくて安心する。
その後はおかあさんが僕を洗ってくれる。
おまたがむずむずしておしっこが出そうになってびくびくする。
最初は病気になっちゃったかと思ったけど、おかあさんは男の子なら普通のことよって言っていた。
今日はおかあさんを悲しませちゃった。
明日はうんと手伝いをしよう。


作業場
火を噴きあげるコンロの前で○○の母親 八意永琳はファイルをほどき炎にくべる。
熱気に巻き上げられ、ページの一部が舞いあがった。

~ ○○の脳の初期化は完了。身体を8歳に固定後、蓬莱の薬を投与する ~

舞いあがったページはみるみる黒ずみ白い灰へ姿を変えた。

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最終更新:2020年01月05日 02:37