俺は、何故か起きていた。
今は真夜中。確かに熟睡している時間帯の筈だった。
パチリ
河童に売りつけようとした無縁塚で拾ったテレビに電源が付く。
コンセントはささっていないし、電源そのものがない。
無い、筈なのに何故か古めかしいブラウン管に灯りが付いている。
「こんばんわ~、○○~、見てるかしら~ぁ?
幽々子の知らない世界、始まるわよぉ~!」
ブラウン管の向こう側、最近よく茶店で茶飲み友達している亡霊姫が嬉しそうに手を振っていた。
「今日はぁ、これを見ている視聴者の中から抽選で冥界へと旅行券をプレゼントしちゃうの。
この番組の中では、私のしたい事、しちゃいたい事を実行するのがお仕事なのよぉ」
何を言っているのかさっぱり解らない。
加えて、ブラウン管越しに幽々子の手が出て来て、俺の手を掴んでるのはなんでだ。
「厳正なる抽選の結果、当選は○○ね。まぁ、これ視てるの○○だけだから当然なんだけど」
そんな理不尽な。
取り敢えず電源ボタンをピンポンダッシュの勢いで押しまくるが画面は消えない。
それどころか、俺の身体がどんどんテレビ側へと引き込まれていくではないか。
「ごめんねぇ○○、この番組はねぇ、企画しちゃうと私の抑圧してた願望が表に出ちゃうの」
ギラギラとした目付きの幽々子の上半身がテレビから出て、俺を抱き締める。
「だから我慢出来ないのぉ。あなたを●して永遠を共にしたいって気持ちが我慢できないのぉ」
そんなに思い詰めていたのか……俺は唖然とした面持ちで間近に迫った幽々子の顔を見た。
「まぁ、死んだら即行で白玉楼に連れ込んじゃおうと思ってたのは初対面からだったけどねぇ~」
どっちみちかよ!
俺のツッコミはテレビに引きずり込まれた為、遮られてしまった―――。
住人が居なくなった○○の家。
点いたままのテレビには『横恋慕な従者は見た! 愛と死の病み愛冥界天国』とだけテロップが表示されていた……。
最終更新:2012年02月18日 15:21